小腸にある絨毛(じゅうもう)ってどんな構造を持っているの?

2018/10/25

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

食べ物や飲み物は体を動かすエネルギーとなりますが、それには体内での消化・吸収が必要です。小腸は、消化と吸収を同時に行っている臓器です。知っているようで実はよくわからない小腸の仕組みとはどうなっているのでしょう。

冷凍宅配食の「ナッシュ」
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小腸ってどんな働きをしているの?

小腸は、胃や大腸などと並ぶ消化管のひとつです。胃に近い順から十二指腸、空腸(くうちょう)、回腸(かいちょう)の3つの領域に分かれて構成されていますが、小腸というと空腸と回腸のふたつを指すのが一般的です。

小腸のうち5分の2を空腸、残りの5分の3を回腸が占め、口から入った食べ物や消化液が通過します。空腸と回腸の働きには大きな違いはありませんが、回腸は大腸と接しており、回盲弁という弁によって食べ物が逆流しないようなつくりになっています。
小腸の働きは大きく分けて3つあります。

栄養素の消化・吸収
十二指腸で分解された食べ物を、消化液によってさらに細かく分解し栄養素を吸収します。小腸は収縮と弛緩を繰り返す「分節運動」と「振り子運動」を行い、食べ物と消化液がよく混ざり合うようにしています。栄養素の吸収のうち約90%は小腸で行われるといわれています。
栄養素の輸送
小腸の壁は筋肉が発達しています。栄養素や消化物は小腸の「蠕動運動」によって、大腸などほかの消化器官へと運ばれます。
免疫機能
リンパ組織が発達していますので、体外から侵入してきたウイルスや細菌から体を守る免疫システムが備わっています。

小腸の働きが低下すると栄養素の吸収がうまく行われないだけでなく、ほかの臓器にも影響を与えてしまいます。また免疫機能が弱まり、病気に罹るリスクがあがります。

小腸の絨毛ってどんな構造になっているの?

小腸は、栄養素をしっかりと効率的に吸収するための特殊な構造を持っています。全長が6~7m程もある体内で最も長い臓器です。ぐねぐねと曲がりくねった管のかたちをしていますが、内側は粘膜になっていて輪状のヒダを持ちます。そして輪状のヒダには「絨毛(じゅうもう)」と呼ばれる無数の突起があります。

小腸の内側は「小腸上皮細胞(栄養吸収細胞)」に覆われていて、絨毛がびっしりと並んでいます。絨毛は直径約0.2mm、長さは約1mmの小さな突起ですので、肉眼でははっきりとは見えません。柔らかい毛並みの絨毯をイメージするとよいでしょう。
ひとつひとつの絨毛を含む小腸全体を伸ばして広げると、かなりの大きさになります。このように表面積を大きくすることで、通過していく食べ物から栄養素をムダなく吸収できているのです。

繊毛はどんな働きをしている?

絨毛の主な働きは、食べ物の消化・吸収です。

絨毛の内部には毛細血管網(細動脈と細静脈を結ぶ網目状の血管)とリンパ管が流れています。食べ物や水分が小腸に届くと、糖やミネラル、アミノ酸などの栄養素に分解され、絨毛の内部にある毛細血管網を通して、肝臓や大腸の血管へ運ばれていきます。脂質はリンパ管に吸収され、静脈へと流れていきます。

絨毛で吸収される栄養素の通り道

毛細血管網
炭水化物が消化され、糖となって吸収されます。そのほかミネラル、アミノ酸、ビタミン、水分などが毛細血管網を通ります。
リンパ管
脂肪が分解されると、脂肪酸やグリセリンとして吸収されます。

腸の粘膜はたくさんの絨毛に覆われていますが、絨毛が未発達の部分もあり「パイエル板」と呼ばれています。

パイエル板
小腸の粘膜にはウイルスや細菌など有害な異物も入り込んできます。ウイルスなどから体を守るため、小腸内部には免疫を誘導する組織のパイエル板が存在しています。異物の侵入に気づくとパイエル板は免疫細胞に指令を出し、異物の排除を始めさせます。

おわりに:絨毛は栄養素を効率的に消化・吸収してくれます

栄養素のなかでも体づくりに欠かせない糖やアミノ酸、ビタミンなどの消化・吸収は、その大部分が小腸の絨毛で行われていることがわかりました。絨毛はとても小さな突起ですが、重要な役割を担っている働きもの。体の仕組みへの理解を深めながら、健康への関心を高めていきましょう。

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