腎臓の再生医療が研究されているって聞いたけど、それってホント?

2018/10/27

山本 康博 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 呼吸器内科医

山本 康博 先生

末期の腎不全になると、透析治療や腎移植などが必要でした。しかし最近、新たな治療法として「腎臓再生」が注目を集めています。今回はこの腎臓再生の研究に関する概要について、一般の方にもわかりやすく解説します。

腎臓の再生が研究されるようになったきっかけは?

腎臓再生の研究は慈恵医大腎臓再生グループを中心に行われてきました。この研究が行われた背景には、以下のようなことがあります。

  • 透析患者さんのQOL(生活の質)が著しく低下してしまうため
  • 透析治療の医療費は1.4兆円超で国庫に負担をかけているため
  • 世界には透析治療を受けられない人が200万人以上もいるため

このように腎不全は日本国内の問題だけでなく、国際的な問題にもなっています。そのため、これらの問題を解決するために、同グループでは腎臓再生の研究を進めてきたのです。

腎臓再生はどんなふうに研究されている?

腎臓再生には大きく3つのステップがあり、最近になってようやく全てが完成しました。そこで「今までどのような研究が行われていたのか」について詳しく説明します。

腎臓再生までの3つのステップとは?

腎臓再生までのステップには、大きく以下の3つが必要と考えられています。

  1. 患者さんのiPS細胞から「ネフロン前駆細胞(腎臓の芽)」を作製する
  2. ネフロン前駆細胞から「尿を作る臓器」を体内に作製する
  3. 尿を対外に排泄するための経路を作製する

このうち1ステップは多くの研究者が研究を進めており、2015年には慈恵医大腎臓再生グループが3つ目のステップについての効果的なシステムを開発していました。そのため、腎臓再生を実現するためには「2つ目のステップ」のみが課題となっていました。

2017年11月に2つ目のステップに関する技術も完成

2017年11月23日に日本医療研究開発機構のプレスリリースより、「2つ目のステップについても成功した」と発表されています。その方法は以下のようなものです。

  1. 別動物から「ニッチ」を採取し、外来性の前駆細胞を注入する
  2. 専用の薬剤を使って、既存の前駆細胞を除去する
  3. 外来性のみの前駆細胞による腎臓が育つ

研究ではマウスとラットを使った実験でしたが、別動物の「ニッチ(前駆細胞が分化して腎臓になる場所)」を使うことで、2つ目のステップが成功するとわかりました。これにより腎臓再生の3つのステップが完成したため、いよいよヒトでの臨床試験へと進むことになります。

2018年にはヒトでの臨床試験も

慈恵医大腎臓再生グループは、国外でヒトに対する腎臓再生の臨床試験を行うことを目指しています。その腎臓再生までの流れは、以下のようになっています。

  1. 患者さんからiPS細胞を採取して、ネフロン前駆細胞を作製する
  2. 患者さん由来の前駆細胞を、遺伝子操作をしたブタの胎児のニッチに注入する
  3. そのニッチを患者さんに移植して、薬剤でブタ由来の前駆細胞を除去する
  4. 体内で患者さん由来の腎臓のみが育ち、やがて成熟した腎臓になる
  5. 正常に尿が作られていることを確認し、問題がなければ腎臓と尿管をつなぐ

ヒトでの腎臓再生が成功すれば、腎移植が必要な患者さん、貧困で透析治療を受けられない患者さんなどの生命を守ることにも役立ちます。そのため、「臨床試験の成功」はもちろん、「医療現場への登場」なども期待して待ちたいものです。

実用化には時間がかかる可能性もある

今後、ヒトに対して腎臓再生の臨床試験が行われますが、その一方で「安全面などに関する課題」が大きいともいわれています。とくに日本で腎臓再生を行う場合は、事前にサルなどで安全性や有効性を確保しなければなりません。

また、国民の理解も得る必要があるといえます。もちろん、海外で臨床研究に成功すれば、安全面に関しては大きな根拠となりますが、実用化にはまだ時間がかかるかもしれません。

おわりに:今後の腎臓再生医療の発展に期待を

現在の末期腎不全の治療方法といえば、透析治療や腎移植しかありませんでした。そこに、新たな治療法として「腎臓再生」が加わろうとしています。日本の医療現場に登場するのにはまだ時間がかかりそうですが、これからの腎臓再生の動向についてもぜひ注目していきましょう。

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