過敏性腸症候群(IBS)の「下痢型」の特徴とは?

2018/11/1

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

過敏性腸症候群(IBS)は症状によっていくつかの種類に分けられますが、比較的男性に多いとされる「下痢型」ではどんな症状がみられるのでしょうか。原因や治療法などと併せて解説します。

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過敏性腸症候群(IBS)の「下痢型」ってどんな症状?

まず過敏性腸症候群(IBS:Irritable Bowel Syndrome)とは、検査で器質的な異常が見つからないにもかかわらず、下痢、便秘、腹痛、腹部膨満感といった下腹部の不快症状が慢性的に続く病気です。検査をしても病変が見つかるわけではないので、原因ははっきりわかっていませんが、ストレスの蓄積によって大腸や小腸が知覚過敏を起こしたり、運動機能が低下したりしたことでこれらの症状が起こるものと考えられています。

この過敏性腸症候群には「下痢型」「便秘型」「混合型」「分類不能型」の4種類があり、今回取り上げる「下痢型」は、以下のような症状が特徴です。

  • 通勤や通学の途中などで突然腹痛やお腹の張りに襲われ、トイレに駆け込むことがある
  • 腹痛の後、水様便や泥状便などの下痢をする
  • 会議や試験の前など、緊張する場面になるとお腹が痛くなる

このほか、お腹がゴロゴロと鳴ったり、腹部の不快感が消えなかったり、また不眠や不安、抑うつといった精神症状を伴うこともあります。

過敏性腸症候群の下痢はなぜ起こる?

実は脳と腸は神経でつながっており、不安やストレスを感じるとその信号が腸に伝わり、腸の蠕動運動に影響を与えるということがわかっています。そして下痢型の患者さんは、特にこの信号が伝達しやすくなっているため、過敏に反応した腸粘膜がセロトニンという神経伝達物質を分泌します。これがセロトニン受容体と結合することで、腸の蠕動運動が異常をきたすようになると考えられているのです。

過敏性腸症候群の下痢型の治療法は?

下痢型に限った話ではありませんが、過敏性腸症候群の治療では生活習慣の改善が基本となります。主要因とされるストレスをなるべく溜めず、睡眠や休養をしっかりとることがまずは大切です。適度な運動は腸の機能を整え、ストレス解消効果も期待できるので、日課に取り入れることをおすすめします。

また、下痢型の場合、香辛料や脂っこいもの、アルコールやコーヒーなどの消化の負担となる食べ物や飲み物は、避けることも重要です。

もしこれらのセルフケアを実践しても症状が改善しない場合は、医師による薬物療法が行われます。その人の症状によって処方薬の種類は異なりますが、以下の薬が処方されるのが一般的です。

セロトニン5HT3受容体拮抗薬
腸内のセロトニンの作用を抑制し、腸の運動異常や知覚過敏を改善する。
抗コリン薬
腸の過活動を抑制し、腹痛を緩和する。
消化管運動調節薬
消化管の運動や知覚に関連する要素に作用し、消化管機能を調整する。
漢方薬
腹痛を緩和する効果があるとされる「桂枝加芍薬湯」など。

おわりに:該当する症状が多ければ、病院を受診しよう

ご自身に当てはまる症状はあったでしょうか。過敏性腸症候群は特に20~40代の発症者が多く、国内では10~15%程度の人が発症しているともいわれています。生活習慣の改善や投薬によって徐々に症状は落ち着いていくので、お悩みの方は専門外来を受診してください。

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