腎盂・尿管がんとは ― 症状や治療法について解説します

2018/10/31

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

「腎盂・尿管がん」とは、腎臓の一部や尿管に発生するがんのことです。今回は腎盂・尿管がんの症状や治療法をご紹介します。腎盂・尿管がんの特徴を理解しておけば、早めの対処ができる可能性が高まるでしょう。

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腎盂・尿管がんとは

腎盂・尿管がんは、腎臓の一部であり尿管との接続部となっている「腎盂(じんう)」と、腎盂に集まった尿を膀胱に運ぶ「尿管」に発生するがんです。腎盂、尿管、膀胱、尿道へとつながる尿路の内側を「尿路上皮(移行上皮)」と呼ぶため、腎盂・尿管がんは、別名「上部尿路がん」とも呼ばれています。

尿路上皮のどの部位にがんが発生しても、治療法にほとんど差はありません。そのため、上部尿路に発生するがんは「腎盂・尿管がん」として、1つのグループ扱いをするのが一般的です。

ちなみに「腎細胞がん」は尿を作って腎盂に送る「腎実質」の細胞が悪性腫瘍になったものを差します。腎盂・尿管がんと腎細胞がんはがんの性質が違い、治療法も異なるため、ハッキリと区別されているのが特徴です。

腎盂・尿管がんってどんな症状が出るの?

腎盂・尿管がんで一番多い症状は血尿です。血尿は肉眼でも分かるため、発見しやすい症状といえるでしょう。排尿痛や熱などの症状が出ず、突然血尿が出ることが多いですが、人によっては排尿痛や頻尿も起こることがあります。

また、がんにより発生した血塊や腫瘍で尿管が詰まった場合や、がんが尿路上皮に広がった場合、脇腹や腰、背中に痛みが起きることもあります。腎盂や尿管に石ができる「尿管結石」と痛みが似ていて、痛みが出たり消えたりするのが特徴です。

そして、がんで尿管が塞がれると、腎臓に尿が溜まります。これは水腎症と呼ばれ、長く続くと腎臓の機能が停止します。それでも、がんが発生していない方の腎臓が機能するため、尿の出が悪い・体がむくむといった症状が余り起きないという特徴があります。

腎盂・尿管がんはどうやって治療するの?

検査の結果、腎盂や尿管にがんが見つかった場合、がんの悪性度などに合わせた治療を行います。

腎温存治療

腎盂・尿管がんの転移が無く、悪性度も低い場合は、がんの発生した部位(尿管)だけを切除し、残った尿管をつなぎ合わせる「部分切除治療」を行います。また、がんの部分にBCG(がん治療にも使われる抗結核ワクチン)を注入する「腎盂内注入療法」を行う場合もあります。

手術療法

転移が無い場合の治療は、手術をすることが多いです。「腎盂・尿管がん」は同じ尿路上皮や膀胱に転移しやすいため、手術を行う場合は基本的に腎臓、尿管、膀胱の一部をまとめて摘出する「腎尿管全摘除術」と「膀胱部分切除術」を行います。

化学療法(薬物療法)

転移がある場合や、治療後に転移が出現した場合は抗がん剤による治療が主体となります。また、手術療法の完治率を上げるため、術前や術後に化学療法を行う場合も。さらに、リンパ節や他の臓器に転移している場合は、数種類の抗がん剤を用いる化学療法(多剤併用化学療法)を行います。

放射線療法

がんや転移巣に対し、放射線照射を行うこともあります。しかし、十分な効果が出ない人が多いため、すでに転移が起きて根治が難しい場合にのみ行います。

腎盂・尿管がんは色々な治療法があり、状態に応じて手術療法や化学療法、放射線療法などを組み合わせて治療を行っていきます。腎盂・尿管がんに関しては、手術療法が行われる場合が多く、がんの進行具合にもよりますが、現在は開腹手術ではなく腹腔鏡下手術が選択されることが多いです。個人差はありますが入院期間は10~14日間ほどであり、入院や手術の費用には健康保険が適用されます。

おわりに:腎盂・尿管がんかも?と思ったら早めに受診を!

他のがん同様、腎盂・尿管がんは早期発見・早期治療が大切です。最近は超音波(エコー)検査で腎盂・尿管がんが発見されることが増えています。気になる症状が出た場合はすぐに病院にかかり、検査を受けると良いでしょう。

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