生活習慣病の改善にはどんな運動をするのがおすすめ?注意点は?

2018/11/5

工藤 孝文 先生

記事監修医師

工藤内科 副院長 工藤孝文先生のスマホ診療できるダイエット外来

工藤 孝文 先生

生活習慣病の改善には、運動が良いといわれます。何かと運動不足になりやすい現代人ですが、適度な運動を行うことは疾患の改善だけでなく、予防にも大切です。
では、具体的にどのような運動をするのが良いのでしょうか?また、運動をするときの注意点はどのようなものがあるのでしょうか?

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生活習慣病の改善に運動がいい理由は?

生活習慣病は、食べ過ぎ・飲み過ぎや不規則な生活リズムなどの生活習慣の乱れから起こります。運動不足も生活習慣の乱れの一つと考えられ、生活習慣病の治療には食事療法とともに運動療法が欠かせません

運動をすることで、主に以下のような効果が期待できます。

  • エネルギー代謝がよくなり、肥満が減少する
  • インスリンの働きでブドウ糖の代謝が改善される
  • 中性脂肪が分解され、善玉コレステロールを産生しやすくなる
  • 体を動かすことで、ストレス解消になる

このうち、最近とくに注目されているのは「インスリンの働きを良くする」という効果です。インスリンは血糖値を調節するホルモンで、健康な人の体では常に血中に少量分泌されていて、食後に血糖値が上がると追加で分泌されることで、血糖値を一定に保つ働きをしています。

インスリンの働きが悪くなると、血糖値が高くなるだけでなく、血圧や中性脂肪、コレステロールの代謝などにも悪影響を及ぼすことがわかっています。また、メタボリックシンドロームにも深い関係があることがわかっています。

運動によってインスリンの働きを良くし、血圧や血糖、脂質などのバランスを良い状態に保ちましょう。

生活習慣病の改善におすすめの運動は?

生活習慣病の改善を目的として運動をする場合、無理のない全身運動を続けるのが良いでしょう。ウォーキングや水泳など、全身運動かつ有酸素運動になるものがおすすめです。有酸素運動とは、筋肉に酸素を届けながら行う運動で、呼吸を止めることなくリズミカルに息を吸ったり吐いたりしながら行うことがポイントです。

運動の強度は、やや息が上がる程度が目安です。ウォーキングであれば、ふだん歩くスピードの1.5倍程度で、人と会話しながら続けられるくらいの強度で行うのが良いでしょう。また、運動をしているときに感じる「きつさ」も良い指標になります。だいたい、「楽である」から「ややきつい」程度に感じるくらいが適当です。「きつい」と感じる運動は激しすぎるため、強度をゆるめて行いましょう。

運動の時間は、1日30分以上、週に180分以上が目安です。運動療法の基本は「軽い運動を毎日行う」ということですから、特別な運動をする時間がないという人は、「階段の上り下りを増やす」「通勤電車で座らない」「歩いて買い物に行く」など、日常生活の中で運動量を増やすだけでも構いません。自分のライフスタイルに合った運動を少しずつ積み重ねていきましょう。

運動療法の効果が出るまでには、約3〜6ヶ月以上はかかるといわれています。ですから、すぐに結果が出なくても焦らずこつこつと続けていきましょう。早く効果を出すために焦ってきつい運動を何時間も行うことは、怪我につながりかねません。

ウォーキングや水泳などを行う際には、怪我をしないように準備運動を行うことも大切です。また、脱水症状が起こらないよう、給水を忘れないようにしましょう。運動の前後にストレッチやラジオ体操、軽い筋力トレーニングなどを行うことも効果的です。

控えたほうがいい運動はある?

生活習慣病の改善に向いていないのは、無酸素運動と呼ばれる運動です。これは、息を止めて一気に力を入れたり、苦しいのを我慢して行ったりする運動となるため、血圧を上げてしまいます。具体的には大きな負荷をかける筋力トレーニングや全力疾走、縄跳びなどの瞬発力を必要とする運動です。

運動を続けるコツは?

運動療法は、「軽い運動を毎日続ける」ということが基本です。ですから、肉体的な疲労だけでなく、精神面でも負担になりすぎないよう、運動療法を楽しんで続けられるような工夫を心がけることが大切です。例えば、友人や家族と一緒に話しながら行う、ウォーキングやサイクリングのコースを時々変えてみるなどがおすすめです。

また、日常生活の中でなるべく体を動かすようにすれば、あえて運動を行わなくても効果が得られます。通勤の際に一駅分歩く、エレベーターやエスカレーターではなく階段を使う、雑巾がけや窓拭きなど動きの多い家事をこまめに行う、などは特別な道具などがなくてもすぐに行える運動です。

運動を行う上で気をつけることは?

運動療法は、適切に行わないと効果がないだけでなく、体調を悪くしたり怪我につながることもあります。そこで、以下のようなことに気をつける必要があります。

  • 運動前に準備運動をする
  • 苦しい、つらいと思ったら強度を緩める
  • 体調が悪いときは無理せず休む
  • 水分補給をしっかりする
  • 屋外での運動は、雨風の強い日や暑すぎる、寒すぎる日には避ける
  • 運動が終わったあとはクールダウンをする

準備運動、クールダウンは運動中や運動後の怪我や体調が悪くなるリスクを減らし、疲れを軽減してくれます。例えば、ウォーキングを行うときにも最初と最後は少しペースを落とし、ゆっくりと行うことが大切です。

運動の強さは、苦しさやつらさを感じない程度に行いましょう。きついと感じるような運動はやり過ぎで、体に負担がかかってしまいます。また、体調が悪いときや、天候が悪いときは屋外で運動することは避けましょう。運動中に不快な症状や痛みを感じたときも、無理をせず休みましょう。胸の痛みや締めつけられるような感じがあった場合は、すぐに安静にし、主治医に相談しましょう。

また、運動療法は心筋梗塞などの心疾患がある人、血圧の高い人、腎機能の低下が指摘されている人には勧められません。運動療法を始める前には、運動療法を行えるかどうか、どのような内容で行ったらいいかなどを主治医とよく相談して決めるようにしましょう

おわりに:生活習慣病の改善には無理のない有酸素運動を

生活習慣病を改善するには、ウォーキングや水泳など、全身運動かつ有酸素運動である運動を無理のない強度で行うのがおすすめです。運動をする時間がないという人は、家事や通勤での移動など、日常生活の中で工夫をすると、無理せず運動量を増やすことができます。

運動をするときは、無理をしないことが大切です。不快な症状や体調の悪さを感じたら、無理せず休みましょう。楽しく毎日続けることが、運動療法を成功させるカギです。

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