糸球体腎炎ってどんな病気?原因によって違いがあるの?

2018/11/5

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

腎臓の病気のひとつ「糸球体腎炎」とはどんな病気なのでしょうか。糸球体腎炎の原因や種類、治療法など、詳しく解説します。

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糸球体腎炎ってどんな病気?

腎臓は、体の中で不要になった物質や体に害のある物質をろ過して、尿をつくりだす臓器です。ひとつの腎臓には、糸球体とよばれるろ過装置が約100万個あるといわれています。人間には左右に2つの腎臓があるため、合計200万個の糸球体が人間の体の中を浄化してくれているのです。

糸球体腎炎は、この糸球体に炎症が起こった状態です。糸球体が作用できなくなると、血液中の老廃物がうまくろ過できなくなります。尿中に、本来であればみられないタンパク質が混ざったり、尿の色が赤褐色になったりします。また、全身のだるさや、手足のむくみ、息苦しさといった自覚症状があらわれることもあります。

糸球体って腎臓のどこにあるの?

腎臓は、腰の上あたりに左右に2つある臓器です。手をぎゅっと握った「握りこぶし」くらいの大きさをしています。この中に、小さなろ過装置である糸球体が詰まっています。糸球体は毛細血管が集まってボールのようなかたちをしており、ボーマン嚢(のう)という袋に包まれています。糸球体とボーマン嚢の組み合わせを「ネフロン」と呼びます。

全身を巡ってきた血液が糸球体に流れ込むと、血液の中から老廃物を含んだ液体(原尿)が、ボーマン嚢の中にろ過されます。ボーマン嚢は尿細管という細い管につながっており、尿細管を通る間に再利用できる必要なものは再吸収をされていき、尿がつくられます。
約100万個のネフロンでつくられた尿が腎臓の中の腎盂(じんう)という場所に集まり、尿管や膀胱を通って体の外に排出されていきます。

糸球体腎炎には種類があるの?

糸球体腎炎は、下記のようにさまざまなタイプがあります。腎臓そのものに問題がある原発性(げんぱつせい)のものと、腎臓以外で起こった病気によって引き起こされる続発性(ぞくはつせい)に分類されることもあります。

IgA(免疫グロブリンA)腎症

世界でも最も多い腎炎です。日本では難病指定をされており、放置していると透析治療が必要になる疾患です。発症の詳しいメカニズムは明らかになってはいませんが、本来であれば人間の体を守る抗体の一種IgA(免疫グロブリンA)が糸球体に付いてしまい、糸球体に炎症を起こすと考えられています。自覚症状がほとんどなく、健康診断などで発見されやすい疾患です。

急性糸球体腎炎

ウイルスや細菌の感染が他の部位で起こったあとに腎臓に症状が現れます。喉の痛み、皮膚の炎症など風邪やかぶれと軽視しやすい症状から、むくみや血尿といった症状があらわれます。

ネフローゼ症候群

尿中のタンパク量が特に多くなり、血液中のタンパク量が低下します。手や足のむくみや、だるさがみられます。発症の詳しいメカニズムは多岐に渡ります。

急速進行性糸球体腎炎

数週間から数ヶ月の間で腎臓の機能が急激に低下します。原発性でも続発性でも起こる可能性がありますが、いずれにおいても腎臓の機能が著しく低下するため、早期に診断と治療の開始が必要です。

糸球体腎炎の治療法は?

一般的に腎機能が回復するまでの治療法としては、タンパク質や塩分をコントロールした食事療法と、十分な休養が挙げられます。その他、症状に応じて血圧を下げる薬や、炎症を緩和するステロイド薬、免疫抑制薬といった薬物療法が用いられることがあります。

そして可能であれば、糸球体腎炎を引き起こしている原因疾患の治療を行います。糸球体腎炎の起こる可能性がある疾患としては、膠原(こうげん)病、血管炎、炎症性腸疾患、悪性腫瘍(がん)などがあります。膠原病は、本来であれば外部から侵入する細菌やウイルスから体を守る免疫系が、自分の体を攻撃してしまう自己免疫疾患のひとつです。

おわりに:糸球体腎炎は症状が軽いうちに治療を始めることが重要

糸球体は、ひとつの腎臓の中に約100万個ある器官です。体の中のさまざまな代謝によってつくられた老廃物をろ過して、尿として排泄するためのろ過装置の役割をしています。この糸球体に炎症がおこって腎機能が低下する病気を糸球体腎炎といい、いくつかの種類に分けられます。

糸球体腎炎は軽症であれば、食事療法や十分な休養で改善することもあります。しかし、腎臓の疾患は、重症化すれば透析や腎移植が必要となることもあります。自覚症状がないこともあるため、定期的な健診を受けることが大切です。

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