記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/11/30
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
大腸の粘膜が傷つき、ただれてしまう「潰瘍性大腸炎」には「再燃」という状態があるとされます。ではこの潰瘍性大腸炎の再燃とは、どんな状態なのでしょうか。予防するには、どんなことをすればいいのでしょうか。
「潰瘍性大腸炎(かいようせいだいちょうえん)」は、原因不明の炎症によって大腸の粘膜が傷つき、びらん(ただれ)や潰瘍ができる慢性の病気です。症状や経過は人により異なりますが、主に慢性的な下痢や血便、粘便、腹痛、発熱や貧血などがあらわれます。
症状が良くなることを「寛解」、ぶり返すことを「再燃」といいますが、再燃寛解型という寛解と再燃を繰り返すタイプがもっとも多く、そのほか長期間病状が重いままとなる慢性持続型、強い症状から手術になることの多い劇症型、早期に寛解して再燃なく経過する初回発作型があります。
悪化すると腸にガスが溜まったり穴があくなどして、入院や手術が必要となることがあります。また、長期化することで潰瘍の範囲が広がったり、がん化するリスクも高まるといわれています。できるだけ早いうちに寛解を目指して適切な治療を受け、長く再燃のない状態を維持することが大切です。
まず、同様の症状がでる病気に細菌性の感染性腸炎がありますが、腸内で細菌感染を起こすことで潰瘍性大腸炎が再燃する場合があります。また、大腸粘膜の炎症が残っていると再燃しやすくなります。症状が落ち着き寛解期と考えられる人でも実際には炎症が残っていることが多くあり、近年、粘膜が治癒をしている人としていない人ではその後1年間の再燃率が約30%、70%と大きく違っていることが報告されました。
現在では「粘膜治癒」という状態が重要と考えられるようになり、治療の目的も症状の改善から粘膜治癒に変わっています。なお、精神的な要因でこの病気になることはありませんが、肉体的、精神的なストレスが腹痛や下痢といった再燃症状を引き起こしてしまう可能性も否定できません。ストレスはあらゆる病気で症状を悪化させる要因のひとつとなっています。
潰瘍性大腸炎では、寛解と再燃を繰り返すことが大半であることから、再燃を予防するための長期の治療が必要となります。症状がなくとも、寛解を維持するために長期服用の安全性が確認されている5-ASA製薬の服用を続けるのが原則です。医師の指示通りの服用を続けた人の約90%が寛解を維持しましたが、そうでない人では約40%、つまりおよそ6割の人が再燃したとの報告もあります。
外来で一般的に用いられるのは、5-アミノサリチル酸(5-ASA)経口製剤で、症状の改善と寛解の維持を目的としています。また、直腸やS状結腸の炎症では、5-アミノサリチル酸(5-ASA)局所製剤を肛門から投与します。5-ASAは、合併症として発生の確率の高い大腸がんの予防効果があることも報告されています。潰瘍性大腸炎は、長期の治療が必要な大腸がんのリスクも高まる病気です。定期的な検査を受けることが大切です。
潰瘍性大腸炎は、症状が良くなる「寛解」とぶり返す「再燃」を繰り返す慢性の病気です。再燃を避けるためには、症状に関わらず粘膜の炎症をきちんと直すこと、治療後は定期的な検査と継続的な薬の服用を続けることが重要です。
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