生活習慣病予防健診と人間ドックって何が違うの?

2018/11/17

山本 康博 先生

記事監修医師

東大医学部卒、独立行政法人国立病院機構東京医療センター

山本 康博 先生

生活習慣病予防健診と人間ドックは、どちらも体の健康状態について検査をすることだとはよく知られています。しかし、その内容については詳細に知らない人も少なくありません。
生活習慣病予防健診と人間ドックは、具体的にどのような検査を行っているのでしょうか?また、受診の仕方にどのような違いがあるのでしょうか?

生活習慣病予防健診ってどんなもの?

生活習慣病予防健診とは、年一回の定期健康診断のことを指します。この検診は診察や尿・血液を採取して行う検査や、胸や胃のレントゲン検査など、約30項目に渡る全般的な検査です。検査の対象者は、検査を行う年度において35〜74歳の人です。

さらに、検査項目を増やして病気の早期発見や生活習慣改善などの健康管理を目的とした付加健診を行う場合もあります。これは、前述の一般健診を受診する人のうち、40歳または50歳の人が対象となります。

生活習慣病予防健診の検査項目は?

生活習慣病予防に関する検査には、以下のようなものがあります。

診療項目 目的 検査方法
診察・問診 現在の健康状態や生活習慣(飲酒・喫煙など)の調査 あらかじめ記入した問診票のほか、医師の質問に答える
身体計測 肥満ややせの程度を調べる 身長と体重、腹囲を測定し、BMIを算出して肥満・やせの程度を判定する
血圧測定 高血圧・低血圧の有無を調べ、異常がないかを検査する 手動式や電子式の血圧計で上腕部の血圧を測定する
血中脂質検査 動脈硬化などの原因となる中性脂肪やコレステロール値などを測定する 血液を採取し、血中の各物質の数値を測定して異常の有無を判定する
肝機能検査 肝硬変や肝炎など、肝機能に関する異常を検査する 血液を採取し、血中の肝細胞の酵素量を測定する
血糖検査 糖尿病・肝硬変・高尿酸血症などの可能性を調べる 検査前日夜からの10時間以上の絶食後、空腹時の血液を採取して血糖値や尿酸値、グリコヘモグロビン値を測定

尿糖値の検査は採尿し、試験紙の変色によって尿糖の有無を測定する

尿検査 腎臓病などの腎疾患の可能性を検査する 尿蛋白の検査は採尿を行い、試薬や試験紙によって変色を判定する

血清クレアチニンの検査は採血を行い、血中の濃度を測定する

眼底検査 高血圧・動脈硬化を見つけるために行われるが、同時に網膜症などの糖尿病の合併症を発見することもできる 黒目(角膜)にフラッシュを当て、眼底の血管の状態を観察する
腹部超音波 肝臓・胆嚢・膵臓・腎臓などの腹部の臓器・組織の様子を検査する プローブという超音波発信機を腹部に押し当て、コンピュータで画像化して観察する

診察・問診ではどのようなことを聞かれるの?身体計測の基準は?

問診では、検査前日や当日の飲食状況や体調、直近の健康状態や気になる症状、嗜好・喫煙歴・服薬歴、本人と家族を含む疾患の既往歴などを聞かれます。通常問診票に記入する形式であり、記入された情報を元に医師の質問を受けて答え、検査の参考とします。

身体計測では、身長・体重からBMI値を算出し、やせ・肥満の判定を行います。BMI値は18.5以上25未満が普通体重とされ、18.5未満はやせすぎ、25以上は肥満と判定されます。また、腹囲を臍の位置で水平に測定し、メタボリックシンドロームに該当するかどうかの判定も同時に行います。また、BMI22が最も病気になりにくい「標準体重」と考えられています。

肥満やメタボリックシンドロームによって動脈硬化や高血圧・脂質異常症・糖尿病などの生活習慣病を引き起こすリスクが高まるため、生活習慣病予防の健診として重要な項目です。

血圧・血液系の検査にはどのような基準値があるの?

血液系の検査は、血圧検査・血中脂質検査・肝機能検査・血糖検査の4つがあります。血圧検査は上腕部に測定機械を取りつけて行いますが、他の3つは採血を行い、血中の物質の濃度を測定することで検査を行います。

血圧の正常値は、最高値が140mmHg未満、最低値が90mmHg未満とされています。最高値が160mmHg以上、最低値が100mmHg以上となると高血圧とされ、治療が必要とされます。高血圧症のほか、動脈硬化症・心疾患・脳卒中などの疾患が考えられます。

血中脂質検査の基準値にはどんなものがあるの?

血中脂質検査では、以下の項目について検査を行います。

成分名 基準値 要検査・要治療値
総コレステロール 140〜199mg/dL 要精密検査:140mg/dL未満

要治療:240mg/dL以上

中性脂肪 150mg/dL未満 要治療:250mg/dL以上
HDL-コレステロール 40mg/dL以上 要治療:35mg/dL未満
LDL-コレステロール 120mg/dL未満 要治療:180mg/dL以上

総コレステロール値は、血中に含まれる全てのコレステロールを測定した値です。コレステロールはホルモンや胆汁酸、ビタミンKの材料になっており、健康維持に不可欠な成分ですが、悪玉コレステロールとも呼ばれるLDL-コレステロールを始め、増えすぎると動脈硬化などの疾患の原因になります。

中性脂肪は、食事から摂取されたエネルギーがいったん体内に貯蔵され、皮下脂肪や内臓脂肪となった状態です。これも使われずに増えすぎると動脈硬化の原因となります。

HDL-コレステロールは善玉コレステロールと呼ばれ、細胞が使いきれなかったコレステロールや動脈の壁に付着したコレステロールを回収して肝臓へ戻す働きがあります。ですから、HDL-コレステロールは少なすぎると動脈の壁に付着しているコレステロールを回収しきれず、動脈硬化の原因となります。

肝機能検査の基準値にはどんなものがあるの?

肝機能検査では、まず以下の項目について検査を行います。

成分名 基準値 要検査・要治療値
GOT(AST) 35U/L以下 要精密検査:50U/L以上
GPT(ALT) 35U/L以下 要精密検査:50U/L以上
γ-GTP(γ-GT) 55U/L以下 要精密検査:100U/L以上
ALP 340U/L未満 要精密検査:450U/L以上

肝機能検査で測定されるこれらの酵素のうち、上記3つが肝細胞に含まれる酵素です。これら3つの酵素が血中に大量に流れ出すのは、肝細胞そのものが破壊されたからだと考えられるのです。γ-GTPは特に飲酒の習慣のある人で多く検出され、肝炎の他に脂肪肝などでも高値を示します。GOTまたはGPTはいずれもタンパク質を分解してアミノ酸を作り、代謝を助ける酵素です。GOTとGPTの上昇の程度により、疑われる疾患を分類することができます。

  • GOTのみが増加…心筋梗塞、筋ジストロフィー
  • GOT、GPTともに大量に増加…急性肝炎
  • GPTがGOTよりも増加…慢性肝炎、脂肪肝
  • GOTがGPTよりも増加…肝硬変、肝臓がん

ALPは胆道に分泌される酵素で、肝臓障害のほか、胆道の障害・疾患によって胆汁が排泄されなくなると血中に溢れ出します。骨や甲状腺に障害が起こっているときにも数値が上がることから、それらの疾患を発見する指標とすることもできます。

また、肝機能検査の付加健診として総蛋白・アルブミン・総ビリルビン・LDH・アミラーゼなどの値を測定することもあります。

血糖検査の基準値にはどんなものがあるの?

血糖検査では、以下のような項目について検査を行います。

成分名 基準値 要検査・要治療値
空腹時血糖 110mg/dL未満 要精密検査:116〜125mg/dL

要治療:126mg/dL以上

血清尿酸 7.0mg/dL以下 8.0mg/dL以上
ヘモグロビンA1c 6.0%未満 要治療:6.5%以上

血糖値とは血液中のブドウ糖量のことで、通常は食事を取ると上昇し、その後時間の経過とともに低下していき、変動は一定の範囲内におさまっています。しかし、糖尿病や予備軍の場合は一定の範囲を超え、常に血糖値が高い状態が保たれてしまいます。空腹時血糖とヘモグロビンA1cの値がいずれも要治療に当たる場合、糖尿病と判断されます

尿酸とは、プリン体という物質が分解されてできた最終代謝産物であり、通常は尿とともに排出される物質です。しかし、尿酸が過剰に作られたり、臓器の機能障害により排出がうまくいかなくなると血中濃度が高くなります。さらに結晶化して関節部などに溜まると、炎症に激痛を伴う痛風という疾患を引き起こします。

生活習慣病予防健診と人間ドックとの違いは?

生活習慣病予防健診と人間ドックはよく混同されがちですが、その検査内容には大きな違いがあります。

一般的に、生活習慣病予防健診は会社などで年に一度、全員が受診することを義務づけられた健康診断です。利用者が個人負担する金額はほとんどありませんが、内容は基本健診と胃癌・大腸癌検診などで、それほど複雑な検査や専門的な検査は行われません。基本健診の内容は法律や厚生労働省によって定められ、健康状態の確認や生活習慣病のチェックが目的です。検査時間は1〜2時間程度です。

一方、人間ドックは任意の健康診断で、生活習慣病を含め、一般的な疾患のほか、がんなどの悪性腫瘍の早期発見をすることができます。オプションの検査項目を含めると、体全体のスクリーニング検査を受診することができます。また、受診日当日に医師による結果説明や保健指導などを受診することも可能です。検査時間は半日〜1日が一般的ですが、内容によっては2日かかることもあります。

任意の健康診断ですから、受診の費用は自己負担で、3〜5万円程度が相場です。オプション検査の頭部MRI/MRA、胸部ICTなどの検査も含めて行う場合、10万円を超えることもあります。しかし、一般的な健康診断では行われないような項目も調べることができるため、加齢とともに見つかりにくくなっていく疾患を早期に発見できる可能性が上がります。

日本人間ドック協会などが標準的な検査項目を定めているため、疾患の早期発見・治療のためにも、年に一度の義務づけられた検査だけではなく、人間ドックを利用することも検討しておくとよいでしょう。

おわりに:生活習慣病予防健診の他に、時には人間ドックの利用もおすすめ

生活習慣病予防健診は、手軽で自己負担もほとんどかからずに受けられる健診として便利です。しかし、年齢を重ねていくと、簡便な検査では見つかりにくい疾患のリスクも増えてきます。

生活習慣病予防健診を利用しながらも、数年に1回は人間ドックを利用し、生活習慣病や悪性腫瘍などの早期発見・治療につなげることが、健康的な生活のためにおすすめです。

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