誤嚥性肺炎は治療すれば治る?再発予防のためにすべきこととは

2018/11/10

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

老人の肺炎の中で大部分を占めるといわれる「誤嚥性肺炎」。この誤嚥性肺炎は、治療をすれば治るものなのでしょうか。また、誤嚥性肺炎は再発しやすい肺炎ともいわれますが、再発リスクをなるべく減らすにはどんな工夫が必要なのでしょうか。

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誤嚥性肺炎になると、どんな症状が出てくるの?

誤嚥性肺炎とは、嚥下機能障害のため唾液や食べ物、あるいは胃液などと一緒に細菌を気道に誤って吸引することにより発症する肺炎のことをいいます。

特に嚥下機能の低下した高齢者、脳梗塞など脳血管障害による後遺症で嚥下機能が低下している場合や、パーキンソン病などの神経疾患を罹患している人、寝たきりの人に多く発症し、肺炎球菌や口腔内の常在菌である嫌気性菌が原因となることが多いとされています。

通常、誤嚥をすると肺への異物侵入を防ぐために咳をするなどの反射行動が起こりますが、上記の状態の方ではこの反射が起こらず、誤嚥性肺炎に発展してしまうのです。特に高齢者の肺炎患者の70%程がこの誤嚥が関係した肺炎であるとされています。

また、誤嚥性肺炎には2種類あります。1つ目が胃逆流の誤嚥性肺炎で、嘔吐直後から呼吸が荒くなり、低酸素血症や発熱を引き起こします。2つ目は口腔、咽頭内残留物の誤嚥性肺炎で誤嚥性肺炎の多くがこれにあたります。数か月の間に繰り返し、治療により改善するものの経口摂取にて再発することが特徴です。

誤嚥性肺炎の症状は発熱、咳、膿のような痰が特徴的な症状です。しかし、症状は必ずしもみられるというわけではなく、なんとなく元気がない、食欲がない、喉がごろごろと鳴っているなどの非特異的な症状のみがみられることも多いのが、誤嚥性肺炎の特徴です。他にも食事にかなりの時間を要する、倦怠感が見られる、食事中にむせるという場合も誤嚥性肺炎が疑われます。

誤嚥性肺炎は治療すれば治るの?

誤嚥性肺炎の治療法は抗生物質を用いた薬物療法が基本となり、呼吸状態や全身状態が不良な場合は入院して治療を行います。それに加えて口腔ケアをしっかりと行ったり、嚥下指導を行ったりもします。また、嚥下反射を改善する効果が確認されているACE阻害薬などの適応を検討することもあります。

誤嚥性肺炎は再発しやすい肺炎ともいわれています。なぜなら、そもそも嚥下能力の低下が原因で起こる肺炎だからです。元々脳血管障害や神経疾患を罹患している場合は病気が進行することによって嚥下能力が低下します。また、高齢者も年齢を重ねるごとに嚥下機能が衰え、誤嚥をしやすくなります。

そして誤嚥性肺炎は、再発を繰り返すうちに治療薬に対しての耐性ができてしまう恐れがあるため、再発を予防して誤嚥性肺炎を繰り返さないということが重要になります。

誤嚥性肺炎の再発を予防するには?

誤嚥性肺炎を予防するために重要なのが、誤嚥のリスクを減らすことと感染のリスクを減らすことの2点になります。

誤嚥のリスクを減らすためには、食事にとろみをつけるなど嚥下機能に合わせた食形態にするなどの工夫をしたり、食事の際には上半身を30°起こした体位にして、食べ物を飲み込みやすくすることなどが必要です。テレビを消すなど食事に集中できるような環境を整えることも必要です。他にも胃逆流の誤嚥性肺炎を防ぐために、食後2時間以内に横にならないことも予防として重要です。また、日ごろから嚥下リハビリを行い嚥下機能を維持、向上させることも重要です。

感染のリスクを減らすためには、口腔内を清潔に保つことも重要です。口腔内細菌を減らすことで肺炎の予防につながります。歯磨きや口腔ケアを怠らないようにしましょう。歯磨きや入れ歯の手入れを食後3回と寝る前の計4回行うように心がけ、舌苔は専用の器具で落とします。

また、虫歯や歯周病がある場合は、口内細菌が増加しているため誤嚥性肺炎を起こしやすくなるといわれています。虫歯や歯周病がある場合には歯科で治療を受けるようにしましょう。

おわりに:日ごろから誤嚥性肺炎の予防を

唾液や食べ物、胃液などと一緒に細菌を気道に誤って入れてしまうことで発症する誤嚥性肺炎。高齢者や脳血管障害の後遺症がある方、神経疾患がある方や寝たきりの方では特に発症しやすい肺炎です。主な症状は発熱や咳、痰ですが、これらの症状が見られず気が付いたら肺炎が進んでいた、ということもあり得ます。食事内容や食事を摂る環境を見直したり、嚥下機能の維持をしたり、口腔内を清潔にしたりすることで発症リスクを低減できるので、日ごろから意識してみてはいかがでしょうか。

※抗菌薬のうち、細菌や真菌などの生物から作られるものを「抗生物質」といいます。 抗菌薬には純粋に化学的に作られるものも含まれていますが、一般的には抗菌薬と抗生物質はほぼ同義として使用されることが多いため、この記事では抗生物質と表記を統一しています。

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