記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/11/26
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
健康診断などでよく聞かれる「脂質異常症」とは、どんな疾患・状態のことなのでしょうか?また、脂質異常症を改善・予防するためには食事療法からと指導されることも多いですが、具体的にはどのようなことに気をつけながら食事を摂ると良いのでしょうか?
脂質異常症とは、血液中の脂質が一定の基準よりも多い状態のことで、以前は高脂血症とも呼ばれていました。脂質に数えられるのはコレステロールや中性脂肪(トリグリセライド)ですが、コレステロールは付随するリボタンパクの違いによって善玉と悪玉の2種類に分けられます。
善玉コレステロールは動脈硬化を防ぐ働きがあり、悪玉コレステロールは増えすぎると動脈硬化の原因となります。そこで、基準値よりも善玉が少なく、悪玉が多い場合は脂質異常症と診断されます。動脈硬化が起こると、心筋梗塞や脳卒中などのリスクが高くなります。また、高血圧の人は常に血管に強い圧力がかかっているため、高血圧の人が脂質異常症を発症すると血管の壁がより傷つきやすくなり、動脈硬化がさらに進行するリスクが増えてしまいます。
中性脂肪が増える原因は、食べ過ぎ・飲み過ぎによって食事に含まれる糖質や脂質をエネルギー源として使い切れないことが原因です。また、タンパク質も余ると体内で糖質に変えられて中性脂肪として蓄えられます。これらのエネルギー代謝を行うのは肝臓で、特に肝臓で作られるインスリンというホルモンが不足すると中性脂肪の消費が減ってしまうため、糖尿病の人は脂質異常症を合併しやすくなります。
これらのコレステロールや中性脂肪が増えると、血液がドロドロの状態になります。自覚症状はほとんどないため、気づかないまま進行し、ある日突然心筋梗塞などの発作で倒れるという人が少なくありません。脂質異常症が進行するのを防ぐには、毎日の食事や運動に気をつけることと、健康診断などで「脂質異常症の疑い」という診断を受けたら放置せず早めに病院を受診して医師の指導を受けることが重要です。
脂質異常症の診断基準は、以下の通りです。
LDLは悪玉コレステロール、HDLは善玉コレステロールのことです。これらはいずれも食後10時間以上あけた空腹時に測った数値によります。境界域とは、脂質異常症に関しては今すぐ治療が必要というわけではありませんが、他の危険因子のリスクが十分に高い状態です。そのため、生活習慣改善だけでなく、他の危険因子に関しても検査や治療の早期介入が必要になる場合もあります。
これらの基準は、2006年までは「総コレステロール値が220mg/dL以上」のみでした。しかし、総コレステロール値には善玉も悪玉も同時に計上されるため、悪玉コレステロールはそれほど多くなく、善玉コレステロールが多い場合にも脂質異常症と診断されてしまう可能性がありました。
新しい診断基準では、悪玉と善玉の区別をはっきりさせ、さらに中性脂肪の数値も計測することで、どのタイプの脂質異常症なのか、またそれぞれの対処法をより詳細に診断することができるようになりました。
脂質異常症を改善するためには、「主食」「主菜」「副菜」の3つからアプローチが必要です。
主食となる穀類は、意外に脂質が少ないのです。そこで、まずはご飯やパンなどのエネルギー源をしっかり摂取しましょう。また、間食でケーキなどの甘いものを食べることも控えめにし、慢性的なカロリー過多や、間食の代わりに主食を減らすなどのバランスの悪い食生活は避けましょう。
主菜では、サバやイワシ・サンマなどの新鮮な青魚を意識して多く摂りましょう。マグロの赤身やタイなどもおすすめで、焼き魚よりも刺身や煮魚にするとより多くの不飽和脂肪酸を摂取することができます。不飽和脂肪酸はいわゆるEPA(イコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)と呼ばれるもので、悪玉コレステロールを減らす働きがあります。
副菜では、植物性のタンパク質や食物繊維をたっぷり摂り、悪玉コレステロールや中性脂肪を減らしましょう。両方同時に摂れる食品として非常に効率が良いのは大豆などの豆類です。豆腐や納豆などの大豆食品を1日の食事のどこかで摂取するのがおすすめです。その他、食物繊維はイモ類・根菜類・キノコ類・野菜類・海藻類などにも多く含まれています。
コレステロールの数値を下げるためには、上記の食事バランスを心がけながら、さらに以下のようなことにも気をつけていくと良いでしょう。
コレステロールは卵に多く含まれます。そこで、鶏卵や魚卵、うなぎ、しらす、いか、動物のレバーなどを食べすぎないことが大切です。もちろん、これらの食品にも栄養素が含まれていますので、全く食べないとするのではなく、適量を摂取するようにしましょう。また、人によってコレステロールが多い食品を食べるとすぐに血中コレステロール値が上がる人と、上がりにくい人がいます。反応しやすい人は特に注意が必要です。
また、ビタミンCやEを積極的に摂取しましょう。ビタミンCやEには抗酸化作用があり、悪玉コレステロールの酸化を防いで動脈硬化を予防することができます。ビタミンCやEは緑黄色野菜であるニンジンやカボチャ・トマト・ピーマンなどのほか、鮭やサバなどの魚にも豊富に含まれています。ビタミンCとEは一緒に摂取するとより効果的ですので、一緒に摂取することも心がけてみましょう。
中性脂肪が増えるのは、基本的に摂りすぎが原因です。そこで、摂りすぎないことを念頭に置いて対策をしていきましょう。
食事の量は腹八分目を心がけ、満腹にならないようにしましょう。慢性的に食べ過ぎの状態でエネルギーが余っていると、中性脂肪となってどんどん蓄積されてしまいます。また、一口ごとによく噛んで食べる、ゆっくり食べるくせをつける、食事の途中でいったん箸を置いて一休みする、などでも満腹中枢をしっかり機能させることができます。
アルコールは、適量飲むならば善玉コレステロールを増やしてくれるのですが、飲みすぎてしまうと逆に中性脂肪を増やす原因となってしまいます。厚生労働省の示す「節度ある適度な飲酒」量は、1日あたりビール中瓶1本、日本酒1合、ウイスキーダブル1杯などです。なお、アルコールそのものにもカロリーはあるため、つまみなどであまり高カロリーなものを摂りすぎないことも気をつけましょう。
悪玉コレステロールや中性脂肪の値を下げるためには、食事療法だけでなく運動を併用するとより効果が期待できます。運動は、肥満を解消するだけでなく、内臓脂肪を落としたり、筋肉を増やして糖や脂肪の代謝を増やすことができます。これによって、脂質異常症だけでなく生活習慣病や、加齢によって低下しがちな免疫力も維持することができます。もちろん、肥満でない人にもこれらの効果は十分に期待することができます。
運動をする際には、以下のようなことを目安として行うと良いでしょう。
運動量の目安は、「ややきつい、少し汗ばむ」程度のものを30分程度行うのがおすすめです。息切れするほどのきつさは、筋肉や臓器に負担をかけ、かえって体調を悪くしてしまう可能性がありますので、きついと感じるようであればペースをゆるめましょう。また、運動の前後にストレッチなどの軽い体操を行い、筋肉をしっかりほぐすことが大切です。
脂質異常症は、コレステロール値が多い場合にも中性脂肪が多い場合にも、栄養素の摂りすぎが主な原因となっていることがわかります。そこで、食事療法を行う場合は全てにおいて「適量」がキーポイントとなります。
食べすぎない・飲み過ぎない腹八分目の量ももちろんですが、食事内容も偏らないよう栄養バランスをよく考えながら食べましょう。さらに運動も同時に行えば、相乗効果が期待できます。
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