記事監修医師
工藤内科 副院長 工藤孝文先生のスマホ診療できるダイエット外来
工藤 孝文 先生
便は健康のバロメーターといわれ、形、色、においなどで私たちの健康状態をあらわしています。
こちらでは毎日排便されないことは便秘なのか、便秘の定義と便秘のタイプ、便秘によって引き起こされる諸症状や改善方法などについて説明していきます。
一般的に便秘とは、本来体外に出すべき便の排出を順調に行えていない状態を指します。
これらの状態の組み合わせを便秘と呼び、「何日間排便されなかったら便秘」という定義はありません。つまり毎日排便がなくても、規則的にすっきりと排便が行われていれば便秘とはいえないのです。反対に、毎日排便があっても上記のような症状があれば、便秘といえるでしょう。
便秘のタイプは大きく分けると、器質性(きしつせい)便秘と機能性便秘の2つです。
大腸の疾患で腸管が狭くなって排便しづらかったり、先天的大腸過長症などで腸の長さや大きさに異常が生じていたりする場合、これに該当します。
器質性便秘は、原因となる疾患を治療すれば改善しますが、先天性の異常が原因の場合は、便秘とうまく付き合っていく方法を考える必要があるでしょう。
機能性便秘は、胃や小腸、大腸などの機能が低下することによって引き起こされる便秘です。腸の動きが悪い弛緩性便秘、腸が過緊張を起こすけいれん性便秘、直腸に便がたまる直腸性便秘の3つに分けられます。
弛緩性便秘は、腸のぜん動運動がうまく行なわれないために便が押し出されず、腸に便がたまってしまっている状態を指します。便が硬くすっきりしない感じや、ガスでお腹が張っているような感覚が特徴です。運動不足が大きな原因となっているので、運動を行ったり浣腸をしたりして排便を促します。
けいれん性便秘はストレスなどによって自律神経が乱れ、腸がけいれんすることによって便がスムーズに運ばれない状態です。便秘と下痢を繰り返し、コロコロとした便が出るのが特徴です。ストレスを軽減して自律神経を整えることが対処法となっています。
直腸性便秘は、便が肛門付近まで来ているのに便意が脳にうまく伝わらず、直腸に便が停滞してしまっている状態です。便意を我慢しすぎたり、浣腸を頻繁に使用したりすることが原因と考えられています。便意を感じたらすぐトイレに行きましょう。
便秘によって引き起こされる症状には以下のようなものがあります。
腸内にたまった便が悪玉菌を増やして、ガスを発生しやすくさせます。病気が原因で腸が狭くなっている場合にも、便やガスがお腹を張らせるケースもあります。
便やガスが腸の出口をふさぎ、腹痛の原因になります。肛門側に送り出そうと一生懸命働くことで痛みが生じ、腸のたるみの多いS状結腸(左下腹部)に起こりやすい症状です。
便がたまって腸の働きが悪くなると食欲が低下します。また、腸全体の働きが悪くなると消化液が消化管にたまって、吐き気を感じやすくなります。
内痔核とはいわゆるいぼ痔で、過度な力みやうっ血によって肛門内部が出血し膨らみ、付け根の粘膜が緩むことによって肛門の外側にいぼが飛び出した状態です。軟膏を使用することでうっ血の炎症は解消しますが、粘膜のたるみは手術が必要なケースがあります。
裂肛は便が無理に肛門を通過しようとすることで起き、肛門付近が切れている状態です。裂肛を繰り返すとその周囲がひきつれて修復されるので、さらに肛門が狭くなり、何度も症状を繰り返してしやすくなります。
器質性便秘のような先天的なものが原因でなければ、生活習慣の改善で便秘の解消が望めます。
まずは食物繊維の多い食事を摂るようにしましょう。きのこ類、海藻、果物、穀物などは便中に水分を蓄え、便の量を増加させてスムーズな排便を促してくれます。
また、水分を飲む量が少なかったり、発汗が多かったりすると、便が硬くなって、排出されにくくなります。水分を多く摂るように心がけ、起床時にコップ1杯の水を飲むと、腸が刺激されて排便が促されるのでおすすめです。
適度な運動やマッサージを行うのも良いでしょう。運動は排便に必要な腹筋を鍛えることができ、マッサージは腸の動きを良くして排便を促します。
そして便意を我慢しないことはもちろん、便の有無に関わらず食後にトイレへ行く習慣をつけることも大事です。
「便秘=毎日便が出ないこと」と思っている方は多いですが、ご紹介したように便秘の定義は正確に決まっておらず、さらに種類もさまざまです。いずれにしても便秘を放置すると、痔や腹痛などほかの症状も引き起こすようになるので、できる対策で解消していきましょう。
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