緩和ケアってどんなもの?緩和ケア病棟の治療ってどんなことをする?

2018/12/2

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

がんやその治療などを調べていると「緩和ケア」という言葉が出てくることがあります。
緩和ケアとは具体的にどんな内容で、他の治療と比べてどのような違いがあるのでしょう。緩和ケア病棟で行われる治療の内容などを解説します。

冷凍宅配食の「ナッシュ」
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緩和ケアとは

緩和ケアは、かつてはがんなどの重病を患う終末期患者に対して行われる特別な治療、終末期医療ケアと考えられてきました。
実際に、WHOは1990年に「治癒を目指した治療が有効でなくなった患者に対する」ケアを、緩和ケアと定義するという発表を行っています。

しかし、この定義は2002年に変更されました。
2002年のWHOの発表によると、現在では「生命を脅かす疾患による問題に直面している患者とその家族に対する」ケアが、緩和ケアの定義であると改定されているのです。

つまり緩和ケアとは、終末期かどうかにかかわらず、疾病による苦痛を抱える患者とその家族に対して早期から行われるべき、あらゆるサポートを示しています。

具体的には、以下のような内容が「緩和ケア」の定義に含まれています。

  • 疾病によって患者が感じている身体的苦痛を、医療チームによる治療で和らげる
  • 治療によって生じた副作用などの苦痛を、和らげるための措置をとる
  • 疾病によって患者と家族が感じている精神的・社会的苦痛を、医療チームが和らげる
  • 患者のQOLが高くなり、日々家族と幸せを感じられるようサポートする
  • 患者と家族が穏やかに最期のときを迎えられるよう、死へ向かうサポートをする
  • 患者と家族の意思に反し、無理に延命の治療を選択させない
  • 患者との死別後に大きな精神的苦痛に遭遇する家族に対し、十分に配慮する

緩和ケア病棟はどんなところ?

一般的に、緩和ケア病棟では病気そのものに対する治療・延命行為は、一切行いません。
あくまでも、治癒が見込めない病気によって生じる痛みや心身の苦痛を、和らげるための医療・治療を行うことを目的とした入院病棟です。

入院後は、緩和ケアを専門とする医師・看護師・薬剤師・臨床心理士などのチームから、患者はもちろんその家族に対するさまざまな方面からのケアを受けられるようになります。

また、緩和ケア病棟に入院できる対象者は、以下のような患者とその家族です。

  • がんなどの悪性腫瘍、または後天性免疫不全症候群など治癒が見込めない病気である
  • 患者本人とその家族が、緩和ケア病棟について正しく理解して、入院を希望している
  • 病気に伴う心身の苦痛のため、患者と家族双方にとって自宅療養が難しい
  • 主治医から、入院が必要との判断が下されている
  • 入院後、状態が落ち着いたときには転院や在宅療養を検討する意思があと

緩和ケア病棟で受けられる治療は?

ここからは、緩和ケア病棟で受けられる治療について、より具体的に見ていきましょう。

まずは、病気による痛みや息苦しさ、食欲低下、吐き気、嘔吐、慢性的な倦怠感や疲労感などの身体的な苦痛を和らげるためのマッサージや、治療を行います。

他にも、病気が治癒しないことや死が迫っていることに対し、患者や家族が感じる不安や悲しみ、辛さを緩和するためのセラピーやカウンセリングなどにも対応してくれます。
また、患者のQOLが向上して日常生活が少しでも快適なものになるよう、食事や入浴、排せつ、体を拭くなどの身の回りのケアも緩和病棟での治療に含まれてきます。

おわりに:緩和ケアは病気や延命ではなく、病気による心身の苦痛を治療すること

緩和ケアは、がんなど治癒の見込めない病気によって生じる患者と家族のあらゆる苦痛を、緩和するための医療・治療のことです。このため緩和ケア病棟では、病気治療や延命のための投薬や機器の接続は、基本的に行いません。このことを理解し、専門チームによる緩和ケアを望む患者と家族のみ、緩和ケア病棟に入院することができます。延命とは異なる治療の選択肢として、知っておくと良いでしょう。

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