緩和ケアっていつから受けられるの?早いほうがいいって本当?

2018/12/3

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

がん患者などに提供される「緩和ケア」。終末期の治療、というイメージがありますが、正確にはいつから始めたほうがいいのでしょうか?以降で解説していきます。

冷凍宅配食の「ナッシュ」
冷凍宅配食の「ナッシュ」

緩和ケアとは

「緩和ケア」とは、患者の人間性を最大限に尊重しながら、体や心の苦痛をやわらげQOL(生活の質・生命の質)を改善する包括的なケアのことです。

医師や看護師のほか薬剤師や栄養士、理学療法士、心理療法士、ソーシャルワーカーやボランティアなど、さまざまな職種の人が関わりながら、全人的苦痛(トータルペイン)、具体的には、「身体的苦痛」としての痛みや苦しさ、日常生活の支障、「精神的苦痛」としての不安やうつ状態、恐怖、苛立ち、怒り、孤独感、「社会的苦痛」としての仕事上の問題や人間関係、経済的問題や家庭内の問題、相続、「スピリチュアルペイン」としての人生や苦しみの意味、罪の意識や死の恐怖、価値観の変化や死生観に対する悩みなどを、医療、ケアによってやわらげ、患者がその人らしく最後まで生活することを支えます。また現在では、家族のケアもその対象に含まれています。

緩和ケアはいつから始めた方がいいの?

緩和ケアは、日本ではまだホスピスケアのほぼ同義語として使われていますが、WHO(世界保健機構)では、1990年の「治癒を目的とした治療に反応しなくなった患者に対しての積極的で包括的なケア」から「生命を脅かす疾患による問題に直面している患者とその家族に対する」ケアへとその定義を変え、終末期に限らずより早期から提供されるべきものとしています。

たとえば、がんの場合、診断時からの痛みへの鎮痛薬の処方、病名告知による気持ちの落ち込みへの心理的な支援、治療中の副作用の予防や対処も緩和ケアに含まれます。そして再発や転移などで治癒が困難になると、治療に対して緩和ケアの占める割合は大きくなっていくことになります。米国で発表された論文では、早期から緩和ケアを受けた場合、生活の質が高くうつ病などの精神症状が少ないだけでなく、生存期間を延ばす可能性があることが報告されています。

緩和ケアではどんなことを相談できるの?

緩和ケアでは、各診療科の専門医が行う病気の診断・治療以外のさまざまな悩み、身体的・精神的な症状や日常生活の支援、社会サポートの相談、家族ケアや看取り時についての相談などをすることができます。

たとえば具体的には、重い病気と診断されたときの不安感、治療にともなう身体的・精神的・経済的苦痛、手術後の痛みなどさまざまな痛みのコントロール、息苦しさやだるさなどの身体症状、不眠や気分の落ち込みなどの精神症状、医療費の問題、転院や自宅療養についてやその人の人生観・死生観・価値観を尊重した看取りなどです。

専門病棟や一般病棟への入院時だけでなく、まだ十分ではないものの「緩和ケア外来」の設置が進んでおり、外来による緩和ケアも可能になっています。

おわりに:早期の緩和ケアが、症状緩和や生存期間の延長につながる

緩和ケアは、患者の人間性を最大限に尊重しながら体や心の苦痛をやわらげQOL(生活の質・生命の質)を改善する包括的なケアで、現在では家族のケアも対象に含まれています。患者がその人らしく最後まで生活することを支え、終末期に限らずより早期から提供されることで生存期間が延びるといった報告もあります。

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