食道裂孔ヘルニアになった原因は?痛みなどの自覚症状はある?

2018/12/11

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

食道裂孔から胃の一部が胸側にはみ出してしまう「食道裂孔ヘルニア」。この食道裂孔ヘルニアを発症した場合、痛みなどの自覚症状は現れるのでしょうか?発症原因や治療法も併せて解説していきます。

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食道裂孔ヘルニアになる原因は?

横隔膜は、呼吸に関わる膜状をした筋肉です。肺の下側に横隔膜があり、その下に胃があるという位置関係です。横隔膜は、ちょうど胸とお腹を区切るような位置にあるのです。しかし、口から入ってくる食べ物は、食道を通過して胃や小腸まで送り込まれなければなりません。そのため、横隔膜には食道を通すための穴が開いており、この穴を食道裂孔といいます。

食道裂孔ヘルニアは食道裂孔から胃の一部が胸側にはみ出してしまう状態のことをいいます。
食道裂孔には滑脱型(かつだつがた)、傍食道型(ぼうしょくどうがた)、混合型があります。滑脱型は食道とつながった部分がはみ出している状態で、傍食道型は胃の一部が食道の脇を通って出ている状態です。そして、混合型では滑脱型と傍食道型の両方が起こっています。

食道裂孔ヘルニアは生まれつきのこともありますが、肥満、喘息や慢性気管支炎の咳などで、おなかの圧力が高い状態になることで起こりやすくなります。また、横隔膜は筋肉ですから、加齢によって衰えていきます。年を重ねていくと食道裂孔がゆるんでしまい、胃が飛び出しやすい状態になります。

また、特に女性では高齢になると骨粗しょう症が起こりやすくなりますが、骨粗しょう症では本人も気がつかないうちに背骨が曲がって、円背(えんぱい)とよばれる状態になることがあります。この円背になると内蔵が常に圧迫されて圧がかかりやすくなり、食道裂孔ヘルニアが起こる可能性があります。

食道裂孔ヘルニアになると痛みが出てくる?

食道裂孔ヘルニアそのものでは、痛みのような自覚症状がないことも多いです。ただ、食道裂孔ヘルニアが別の臓器に影響することで、症状があらわれることがあります。代表的なものが逆流性食道炎です。

横隔膜は、胸部と腹部を区切り食道裂孔の部分で食道をしめつけることで、胃の内容物が逆流しないようにするという働きがあります。しかし食道裂孔ヘルニアが起こることで食道裂孔が広がり、胃液や胃の内容物が食道へ逆流することが起こりやすくなります。そして胃液は酸性であることから、逆流によって食道内側の粘膜が傷つくと、逆流性食道炎の状態になります。自覚症状は、胸焼け、胸の痛み、胸のつかえなどです。

そのほか、胃が胸側に入り込むことで、肺や心臓といった胸部にある臓器を圧迫してしまうことがあります。この場合、動悸や息切れを起こしたり、食べ物が食道を通過しづらくなったりすることもあります。

食道裂孔ヘルニアになったらどんな治療をする?

食道裂孔ヘルニアになっていても特に自覚症状がなければ治療の必要はありません。しかし、食道裂孔ヘルニアによって逆流性食道炎が起こっているときには、まずは胃酸を抑える内服薬で治療をします。内服薬で症状の改善がみられない場合には、手術を行うことも検討されます。また、動悸や息切れといった胸部の症状がある場合も、手術を検討することになります。

手術では胸の方に出てしまった胃を、本来の正しい位置に戻します。また、胃が飛び出していたことで広くなってしまった食道裂孔を小さくして、再びヘルニアが起こることを防ぎます。一般的には、腹腔鏡(ふくくうきょう)を用いた手術が行われています。腹腔鏡はお腹に小さな穴を開けて、内視鏡や手術器具を挿入して行う手術です。開腹によって行う手術に比べて体への負担が小さく、手術後の回復も早くなります。

ただし、全ての手術が腹腔鏡で行えるとは限らず、医療機関や食道裂孔ヘルニアの状態によっては開腹が必要とされることもあります。医師の説明を聞いて、納得して治療に望むことが大切です。また、食道や胃といった食べることに関わる場所を手術するため、術後に食べ物が飲み込みにくくなる摂食・嚥下(えんげ)障害が起こることがあります。基本的には症状は徐々に回復します。

おわりに:食道裂孔ヘルニアの原因はさまざま。気になる症状があるときは早めに病院へ

食道裂孔ヘルニアは本来であれば横隔膜より下側にあるはずの胃が、食道裂孔という穴から胸側にはみ出してしまう状態です。症状がないケースも多いですが、逆流性食道炎や動悸、息切れなどの症状を引き起こすこともあります。この場合、胃液を抑える薬の内服や、症状によっては手術が必要となることもあります。
食道裂孔ヘルニアは加齢にともなって起こることもあるため、気になる症状があれば病院を受診しましょう。

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骨粗しょう症(11) 肥満(82) 喘息(71) 食道裂孔ヘルニア(7) 円背(1)