緩和ケアとはどんなところ?ホスピスとの違いは?

2018/12/9

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

緩和ケアという言葉を聞いたことはありますか?日本ではがん治療にまつわる治療・ケアの一環として発展してきたため、がん治療に関連した言葉として聞いたことがある人も少なくないかもしれません。

では、緩和ケアとはいったいどのようなケアのことを指すのでしょうか?また、ホスピスとの違いはあるのでしょうか?

冷凍宅配食の「ナッシュ」
冷凍宅配食の「ナッシュ」

緩和ケアってどんなことをするところ?

緩和ケアとは、がんを治す治療ではなく、がんによる身体的・精神的・社会的など、あらゆる面での苦痛を和らげるための治療です。患者さん本人だけでなく、その家族も含め、総合的につらさを和らげるための「サポート」としてのケアを行います。緩和ケアはがんと診断されたときから病気の進行度合いとは関係なくいつでも受けることができます。

緩和ケアでは、身体的な部分では体の痛みや不快感を取り除いたり、軽減したりする試みが行われます。病状が進行していても、痛みや不快感を軽減することは可能です。痛みやつらさを和らげるためには、患者さん自身も緩和ケアのチームの一員であるという意識で、我慢せず周囲の同じチームの仲間にその痛みやつらさの状態をきちんと正しく伝えていくことが大切です。

がんが原因となる体の痛みやつらさを和らげる治療の基本とされているのが、「WHO方式がん疼痛治療法」です。これは、一定時間ごとに痛みの強さに応じた薬を飲むことを基本としており、適切に処方と服用が行われれば8〜9割の患者さんでがんの痛みを取り除く、または和らげることができるといわれています。

その他、WHO方式がん疼痛治療法では和らげることができない痛みやつらさに対しても、さまざまな治療法が工夫され、実施されています。緩和ケアには担当医や看護師だけでなく、精神医学の専門家から、薬剤師や栄養士、リハビリテーションの専門家、ソーシャルワーカー、ボランティアなど、実にさまざまな職種の人々が関わっています

こうした人々がチームとなって相互に協力し合いながら、患者さんや家族の苦痛を和らげるための身体的・精神的・社会的なサポート、ケアを行っていくのが、緩和ケアです。

緩和ケアとホスピスの違いは?

「緩和ケア」と「ホスピスケア」の違いは、大きく分けてサポートの時期や考え方にあります。日本では緩和ケア病棟に「ホスピス」という名称を使っている医療機関もあるため、緩和ケアとホスピスが混同されてしまうことが多いのですが、「ホスピスケア」という言葉の通り、もともとは療養所を意味する言葉ではなく、「患者に対して苦痛を和らげるということに限らず、全人的なケアを行う」考え方を示しています。

「全人的なケア」については定義が難しいところですが、「身体や精神などの一つの側面だけでなく、人格や社会的立場も加味した総合的な観点から取り扱う」ケアのことである、と考えられています。つまり、「苦痛を和らげる」ことに特化した緩和ケアと少し異なり、患者の人格や社会的立場によって、それぞれの人に合った、いわばオーダーメイドの医療ということもできるでしょう。

また、サポートの時期は明確に分かれています。緩和ケアは疾患を発症してから、または診断時からいつでも受けることができますが、ホスピスケアは治療の望めない時期から終末期においてのケアとされています。

これらの混同から、日本では緩和ケアを「終末期に行われるもの」「専門の病棟で専門的な医療者によって行われるもの」と誤解している人は非常に多いのですが、緩和ケアとは本来考え方、治療法のことであり、緩和ケア病棟に限らず在宅や通院で、通い慣れた病院や自宅でも緩和ケアを受けることができますし、治療中いつでも受けることができます。

また、日本では緩和ケア・ホスピスケアのいずれもがん治療から発展してきたため、がんが主流であることは間違いありませんが、いずれのケアもがんに限ったことではなく、さまざまな疾患でケアを受けることができます。また、年齢にもよりませんので、若年から高齢まで誰でも受けることができるケアなのです。

緩和ケアを受ける方法は?

緩和ケアを受ける方法は、入院・在宅・外来(通院)の3種類があります。それぞれ具体的にどのようなことをしていくのか見ていきましょう。

入院中に緩和ケアを受ける場合って?

入院して緩和ケアを受けるには、緩和ケア病棟に入院する場合と、一般病棟で治療を受けながら緩和ケアチームから診療を受ける場合があります。

緩和ケア病棟は、専門的な知識と技術に基づき、身体的・精神的な苦痛を和らげる緩和ケアを提供するための病棟です。対象となるのはがんの進行に伴う身体的・精神的な深刻な苦痛があり、がんを治すことを目標とした手術・薬物・放射線などの治療の適応でない、またはこれらの治療法を希望しない人です。施設ごとに受け入れ基準が異なる場合がありますので、詳細は各施設に問い合わせる必要があります。

緩和ケアチームの場合、入院は一般病棟です。一般病棟でがんやその他の疾患を治療中の患者さんのところに緩和ケアを担当するチームが訪問し、診察や問診を行います。緩和ケアチームは治療を担当する医師と協力し、治療や疾患に伴う痛みやつらさを和らげるサポートを行います。チームには医師や看護師、薬剤師、心理士、ソーシャルワーカーなど、各分野の専門家が状況に応じて加わります。

在宅で緩和ケアを受ける場合って?

特に日本では、自宅や慣れ親しんだ地域で緩和ケアを受けることを希望される患者さんは多いです。そこで、在宅緩和ケア・在宅ホスピスケアを行うためのサポートをする医師や看護師が全国で活躍しています。介護保険などを利用し、自宅で療養を続けながら、終末期の患者さんの場合はそのまま看取りをすることも可能になってきています

一人暮らしや家族が高齢など、在宅で点滴や痛みの緩和などの医療を継続することや介護への不安・心配がある人も少なくありません。そこで、訪問医療や訪問介護なども含め、医療職・看護職がチーム体制で在宅ケアをサポートすることもできます。在宅で緩和ケアを行いたい、受けたい場合は、ぜひがん相談支援センターや、最寄りの在宅緩和ケアセンターに相談してみましょう。

外来で通院しながら緩和ケアを受ける場合って?

外来で通院治療を受けながら、緩和ケアも提供してもらうパターンです。普段は在宅で緩和ケアを行っている患者さんが、たまに通院する場合もあります。治療を担当している医師と緩和ケアチームが協力し、治療を継続しながら患者さんの身体的・精神的苦痛を和らげるとともに、日々患者さんを支えている家族のケアも行います

また、訪問診療を行っている診療所や訪問看護ステーションなどと連携し、在宅で緩和ケアができるような支援を行ったり、本人や家族の希望によっては緩和ケア病棟への紹介も行ったりするなど、窓口的な役割を果たす側面もあります。

緩和ケアを受けるメリットは?

緩和ケアを受けることによって、疾患の治療中、または療養中の苦痛を和らげ、患者さんのQOL(クオリティ・オブ・ライフ=生活の質)を引き上げることができます。日常生活に支障をきたすような苦痛から逃れ、患者さんが積極的に患者さん自身の人生を生きられるようにすることがケアの第一目標です。

特に、緩和ケア病棟では、苦痛症状を緩和するための専門的なトレーニングを受けた医師や看護師などのスタッフによる24時間のケアを受けることができます。また、ほぼ全室が個室であり、プライバシーも守られています。面会や持ち込み物の制限も少ないため、自分の家のように家族や友人と穏やかなその人らしい生活を送ることもできます。

かつては、緩和ケア病棟はホスピスケアと同様、終末期からの看取りの場としての役割が大きい病棟でした。しかし、近年では痛みなどの症状がひどく、苦痛で日常生活を送るのが難しい時期だけ緩和ケア病棟に入院し、症状が緩和された後は自宅療養に切り替えることも増えてきました

緩和ケア病棟は、一度入院したら退院できない場所ではなくなってきています。症状が強く、自宅での療養が厳しい場合に緩和ケア病棟で専門の治療を受け、症状が軽くなってきたら退院して自宅で治療の続きを行ったり、療養を続けたりと、一時的な集中治療の場としての働きも大きくなってきているのです。そのため、退院後の在宅での治療やケアをスムーズに行うためにも、地域や在宅の医療機関との連携が求められることも多くなっています。

在宅緩和ケアの場合は、患者さん自身が住み慣れた家や地域で生活でき、もちろん面会時間などの制限もないため、充実した生活を送ることができるのが最大のメリットです。在宅緩和ケアの専門家の指導や診察を受けることで、痛みなどの身体症状を入院時同様に緩和することができます。また、介護する家族の負担を軽くするために一時的な入院(レスパイト入院)の制度を利用することもできます。

介護保険をはじめとして、介護に関わる負担を減らすため、公的なサービスで利用できる制度はさまざまです。在宅で緩和ケアを受けたい場合、ぜひ専門家と相談し、患者さん自身も家族にとっても負担を最小限に抑えることが大切です。

おわりに:緩和ケアは症状の進行度合い・時期によらず受けることができる!

緩和ケアは、がんにまつわることから終末期医療としてのイメージが強いかもしれません。しかし、緩和ケアはがんだけでなく、さらには症状の進行度合いによらず、いつでも受けることができる苦痛を和らげるためのケアなのです。

ホスピスとの明確な違いはそこが最も大きなところでしょう。緩和ケアが必要なときにはすぐに受けられるよう、緩和ケアを正しく理解しておきましょう。

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