記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/12/13
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
潰瘍性大腸炎とは、文字通り大腸が炎症を起こすことを指します。潰瘍とは、胃潰瘍や十二指腸潰瘍に代表されるように器官が何らかの原因によって傷つけられ、欠損した状態のことです。
この潰瘍性大腸炎の「直腸型」とは、どのような状態を指すのでしょうか?また、発症すると大腸がんになりやすくなるのでしょうか?
潰瘍性大腸炎とは、大腸に炎症が起きることです。大腸表面の粘膜が赤く腫れてただれたり、えぐれたりしている状態のことを指します。これらの症状は「びらん(ただれ)」「潰瘍(えぐれ)」などと呼ばれることもあります。主に10代〜30代と年齡の若い人で発症しやすい疾患ですが、最近では中高年で発症する人も増えてきています。また、男女間での発症頻度の差はありません。
潰瘍性大腸炎は、炎症を起こしている部位によって3つの型に分けられます。
また、確定診断のためには採血や便培養はもちろんのこと、大腸内視鏡検査などが必要です。潰瘍性大腸炎を発症するはっきりとした原因は解明されていませんが、これまでの研究によると、遺伝的要因と環境要因の複合要素による何らかの免疫異常によって発症すると考えられています。
潰瘍性大腸炎を発症すると、腹痛や下痢・下血が自覚症状として現れます。下痢だけでなく血便(血液の混ざった便)や粘液便(粘度の高い便)が出ることもあります。これらの症状は一過性でおさまるわけではなく、寛解期(一時的に症状がおさまる時期)と活動期(頻繁に症状が現れる時期)を繰り返します。
そのため、潰瘍性大腸炎は慢性の疾患とされています。完全に再発を防ぐ方法は、残念ながら見つかっていません。重症化すると、発熱や動悸・倦怠感など、全身の症状が現れてきます。また、口内炎や関節痛、皮膚の炎症なども現れる場合があります。
ただし、潰瘍性大腸炎はクローン病とは異なり、大腸の狭窄や大腸内に膿瘍を形成する疾患ではなく、腸閉塞や肛門周囲膿瘍などの合併症に発展することはあまりありません。
潰瘍性大腸炎を発症している人は、発症していない人に比べて大腸がんを発症するリスクは高いといえます。しかし、直腸炎型や左側大腸炎型の人では発症していない人とあまり変わらないと考えられ、発症リスクが高いのは全大腸炎型の大腸炎の人で、かつ発症してから長期間経過している人とされています。
大腸がんを発症しても、早期に発見すれば予後がよいことから、特に全大腸炎型・左側大腸炎型(※全大腸炎型に進行する可能性が比較的高い)を発症して10年以上経過した人には1〜2年に1回、内視鏡検査を受けて大腸がんを発症していないか検査することが勧められています。
海外のデータによると、潰瘍性大腸炎を発症してから大腸がんを発症した患者さんの罹患期間による累積発生率は、10年で約2〜3%、20年で約10%、30年で約20%と、決して無視はできない割合になっています。直腸炎型の潰瘍性大腸炎であっても、定期的に大腸内視鏡検査を受け、がんを早期発見して重症化しないうちに治療することが大切です。
潰瘍性大腸炎のうち、直腸炎型はもっとも範囲が狭いタイプです。潰瘍性大腸炎は範囲が広ければ広いほど重症化しやすいため、直腸炎型の潰瘍性大腸炎は、同じ疾患のうちでは最も重症化・がん化しにくいタイプであるといえます。
とはいえ、直腸型の大腸炎での大腸がんのリスクがゼロというわけではありません。定期的に内視鏡検査を受けるなどして、万が一の際に早期発見ができるようにしておくことが大切です。
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