記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2019/1/5
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
最近、介護予防関連の体操教室などに行くと「フレイル」という言葉を耳にすると思います。認知症リスクを減らすためにも、フレイルを予防することが肝心です。今回はフレイルの意味や予防方法についてまとめました。
「フレイル」という言葉は “frailty” という英語が語源で、「弱さ、脆さ」といった意味があります。
2014年に、日本老年医学会が「フレイルとは、加齢とともに身体や精神の機能が低下した状態。生活するための機能も低下しているが、適切な介入や支援があれば、生活機能の維持や向上が可能な状態のこと」と提唱しました。
一般的に、健康な状態からいきなり要介護状態になることは少なく、多くの人は、徐々に身体機能・精神機能が低下し、最後に要介護状態になります。この健康状態と要介護状態の中間の状態が「フレイル」です。
特に、「フレイル」で精神機能が低下した人は、感情がコントロールできなくなったり、どこにいるのか分からず興奮したり、「せん妄(軽い意識障害に、興奮や幻覚が重なった状態)」を起こしたりします。さらに、認知症と診断される人も増えているのが現状です。
国が定めた「日本人の食事摂取基準」とは、国民の健康の維持や増進、生活習慣病の予防などを目的とした基準です。栄養素の目安や摂取の上限などを定めています。
近年、栄養障害が原因で、軽度認知障害が起きる可能性を示す研究結果などが発表され、厚労省は2020年版の「食事摂取基準」に、新たな指標を盛り込むことを決定しました。認知症予防のために摂取が望まれる栄養素を明記し、それぞれの栄養素の値も設定します。
フレイル予防も、認知症予防の新指標として重視されることになりました。高齢化が深刻になる中、フレイル予防に繋がる食事の目標量の設定を検討することを提案しています。
フレイルの状態が続くと、軽度認知障害になりやすい傾向があることが明らかになっています。軽度認知障害の段階で認知機能の低下を発見し、本格的な認知症の発症を防ぐケアをすれば、認知症の進行を遅らせることができる場合もあることも分かっています。栄養に目を向けてフレイルを予防し、認知症患者を増やさないよう、国も積極的に動いているところです。
高齢者がフレイルになる原因として、「サルコペニア(加齢性筋肉減少症)」が挙げられます。サルコペニアとは、全身の筋肉量の減少や、筋力低下が起きることです。
歳を重ねるごとに筋肉量が減少し、歩く速度が遅くなり、握力が落ちます。さらに、身体機能障害が起きたり、生活するための機能が低下したりします。特に、体の代謝を制御する骨格筋が衰えると、がんや感染症のリスクを高めるとされています。
サルコペニアは、筋肉量・握力・歩行速度が基準となり、この3つがどれも基準以下の状態になるとサルコペニアと診断されます。
サルコペニアによって運動量が低下すると、脳細胞が萎縮するという研究も報告されています。認知症予防のためには、運動して骨格筋を刺激し、海馬細胞を活性化させることが重要です。
フレイルの予防には栄養摂取と運動が効果的です。
膝が痛い人は、できる範囲で運動してください。また、80歳を過ぎると食も細くなるため、食事制限に重きを置くより、楽しくしっかりと食べた方がよいようです。腎臓病や高血圧、糖尿病などで厳しい食事制限が必要な人も、医師に相談しながら最低限の栄養を摂取していきましょう。
また、筋力の衰えを感じた人は、「歳のせい」と諦めず、老年科や老年病などの専門医に相談することもフレイル予防につながります。
フレイルになるのは、サルコペニアが一因であることがわかっています。筋力を維持するためにも、運動を毎日の日課にすると良いでしょう。そして、栄養が認知症と大きな関係があることも明らかになりました。しっかりとタンパク質などを取ることが肝心です。適度な運動と栄養摂取でフレイルを予防し、認知症を予防していきましょう。
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