記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/12/28
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
急性胃炎や慢性胃炎などの胃炎に悩まされることがあります。よく胃炎になる人は市販の薬ですませる人も多いようですが、早急に治療すべきタイプの胃炎もあるので注意が必要です。今回は慢性胃炎の原因や、その治療法などをご紹介します。
慢性胃炎は、胃に炎症が長期間起きている状態のことです。急性胃炎と違い、入院するような激しい症状ではないのが特徴ですが、慢性胃炎の人は、何年も何十年も症状と付き合っている場合もあります。緩やかに症状が進行することもあり、放置するのは危険です。
慢性胃炎の原因として多いのは「ピロリ菌」の感染です。胃の粘膜にピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)が感染すると炎症が起きます。感染し炎症した場所は徐々に広がり、最終的には胃の粘膜全体に広がり、「ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎」となります。
ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎が長引くと、萎縮性胃炎(いしゅくせいいえん)を起こしかねません。慢性胃炎が続くと、胃の粘膜にある胃酸や胃液を分泌する組織が減ります。さらに続くと胃の粘膜が薄くなり、痩せてしまう「萎縮」が起きます。この状態を「萎縮性胃炎」と呼びます。
「萎縮性胃炎」の状態になると、胃液が十分に分泌されなくなるため、飲食物が消化されにくくなります。結果、胃もたれや食欲不振といった症状が現れる人が多いです。
また、炎症が進行し、胃潰瘍や十二指腸潰瘍などを発症する恐れもありますし、一部が胃がんに進展していく可能性もあるのが怖いところです。
ピロリ菌を除去することで、胃炎の症状が改善する場合があります。ピロリ菌は主に服薬で除菌します。「胃酸の分泌を抑える薬」1種類と、「抗生物質」2種類の合計3つの薬を服用します。1日2回、合計7日間、薬を服用する除菌療法です。
そして、除菌療法から4週間以上経過してから、ピロリ菌が除菌できたかどうかの検査を受けます。1回目の除菌の成功率は約75%といわれており、最近はさらに高い成功率が報告されています。
1回目の除菌でピロリ菌が除菌できなかったときは、もう一度7日間、3種類の薬を飲みます。ほとんどの人が2回で除菌に成功するとされています。
ペニシリン等の抗生物質でアレルギーが起きた人などは、必ず事前に相談してください。また、勝手に途中で服薬をやめると、ピロリ菌が薬に耐性を持ってしまう場合があります。結果的に、薬が効きにくくなる危険性があるので必ず最後まで飲みましょう。
ピロリ菌の除去を行うと、副作用が起きる場合があります。
「食べ物の味がいつもと違う感じがする」「金属のような味や苦味を感じる」という人がいます。
お腹が緩くなり、下痢をする人もいます。
肝臓の機能を示す検査値(AST(GOT)の変動、ALT(GPT))が変動することがあります。
かゆみや発疹が出ることもあります。
少数ですが、除菌に成功した人が逆流性食道炎を起こす場合があります。胃酸が食道へ逆流する症状が頻繁に起き、食道の粘膜に炎症が起きます。
稀に、肝臓に病気を持つ人などが、体調が悪いときに除菌を行うと、めまいや吐き気などの症状が起きることもあります。 それでも「飲むと具合が悪くなる」といって自分で中止するのは危険です。気になる症状が出た場合は、主治医や薬剤師に相談しましょう。
日本ではピロリ菌感染者は多いですが、自覚症状が無い人も多いです。ピロリ菌の除菌はヘリコバクター・ピロリ感染胃炎・胃潰瘍・十二指腸潰瘍などの診断が出た人なら、保険も適用されます。気になる人はピロリ菌検査を受け、除菌が必要かどうかを主治医とよく相談してください。除菌療法を行う場合は、注意事項を必ず守り、安全に除菌しましょう。
※抗菌薬のうち、細菌や真菌などの生物から作られるものを「抗生物質」といいます。 抗菌薬には純粋に化学的に作られるものも含まれていますが、一般的には抗菌薬と抗生物質はほぼ同義として使用されることが多いため、この記事では抗生物質と表記を統一しています。
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