記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2019/2/24
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
心臓の手術のひとつに「冠動脈バイパス手術」というものがありますが、これはどんな手術なのでしょうか。カテーテル治療との違いや術後の注意点などもお伝えしていきます。
冠動脈バイパス術は、心臓を覆っている冠動脈という血管の代わりとなる通り道(バイパス)をつくり、血流を回復させるための手術です。
心臓は全身に血液をくまなく送るポンプの役割をしています。血液は、酸素や栄養素、ホルモンなどを全身に届け、体を守るための白血球や血小板も運びます。また、不要になった老廃物や二酸化炭素を回収していきます。心臓は血液を絶えず循環させて、体を安定した状態に保っている大切な臓器です。
心臓には十分な酸素と栄養が届くよう冠動脈という太い血管が乗っています。冠動脈は右冠動脈と左冠動脈に分かれており、左冠動脈はさらに2つに分かれます。動脈硬化によって冠動脈の内側が細くなる狭窄(きょうさく)や血管のけいれんが起こって血液が流れづらくなると、心臓への血液が足りずに狭心症がおきたり、血液がつまって心筋梗塞などの重大な病気が起こることがあります。
そして、異常が起きた冠動脈の血流を改善するための手術が、冠動脈バイパス術です。ただし、心臓の病気になったからといって必ずしも冠動脈バイパス手術を行うわけではありません。冠動脈の狭窄が重度の場合や、薬物治療での改善やカテーテルを用いた治療が難しいと考えられる人に、冠動脈バイパス術が検討されます。
冠動脈の治療に用いられる手術には、冠動脈バイパス術のほかに、冠動脈カテーテル治療があります。
冠動脈カテーテル治療は、冠動脈にカテーテルを入れて、狭くなった冠動脈を広げるための手術です。カテーテル治療は、主に足の付け根の大腿動脈(だいたいどうみゃく)、ひじや手首の大きな血管に挿入して血管の中を進め、冠動脈にたどり着かせる必要があります。冠動脈が完全にふさがっているとカテーテルの挿入が難しいため、冠動脈バイパス術が選択されます。
冠動脈バイパス術を行うためには、バイパスをつくるための血管が必要です。材料は、胸や足など、患者自身の血管を使います。胸の場合には、肋骨の裏にある内胸動脈(ないきょうどうみゃく)という血管を主に使います。内胸動脈は左右に1本ずつある血管です。複数のバイパスをつくる際など、血管が足りない場合には足や手、胃の血管なども使うことがあります。
過去には、一度心臓の動きを停止させて、人工心肺装置に心臓の役割を任せてから、手術を行うことが必要でした。しかし、現在では、心臓は動いたまま行われるオフポンプと呼ばれる方法が中心となっています。人工心肺装置を用いないことで体の負担が軽減され、脳梗塞や腎臓の機能低下と行った合併症のリスクを軽減するとされています。
ただし、心臓が動いたまま手術をすることには、高い技術が求められます。患者の状態や手術の方向性によって、人工心配装置を用いた方が安全かつ確実と判断されることもあります。
全身状態の回復の程度にもよりますが、おおむね2〜3週間で退院し、医師の指示に応じて外来受診をすることになるでしょう。手術で切開した胸骨が完全には固まっていない状態で退院となり、心臓に負担がかかる動作は控えることになります。入浴やサウナなどは控えるようにしましょう。
また、日常生活への復帰といっても、活動量には個人差があるため一概にはいえません。仕事内容や仕事量、家事については、その都度相談をして、無理はしないようにしましょう。もし、むくみや熱が出る、脈が早いといった症状があるときは、早めに受診をすることが必要です。
また、冠動脈の異常の大きな要因として動脈硬化があります。たとえ手術によって冠動脈の血流が改善しても、術前の生活習慣に問題がある場合には、そのほかの疾患を引き起こすことがあります。必要であれば食事や運動についての指導を受けて、退院後の生活の改善を行っていくことになるでしょう。
心臓が安定して働くためには、心臓に十分な酸素や栄養を送ることが必要であり、その役割を果たしているのが冠動脈という血管です。
冠動脈の異常には、食生活や運動といった生活習慣が要因となっていることもあります。手術を受けたあとは、病気になる前の生活を見直していくことが必要でしょう。
この記事の続きはこちら