くも膜下出血で意識不明になることもある?その場合、手術できる?

2019/1/26

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

くも膜下出血という病気は、脳で発症する怖い疾患として知られていますが、その症状や後遺症について詳しく知っている人は多くないのではないでしょうか。

くも膜下出血の症状や、発症した場合の後遺症などのリスクについて正しく知っておきましょう。また、くも膜下出血を発症して手術を行う場合と行わない場合、その手順についても解説します。

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くも膜下出血で意識障害を起こすこともある?

くも膜下出血とは、くも膜下腔と呼ばれる脳の表面の膜の隙間に起こる出血のことをいいます。脳には外側から順に「硬膜」「くも膜」「軟膜」という膜で覆われていて、くも膜と軟膜の間の隙間を「くも膜下腔」と呼んでいます。出血の原因は、脳の動脈の一部が膨らんだ動脈瘤が破裂することがほとんどです。

男性よりも女性に多く、40歳以降で多くみられ、年齡とともにその割合は増加します。また、家族や親族に動脈瘤やくも膜下出血を発症した人がいる場合や、高血圧・喫煙・過度な飲酒がある場合はくも膜下出血を発症するリスクが高いとされています。

また、くも膜下出血を発症すると約1割の人が即死するといわれています。残りの約9割は出血がいったん止まり、生存した状態で病院に搬送されますが、出血の量によっては死亡することもあり、多くは出血によって脳が障害されるため、後遺症が残ります。

出血の量が多いと脳の障害が大きくなり、意識障害が強くなりますが、出血の量が少なければ意識状態も良く、後遺症なしに治ることもあります。くも膜下出血を発症した場合、後遺症なく社会復帰できる割合は全体の約25%であることがわかっています。

くも膜下出血の治療が難しいときもある?

くも膜下出血の治療を行う場合、その第一目的は再破裂の防止です。再破裂の防止のためには、ネッククリッピングやコイル塞栓術という手術を行います。

ネッククリッピング
全身麻酔下で頭蓋を開き、該当の動脈瘤の出ている部分の付け根(ネック)を金属製のクリップで挟み、動脈瘤に血液が行かなくなるようにする。
原則として発症から72時間以内に行う(ごく軽症の場合は72時間以上経ってから行う場合もある)。
コイル塞栓術(血管内手術)
局所麻酔下で股の動脈からカテーテルを入れ、脳動脈瘤の中にまで通して該当の動脈瘤をコイルでパックする。
ネッククリッピングよりも患者さんの負担は少ないが、完全に動脈瘤内に血液が行かなくなるかどうかがわからない。

ネッククリッピングは、全身麻酔で一度頭蓋を開くという比較的侵襲性の高い治療法ですが、コイル血栓術よりも確実に動脈瘤に血液が流れ込むのを止めることができます。その代わり、コイル血栓術は侵襲性が低いため、直接手術が難しい場所や重症者、高齢者の場合にも行うことができます。

しかし、これらの手術の適応となるのは比較的意識状態が良く、麻痺などがない場合です。くも膜下出血を発症した場合、入院時点で昏睡状態であるのは約30%とされますが、これらの重症例の場合は脳の損傷が激しく、手術をしても元に戻らないことから、手術の適応とされない場合が多いです。

おわりに:くも膜下出血で意識障害が強い場合、手術できないこともある

くも膜下出血は、出血によって多かれ少なかれ脳にダメージを与えてしまう状態です。そのため、意識障害の程度が軽ければ後遺症も少なく、社会復帰ができる場合もありますが、意識障害の程度が重い場合は脳への損傷が激しいため、手術を行っても回復の見込みがないと判断されることがあります。このような場合には手術の適応とせず、手術を行わない場合が多いです。

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