ピロリ菌除菌で使う薬ってどんなもの?治療中の副作用は?

2019/1/22

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

ピロリ菌の除菌治療では、手術ではなく薬が適用となります。では、具体的にどんな薬が処方されることになるのか、副作用などの注意点と併せてお伝えしていきます。

ピロリ菌は胃酸に強いって本当?

ピロリ菌とは、胃の粘膜に生息して胃潰瘍や十二指腸潰瘍などを引き起こす細菌です。胃には強い酸である塩酸を含む胃酸があるため、本来は細菌が生息することは難しい環境です。

ところがピロリ菌には、胃の尿素を分解してアンモニアを生成するウレアーゼという酵素を作る特徴があります。ウレアーゼが生成したアンモニアは胃酸を中和するため、ピロリ菌の周囲は胃酸の働きが弱くなり、ピロリ菌が生息できるようになります。その結果、一度ピロリ菌に感染してしまうと、除菌されるまでは胃の中でいつまでも住み続けることが可能となってしまうのです。

ピロリ菌の除菌で使うのはどんな薬?

ピロリ菌の除菌では、複数の薬を使用します。使用されるのは、胃酸を抑える薬が1種類とピロリ菌を除去する2種類の抗生物質です。抗生物質で使用されるのは、ペニシリン系のアモキシシリンやマクロライド系のクラリスロマイシンが一般的です。ただし、思ったような効果が得られない場合には、ニトロイミダゾール系の抗生物質メトロニダゾールが処方されることが多いでしょう。
抗生物質は、飲み忘れるとピロリ菌の除菌がうまくできなかったり、耐性菌が出現しやすくなります。そのため、1シートに1日分の薬剤をまとめるなどの工夫がされています。

実際には、ピロリ菌を除菌する薬は1日2回、7日間連続して服用します。正しく飲めば患者さんの約75%はピロリ菌を除去することができます。もし、1回の治療で除菌ができない場合には、薬のうち1種類を変えて再び7日間薬を服用します。多くの場合、2回目の除去までに除菌することができます。

服用中に副作用が起こる可能性は?

ピロリ菌の除菌では、副作用が現れることがあります。主な副作用には以下の5つがあげられます。

  • 発熱
  • 下痢
  • 軟便
  • 味覚異常
  • アレルギー症状

副作用と思われる症状がみられたときには、自己判断で薬をやめたりせずに主治医に相談しましょう。ただし、発熱や痛みを伴う下痢や血液や粘液が混じった下痢、発疹がみられる場合には、服用を中止し直ちに主治医を受診してください。
また、副作用には今回紹介した以外の症状が出ることもあります。いつもと違う症状や、何かおかしいと思ったときには早めに病院を受診しましょう。

おわりに:ピロリ菌は抗生物質を1週間服用すれば、ほぼ除菌できる

ピロリ菌は、抗生物質を1週間服用することで除菌することができます。おおむね1回の治療で除菌可能ですが、できない場合でも2回目で除菌できる場合がほとんどです。しかし、飲み忘れてしまうと除菌がうまくできない場合や、耐性菌が増えることもあるので、飲み忘れに注意し適切に飲むようにしてください。また、いつもと違う症状が見られたときには、薬の副作用を起こしている可能性も考えれます。早めに病院を受診し、主治医に相談するようにしましょう。

※抗菌薬のうち、細菌や真菌などの生物から作られるものを「抗生物質」といいます。 抗菌薬には純粋に化学的に作られるものも含まれていますが、一般的には抗菌薬と抗生物質はほぼ同義として使用されることが多いため、この記事では抗生物質と表記を統一しています。

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