記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2019/2/16 記事改定日: 2020/9/24
記事改定回数:1回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
心臓に関する異常や疾患が疑われる場合、心筋生検という検査を行うことがあります。心筋生検とはどんな疾患を診断する検査なのでしょう。心筋生検を行う必要がある状態や移植後に行うかどうか紹介していきます。あわせて心筋症・心筋炎についても説明します。
心筋生検とは、心臓の筋肉の組織の一部を採取して、筋肉細胞や細い血管に異常がないかを顕微鏡で調べる検査です。心筋組織を採取するためには、静脈から特殊な鉗子カテーテルを左心室ないし右心室に挿入し、疾患または拒絶反応などの疑われる部位をつまんで行います。通常、局所麻酔下で行いますので、採取中に動悸を感じることがありますが、痛みを感じることはありません。
採取した心筋組織は、病理検査を行い疾患または拒絶反応などの有無を診断します。
心筋生検によって採取される組織はごく一部であるため、採取された心筋に異常がなかった場合、他の部位に絶対に異常がないとは言い切れません。また、組織採取時に起こりうる事故として、心室の壁に孔があいてしまうことが考えられますので、慎重にカテーテル操作を行う技術が必要になります。
心筋生検は少なからず身体に負担がかかる検査です。検査後は心筋にダメージが加わっている状態になりますので、次のようなことに注意が必要です。
また、心筋生検による心臓穿孔などの合併症は検査後時間が経過してから症状が現れることがあります。検査後に息切れ、動悸、めまい、息苦しさなどの症状が現れた場合はできるだけ早めに病院に相談するようにしましょう。
心筋生検で診断できる疾患には、以下のようなものがあります。
そのほか、心アミロイドーシス、心サルコイドーシス、心ヘモクロマトーシス、心Fabry病(心ファブリー病)、カルチノイド、放射線障害、グリコーゲン病などを診断するときにも使われます。
心筋症とは、心臓の筋肉そのものに異常が起こり、心機能が低下する疾患です。心筋症の代表的なものには「拡張型心筋症」があります。
左心室全体が伸び切った風船のような状態になり、収縮がうまく行えなくなって血液を全身に送り出すポンプの役割が果たせなくなってしまう疾患です。多くは心不全(心機能の低下により、全身の臓器や組織が栄養や酸素を十分に受け取れない状態)の状態が続いたまま症状が進行していく、指定難病の一つです。
他にも、次のような疾患があります。
上記3つのほかの疾患もあります。心筋症が軽症の場合は動悸・息切れ、呼吸困難、咳が出やすい、足がむくむなどの症状が現れますが、重症になると安静にしていても息苦しく、仰向けに寝ることができなくなったり、呼吸が荒くなったりチアノーゼの状態になったりして、入院が必要になります。
心筋炎とは、心臓の筋肉に炎症が発生した状態です。心臓は、心筋繊維がターバンのように巻かれて作られた臓器ですから、心筋組織に何らかの炎症が起こった場合、心臓のポンプとしての働きが低下(心不全)したり、深刻なリズム異常が発生(心ブロック・致死的不整脈)したりして、生命を脅かす危険性があります。
原因の多くは感染性で、ウイルスや細菌によるものです。心筋組織は、他の臓器と違い再生することができない細胞ですから、何らかの異常や炎症によって心筋細胞が破壊されてしまうと、ダメージを回復することができずにどんどん広がってしまいます。心筋炎を発症すると、寒気や発熱・頭痛・のどや筋肉の痛み、全身倦怠感などの風邪のような症状が現れます。
風邪のような症状が起こった数日後に、胸痛や呼吸困難・動悸・失神などの胸部症状が起こるところが、風邪との大きな違いです。熱や咳・喉の痛みといった症状だけであれば風邪として治療してしまうこともありますが、動悸・息切れ・めまいなどの胸部症状がある場合は心筋炎の可能性を考え、医療機関を受診しましょう。
他の人の臓器は、自分の体にとっては異物と認識されます。ですから、移植を行うと程度の個人差はあれど、「拒絶反応」が起こります。拒絶反応とは、自分の体ではないものを異物として攻撃し、体内から除去しようとする免疫反応からくるものです。本来はウイルスや細菌など有害な異物を除去する機能です。
移植後に免疫反応によって、移植した組織も異物として認識してしまうところが難点です。移植した心臓に対して拒絶反応が強く起こってしまうと、移植した心臓の機能が低下してしまい、重度の心不全を引き起こすおそれもあります。
これを防ぐためには、移植手術後から免疫抑制剤の服用を続け、免疫機能を低く保ち、臓器に対する攻撃を弱めておく必要があります。
さらに、拒絶反応が本当に抑えられているかどうかを移植後に確認していく必要があります。この拒絶反応の有無を確認するために、心筋生検が行われます。
心筋生検は移植後3週間は1週間ごとに、その後は2週間、6週間、8週間と徐々に間をあけながら行われます。経過が良好であれば、その後は3ヶ月おきに1年後まで行います。1年が経過した後は、拒絶反応が疑われるかどうかに関わらず6ヶ月おきの検査が必要です。
これらの検査の際に、または何らかの異常が疑われて検査を行った際に、拒絶反応が起こっていると判断された場合は治療が必要です。免疫抑制剤の量を増やしたり他の免疫抑制剤を加えます。血漿の交換が必要となる場合もあります。
拒絶反応がおさまらないと、心機能が低下して心不全の症状を引き起こすことがあります。そのために生命維持が困難と判断された場合は、再び心臓の移植が必要となります。
心筋生検は、心筋症や心筋炎といった心疾患の検査のほか、心臓移植後の拒絶反応が起こっているかどうかを確かめるための検査です。特に拒絶反応の検査においては、心筋生検が最も信頼度の高い検査とされています。
移植後は1週間ごと、数週間ごと、数か月ごと、と間を開けながら心筋生検を行いますので、医師の指示に従って検査を受けましょう。
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