心筋生検ってどんな検査?どんなときに行うの?

2019/2/16

山本 康博 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 呼吸器内科医

山本 康博 先生

心臓に関する異常や疾患が疑われる場合、心筋生検という検査を行うことがあります。心筋生検とはどのように行い、どのようなことを診断する検査なのでしょうか?そして、心筋生検を行う必要があるのは、どのような場合なのでしょうか?

心筋生検とは

心筋生検とは、心臓の筋肉の組織の一部を採取して、筋肉細胞や細い血管に異常がないかを顕微鏡で調べる検査です。心筋組織を採取するためには、静脈から特殊な鉗子カテーテルを左心室ないし右心室に挿入し、疾患または拒絶反応などの疑われる部位をつまんで行います。通常、局所麻酔下で行いますので、採取中に動悸を感じることがありますが、痛みを感じることはありません

採取した心筋組織は、病理検査を行い疾患または拒絶反応などの有無を診断します。心筋生検によって採取される組織はごく一部であるため、採取された心筋に異常がなかった場合、他の部位に絶対に異常がないとは言い切れないことに注意する必要があります。また、組織採取時に起こりうる事故として、心室の壁に孔があいてしまうことが考えられますので、慎重にカテーテル操作を行う技術が必要になります。

心筋生検はどんなときに行うの?

心筋生検で診断できる疾患には、以下のようなものがあります。

  • 心臓移植後の拒絶反応
  • 心筋炎・心膜炎
  • 心内膜線維症
  • 心原性・非心原性心腫瘍
  • 抗がん剤による心筋毒性
  • サイトメガロウイルス感染症
  • トキソプラズマ症

そのほか、心アミロイドーシス、心サルコイドーシス、心ヘモクロマトーシス、心Fabry病、カルチノイド、放射線障害、グリコーゲン病なども診断することが可能です。

心筋症・心筋炎ってどんな病気なの?

心筋症とは、心臓の筋肉そのものに異常が起こり、心機能が低下する疾患です。心筋症の代表的なものには「拡張型心筋症」があり、左心室全体が伸び切った風船のような状態になって収縮がうまく行えなくなって血液を全身に送り出すポンプの役割が果たせなくなってしまう疾患です。多くは心不全(心機能の低下により、全身の臓器や組織が栄養や酸素を十分に受け取れない状態)の状態が続いたまま症状が進行していく、指定難病の一つです。

他にも、「肥大型心筋症(左心室の心筋が異常に肥大し、心機能が低下する。突然死などのリスクが高い)」「拘束型心筋症(心室の拡張や心筋の肥大を伴わないが、心不全の症状を発症する)などがあります。軽症の場合は動悸・息切れ、呼吸困難、咳が出やすい、足がむくむなどの症状が現れますが、重症になると安静にしていても息苦しく、仰向けに寝ることができなくなったり、呼吸が荒くなったりチアノーゼの状態になったりして、入院が必要になります。

心筋炎とは、心臓の筋肉に炎症が発生した状態です。心臓は、心筋繊維がターバンのように巻かれて作られた臓器ですから、心筋組織に何らかの炎症が起こった場合、心臓のポンプとしての働きが低下(心不全)したり、深刻なリズム異常が発生(心ブロック・致死的不整脈)したりして、生命を脅かす危険性があります。

心筋炎の原因の多くは感染性で、ウイルスや細菌によるものです。心筋組織は、他の臓器と違い再生することができない細胞ですから、何らかの異常や炎症によって心筋細胞が破壊されてしまうと、ダメージを回復することができずにどんどん広がってしまいます。心筋炎を発症すると、寒気や発熱・頭痛・のどや筋肉の痛み、全身倦怠感などの風邪のような症状が現れます

風邪のような症状が起こった数日後に、胸痛や呼吸困難・動悸・失神などの胸部症状が起こるところが、風邪との大きな違いです。熱や咳・喉の痛みといった症状だけであれば風邪として治療してしまうこともありますが、動悸・息切れ・めまいなどの胸部症状がある場合は心筋炎の可能性を考え、医療機関を受診しましょう。

心臓移植後の拒絶反応を調べるために、心筋生検をすることもあるの?

他の人の臓器は、自分の体にとっては異物と認識されます。ですから、移植を行うと程度の個人差はあれど、拒絶反応が起こります。拒絶反応とは、自分の体ではないものを攻撃し、体内から除去しようとする免疫反応からくるもので、本来はウイルスや細菌など有害な異物を除去する機構です。

免疫反応によって、移植した組織も異物として認識してしまうところが難点です。移植した心臓に対して拒絶反応が強く起こってしまうと、移植心の機能が低下してしまい、重度の心不全を引き起こすおそれもあります。これを防ぐためには、移植手術後から免疫抑制剤の服用を続け、免疫機能を低く保ち、臓器に対する攻撃を弱めておく必要があります。

さらに、拒絶反応が本当に抑えられているかどうかを移植後に確認していく必要があります。この拒絶反応の有無を確認するために、心筋生検が行われます。

心筋生検は移植後3週間は1週間ごとに、その後は2週間、6週間、8週間と徐々に間をあけながら行われます。経過が良好であれば、その後は3ヶ月おきに1年後まで行います。1年が経過した後は、拒絶反応が疑われるかどうかに関わらず6ヶ月おきの検査が必要です。

これらの検査の際に、または何らかの異常が疑われて検査を行った際に、拒絶反応が起こっていると判断された場合は、免疫抑制剤の量を増やしたり他の免疫抑制剤を加える必要があります。血漿の交換が必要となる場合もあります。また、これらの治療を行っても拒絶反応がおさまらず、心機能が低下して心不全の症状を引き起こしてしまい、生命維持が困難と判断された場合は、再び心臓の移植が必要となります。

おわりに:心筋生検は心筋症や心筋炎、移植後の拒絶反応などの検査に使われる

心筋生検は、心筋症や心筋炎といった心疾患の検査のほか、心臓移植後の拒絶反応が起こっているかどうかを確かめるための検査にも使われます。とくに、拒絶反応の検査においては、心筋生検が最も信頼度の高い検査とされています。そのため、移植後は1週間ごと、数週間ごと、数か月ごと、と間を開けながら心筋生検を行います。

関連記事

この記事に含まれるキーワード

心筋症(7) 心筋炎(9) 心筋生検(2)