心臓弁膜症の手術後のリハビリの内容は?運動は控えた方がいいの?

2019/2/21 記事改定日: 2020/9/2
記事改定回数:1回

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

心臓弁膜症の手術では、心臓にカテーテルを挿入したり外科的に切開・切除します。この記事では、心臓弁膜症手術後の運動で注意すべきこと、運動療法(リハビリテーション)についてなど術後の生活にういて解説していきます。

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心臓弁膜症の手術後に運動しても大丈夫?運動しないデメリットは?

心臓の手術をした後は、心臓に負担をかけないために運動をしない方が良いのではないかと思う患者さんはたくさんいると思います。確かに、自己流・自己判断で過度な運動や仕事を行うことは、心臓手術後としては大変危険なことです。

しかし、あまりに運動を怖がるあまり、安静にしたままで過ごしていると、心臓も含め、体の機能が十分に回復しない可能性があります

特に、手術後半年~1年間に適切な運動を行うことはとても重要であり、この期間に適切な運動を行うと、何も運動を行わなかった人に比べて心臓のポンプ機能が約1.5倍程度よく機能するようになるとの報告があります。

「運動処方箋」とは?手術後の運動療法の参考になる?

「適切な運動」のレベルやメニューを決めるためには、「心肺運動負荷試験」などの検査を受け、「運動処方箋」を出してもらうことが必要です。この「運動処方箋」に従い、医師や看護師の目の届くところで心電図や血圧の状態を見ながら運動療法を実施します。これを監視型運動療法といい、心臓発作や事故などの生命に危険な状態を防ぐために必要な措置なものです。

運動処方箋によって適切な運動を行うことで、合併症や筋肉の量や質、自律神経の異常などを改善することができます。具体的には、以下のような効果を期待できます。

  • 心臓の働きを改善する
  • 狭心症の発作や心不全の症状が軽くなる
  • 心臓病の再発や突然死が減少する
  • 手術からの回復が早まる
  • 運動能力が高まり、日常生活が楽になる
  • ストレスや緊張を緩和し、自律神経のバランスを改善する
  • 寿命を伸ばせる可能性がある

心臓弁膜症の手術後に取り組むリハビリや運動の内容は?

手術後の運動(リハビリテーション)は、入院中から退院後まで続きます。

入院中のリハビリテーション

入院中も、手術後に過度に安静状態を保ったままにしておくと十分に機能が回復せず、さまざまな合併症を発症する可能性があります。そこで、術後ベッドから起き上がれるようになったら、徐々に歩行距離を伸ばしたり、運動強度を増やしたりしていきます。このとき、症状や呼吸回数、心電図の変化、血圧などを詳細に観察しながら行うことが大切です。

また、この期間に心臓リハビリテーションの講義を受けることもあります。この時期の運動はまだ心臓の機能が十分に回復しきっていないことを考慮し、本格的な運動療法を行う前に「心肺運動負荷試験」を受け、適切な運動の強度を決める「運動処方箋」を出してもらいます

退院後のリハビリテーション

退院後は、心臓リハビリテーションのために週2~3回の通院が必要です。週2~3回の通院が厳しい場合は、通院回数は週1回としますが、他の日には自宅で医師の指示を受けたプログラムにしたがって運動療法を行います。運動のプログラムについては、退院時に心臓リハビリテーションの担当医が説明するのが一般的です。

心臓手術後の運動の5つのポイントは?

心臓手術後に運動に取り組むにあたって、注意することが5つあります。

  1. 安全に行うこと
  2. 正しい方法で、確実に行うこと
  3. 食事療法や禁煙も合わせて行うこと
  4. 継続すること
  5. 無理をしない

運動するときには決して無理をしないようにし、疲れや異常を感じたらすぐに休憩しましょう。過剰な運動は、かえって健康を損なうおそれがあります。また、これに関連し、運動の強さや時間は医師の指示を必ず守りましょう。やりすぎてはいけませんし、また、体調に異常を感じた以外の理由で強度や時間を少なくしすぎても十分な効果は見込めません。

そして、運動だけでなく食事療法や禁煙も行うことが大切です。運動療法だけでは効果が不十分で、食事療法や禁煙を合わせて行わないと、せっかく行った運動療法の効果も半減、または相殺されてしまう可能性も考えられるからです。

最後に、運動療法・食事療法・禁煙は一朝一夕に効果が得られるものではありません。長期間継続して実行することで、徐々に効果が得られ、心身の機能が改善していくものです。無理をすべきではありませんが、少しずつ長く継続して行いましょう。

心臓手術後の食事療法

心臓の手術後はできるだけ心臓に負担がかからない食事を心がけることが大切です。
具体的には、血圧を抑えるために塩分や脂質を控えめにする、適正な摂取カロリーを守ることが挙げられます。

また、便秘による「いきみ」は心臓に負担をかけることになるため、便通を整えるために食物繊維や乳製品を積極的に摂るようにしましょう。
手術後は貧血になりやすいため、レバーやホウレンソウなど鉄分が多く含まれた食材、血圧を下げる働きのあるカリウムが多く含まれた果物や野菜などを多く摂るようにしてください。

おわりに:心臓弁膜症手術後の運動療法は医師の指示に従って長期間継続しよう!

心臓弁膜症の手術後も、リハビリテーションは必要です。特に、完全に安静にしているよりも、心機能の回復や改善に効果があるという報告もあります。ただし、、医師や看護師の指導のもとで適切な運動を継続して行いましょう。食事療法や禁煙も医師の指導のもと、運動療法と合わせて行うことが重要です。

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