心臓弁膜症の手術後、運動は控えたほうがいい?

2019/2/21

山本 康博 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 呼吸器内科医

山本 康博 先生

心臓弁膜症の手術では、心臓にカテーテルを挿入したり外科的に切開・切除するため、安静時よりも多くの血流の流れる運動をすると、手術直後の心臓に負担がかかってしまうのではないかと感じる人も少なくありません。
心臓弁膜症手術後の運動はしてもいいのかどうか?する場合に注意することは?など、運動療法(リハビリテーション)について解説します。

心臓弁膜症の手術後に運動しても大丈夫?

心臓の手術をした後は、心臓に負担をかけないために運動をしない方が良いのではないかと思う患者さんはたくさんいます。確かに、自己流・自己判断で過度な運動や仕事を行うことは、心臓手術後としては大変危険なことです。しかし、あまりに運動を怖がるあまり、安静にしたままで過ごしていると、心臓も含め、体の機能が十分に回復しない可能性があります

特に、手術後半年~1年間に適切な運動を行うことはとても重要であり、この期間に適切な運動を行うと、何も運動を行わなかった人に比べて心臓のポンプ機能が約1.5倍程度よく機能するようになるとの報告があります。

「適切な運動」のレベルやメニューを決めるためには、「心肺運動負荷試験」などの検査を受け、「運動処方箋」を出してもらうことが必要です。この「運動処方箋」に従い、医師や看護師の目の届くところで心電図や血圧の状態を見ながら運動療法を実施します。これを監視型運動療法といい、心臓発作や事故などの生命に危険な状態を防ぐために必要な措置なものです。

運動処方箋によって適切な運動を行うことで、合併症や筋肉の量や質、自律神経の異常などを改善することができます。具体的には、以下のような効果を期待できます。

  • 心臓の働きを改善する
  • 狭心症の発作や心不全の症状が軽くなる
  • 心臓病の再発や突然死が減少する
  • 手術からの回復が早まる
  • 運動能力が高まり、日常生活が楽になる
  • ストレスや緊張を緩和し、自律神経のバランスを改善する
  • 寿命を伸ばせる可能性がある

手術後に取り組む運動ってどんなことをするの?

手術後の運動(リハビリテーション)は、入院中から退院後まで続きます。

入院中も、手術後に過度に安静状態を保ったままにしておくと十分に機能が回復せず、さまざまな合併症を発症する可能性があります。そこで、術後ベッドから起き上がれるようになったら、徐々に歩行距離を伸ばしたり、運動強度を増やしたりしていきます。このとき、症状や呼吸回数、心電図の変化、血圧などを詳細に観察しながら行うことが大切です。

また、この期間に心臓リハビリテーションの講義を受けることもあります。この時期の運動はまだ心臓の機能が十分に回復しきっていないことを考慮し、本格的な運動療法を行う前に「心肺運動負荷試験」を受け、適切な運動の強度を決める「運動処方箋」を出してもらいます

退院後は、心臓リハビリテーションのために週2~3回の通院が必要です。週2~3回の通院が厳しい場合は、通院回数は週1回としますが、他の日には自宅で医師の指示を受けたプログラムにしたがって運動療法を行います。運動のプログラムについては、退院時に心臓リハビリテーションの担当医が説明するのが一般的です。

運動に取り組むときのポイントは?

心臓手術後に運動に取り組むにあたって、注意することが4つあります。

  1. 安全に行うこと
  2. 正しい方法で、確実に行うこと
  3. 食事療法や禁煙も合わせて行うこと
  4. 継続すること

まず、運動するときには決して無理をしないようにし、疲れや異常を感じたらすぐに休憩しましょう。過剰な運動は、かえって健康を損なうおそれがあります。また、これに関連し、運動の強さや時間は医師の指示を必ず守りましょう。やりすぎてはいけませんし、また、体調に異常を感じた以外の理由で強度や時間を少なくしすぎても十分な効果は見込めません。

そして、運動だけでなく食事療法や禁煙も行うことが大切です。運動療法だけでは効果が不十分で、食事療法や禁煙を合わせて行わないと、せっかく行った運動療法の効果も半減、または相殺されてしまう可能性も考えられるからです。

最後に、運動療法・食事療法・禁煙は一朝一夕に効果が得られるものではありません。長期間継続して実行することで、徐々に効果が得られ、心身の機能が改善していくものです。無理をすべきではありませんが、少しずつ長く継続して行いましょう。

おわりに:心臓弁膜症手術後の運動療法は医師の指示に従って行おう

心臓弁膜症の手術後も、リハビリテーションは必要です。特に、完全に安静にしているよりも、医師や看護師の指導のもとで適切な運動を行う方が心機能の回復や改善に効果があるという報告もあります。

また、運動療法は長期間継続して行うことが大切なため、退院後も継続して行いましょう。食事療法や禁煙も医師の指導のもと、運動療法と合わせて行うことが重要です。

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