記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2019/2/2
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
ピロリ菌は、胃や腸などの消化器官に関する疾患に関係し、炎症などを引き起こす細菌として知られています。ピロリ菌の治療には一般的に薬物療法が行われますが、治療はどのような流れで行うのでしょうか?
また、治療中に食事で困ることはあるのでしょうか?そして、食事で気をつけることや、食べた方が良いものはあるのでしょうか?
ピロリ菌の除菌治療を行う際は、3種類の薬剤を内服し、抗菌作用によって治療します。薬剤の内訳としては、抗生物質が2種類、胃酸の分泌を抑える薬剤が1種類です。1日2回、7日間服用します。確実にピロリ菌を除菌するためには、医師の指示通りに服用すること、また、自己判断で服用を中止しないことを守りましょう。
自己判断で服用を途中で中止してしまうと、除菌に失敗し、薬剤耐性を持ったピロリ菌が出現してしまうことがあります。薬剤耐性菌が出現してしまうと、その後の治療が非常に困難となってしまいますので、気をつけましょう。これらのことに気をつけて服用すれば、9割近い人でピロリ菌が消えます。ただし、1割程度の人では菌が完全には消えないことがあります。
これを1次除菌と言い、消えなかった方には別の種類の抗生物質を使用して治療します。これを2次除菌と言い、2次除菌までは保険診療が認められています。2次除菌を行えば約95%まで治療できると言われていますが、それでも除菌が完了しないケースも約5%程度存在します。3次除菌は自由診療となるため、全額自己負担となります。
抗生物質としては、アモキシシリン(ペニシリン系)、クラリスロマイシン(マクロライド系)、メトロニダゾール(ニトロイミダゾール系)などが使用され、胃酸分泌を抑える薬剤(PPI:プロトンポンプ阻害剤)としてはランソプラゾール、ラベプラゾール、ボノプラザンなどがあります。
一般的に、1次除菌で使用される薬剤は「アモキシシリン+クラリスロマイシン+PPI(ランサップ®、ラベキュア®、ボノサップ®など)」、2次除菌で使用される薬剤は「アモキシシリン+メトロニダゾール+PPI(ランピオン®、ラベファイン®、ボノピオン®など)」が多いです。ただし、薬剤の選択は個人の薬剤に対する過敏症なども加味して考慮されるため、必ずしも1次除菌用、2次除菌用と薬剤が決まっているわけではありません。
ピロリ菌治療には薬剤を使うため、約2~3割の方に副作用があらわれると言われています。多い副作用として、以下のような症状が起こることがあります。
味覚異常が起こると、いつもどおりの食べ物を食べても味がおかしいと感じたり、苦味や金属のような味を感じたりすることがあります。また、口内炎や舌の炎症が起こっていると、食べ物を食べるときに気になって食べにくくなることもあります。これらの症状によって、治療中に食事がしづらくなることがあります。
しかし、味覚異常や口内炎が出たからといって、自己判断で薬の内服をやめないようにしましょう。前述のとおり、途中で投薬を中止してしまうと薬剤耐性菌が発生してしまう可能性があり、薬剤耐性菌が発生してしまうとその後の治療が非常に困難となります。どうしても我慢できないときは、主治医に相談しましょう。
ピロリ菌の除菌治療中は、胃酸の分泌を抑えていることから、消化機能が低下しています。薬剤投与中の一時的なものですが、除菌治療中は胃に負担がかからない食事を心がけましょう。刺激物である香辛料の多い食事を控え、消化に良く胃に優しい食事を摂るようにするのが良いでしょう。たとえば、以下のような食事や嗜好品は控えましょう。
アルコールやタバコはピロリ菌の除菌成功率を低下させることが知られています。また、コーヒーは胃酸分泌を促すため、PPIの効果を相殺してしまうことになりますので、これも控えるようにしましょう。
ピロリ菌を直接除菌する食べ物はありませんが、ピロリ菌の減少や、働きを抑制する効果のある食べ物があることはわかっています。ピロリ菌の除菌治療中は、以下のような食べ物・飲み物を除菌治療のサポートとして摂取すると良いでしょう。
ブロッコリースプラウトとは、ブロッコリーの新芽のこと、フコダインとは、わかめやもずくなどの海藻類に含まれるぬめりのことです。また、乳酸菌にはさまざまな種類がありますが、ピロリ菌の除菌療法の数週間前から摂取することでピロリ菌が減少し、除菌の成功率を上げることがわかっているのは、胃酸にも耐えて胃に定着できるとされているLG21乳酸菌です。
また、ココアや緑茶などの飲み物にも、上記の食べ物と同様にピロリ菌の減少やピロリ菌の働きを抑制する効果があることが示唆されています。除菌中は、これらの飲み物を意識的に摂取するようにすると良いでしょう。
ピロリ菌の治療で抗生物質や胃酸分泌抑制剤を服用していると、副作用として味覚の変化や口内炎・舌炎などを起こし、食べ物の味に違和感を感じたり口内に炎症が起こった影響で食べづらいことがあります。
治療中の食事は、胃に負担をかけにくいものを選びましょう。また、ピロリ菌の働きを抑えたり数を減少させたりする効果のある食べ物や飲み物を積極的に摂取すると、除菌治療をサポートすることができます。
※抗菌薬のうち、細菌や真菌などの生物から作られるものを「抗生物質」といいます。 抗菌薬には純粋に化学的に作られるものも含まれていますが、一般的には抗菌薬と抗生物質はほぼ同義として使用されることが多いため、この記事では抗生物質と表記を統一しています。
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