食欲不振のときに起こる体重減少、病気が原因のこともあるって本当?

2019/1/30

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

食欲がわかないと、どうしても食べる量が少なくなります。食べる量が少なくなれば、当然エネルギーとして摂取する量が減少しますので、体重が減るのはある意味で当然のこととも考えられます。

しかし、そもそも食欲がなくなるということは、何らかの不調のサインである可能性もあります。食欲不振で体重が減る原因には、どんなものがあるのでしょうか?

冷凍宅配食の「ナッシュ」
冷凍宅配食の「ナッシュ」

食欲不振のときに体重が減る病気として考えられるものは?

食欲がなくて体重が減ってしまうのは、ある意味当然のことと考えられます。消化器系や神経などに何らかの不調や疾患があって食欲がなくなると、摂取する栄養素やエネルギーが減ってしまうため、体重も減ってしまうのです。食欲不振の原因として考えられる疾患として、以下のようなものがあります。

消化性潰瘍
消化性潰瘍とは、何らかの原因によって胃・十二指腸などに潰瘍ができてしまった状態です。ストレスや食べすぎ・飲みすぎのほか、ピロリ菌による炎症や非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)の使用も原因となることがあります
胃潰瘍は食事中から食後にかけて、十二指腸潰瘍は早朝や空腹時にみぞおちが痛くなることが特徴です。食欲不振のほか、お腹が張る、胸やけがする、胃のむかつき、げっぷなどの症状が出ることがあります。
うつ病
うつ病は精神の疾患ですが、精神だけでなく身体的な症状が出ることもあります。食欲不振をはじめ、胃の不快感、便秘、疲れやすい、体がだるい、眠れない、集中力が続かないなどが体の症状として現れてきます。一時的なものであればそれほど心配する必要はありませんが、これらの症状が長く続く場合は注意が必要です。
神経性食欲不振症
神経性食欲不振症とは、いわゆる摂食障害に分類される疾患です。一般的には拒食症と呼ばれ、拒食症と過食症を合わせて摂食障害と呼んでいます。太ることを過剰に恐れるあまり、食べ物が食べられなくなったり、特定の食べ物に強い嫌悪感やこだわりを持ったり、同じものを同じ時間にしか食べられなくなったり、などの症状が現れます。
極度のカロリー制限をしたり、指で喉を刺激して食べたものを吐く、下剤を乱用するなどして体重を減らそうとします。思春期の女性に多く、痩せていくことを喜ぶ人も多いのですが、何カ月も無月経が続いて不妊の原因になったり、栄養失調に陥ることもあります。最悪の場合、不整脈を起こして突然死する可能性もあるため、よい痩せ方とは言えません。
悪性腫瘍
悪性腫瘍とは、いわゆる「がん」のことを指します。どこのがんなのかによって現れてくる症状は変わりますが、初期はそもそも自覚症状がなく、疾患に気づきにくいことも少なくありません。特に、塩分の過剰摂取やピロリ菌によって発症すると考えられる胃がんは、日本人の死亡原因の第2位でもあり、注意が必要です。初期にはほとんど症状が現れませんが、進行すると胃痛や胸やけ、吐き気、吐血などが見られ、それに伴って食欲不振に陥り、体重が減少します
アルコール依存症
アルコール依存症とは、お酒の飲み方や、飲む量を自分でコントロールできなくなってしまう疾患です。飲んではいけないと頭でわかっていても、抑えられなくなるのが依存症の怖いところです。アルコールが体から消えていくときに、特有の離脱症状が現れるのが依存症の特徴です。手の震え・発汗・不眠などの症状とともに、食欲が低下することがあります

食欲があるけど体重が減ることもあるの?

食欲があっても体重が減る場合、甲状腺機能亢進症または糖尿病の可能性が考えられます。甲状腺機能亢進症とはいわゆるバセドウ病とも呼ばれる疾患で、一般的に女性に多くみられる疾患です。そして糖尿病は、血中のブドウ糖をエネルギーとして利用できなくなり、ブドウ糖の血中濃度が高いままになってしまう疾患で、生活習慣病のひとつです。

甲状腺機能亢進症とは、甲状腺ホルモンが過剰に分泌されてしまう疾患のことで、新陳代謝が活発になります。新陳代謝が活発になるのは一見良いことのように思われますが、過剰に代謝が促されてしまうため、心臓に負担がかかります。食欲旺盛でたくさん食べているのに痩せてしまうだけでなく、甲状腺の腫れや眼球の突出、手の震え、動悸などの症状が現れます。原因は自己免疫の異常や遺伝などと考えられていて、20~30代の女性に多く発症しますが、男性の発症も少なくありません。

糖尿病には1型と2型があります。生活習慣によるもの(2型)は食べすぎや不摂生な食生活、それに伴う肥満が原因ですが、遺伝や自己免疫の異常によってそもそもインスリンの分泌が足りない場合(1型)もあります。1型の場合は生まれつきの疾患であるため、それまで問題がなかったのに突然体重が減少してくるのであれば、2型の糖尿病であると考えられます。

糖尿病によって血糖値が高い状態が続くと、インスリンというホルモンがだんだん出にくくなってきます。そのため糖分をエネルギーとして利用できなくなっていきます。そこで、体に蓄えられている脂肪や筋肉を分解してエネルギーとして利用せざるを得なくなるため、痩せていきます。尿量が増える、喉が渇くなどの症状が現れることもあります。

体重が減ってきたら病院へ行ったほうがいい?

食欲不振が続いて体重が減ってしまったり、逆にたくさん食べているのに痩せてしまう場合は、何らかの内臓または内分泌系の疾患にかかっている可能性があります。一度、医療機関で診察を受けると良いでしょう。また、その結果、神経性食欲不振症と考えられる場合は、心療内科に相談しましょう。

医師に相談する場合は、以下のようなポイントをまとめておき、具体的に症状を説明するようにしましょう。その後の検査や治療をスムーズに行うことができます。

  • いつから体重が減っているか
  • どのくらい体重が減少したか
  • 現在の1日の食事量・回数、その内容
  • 体重が減っている以外に気になる症状があれば
  • 気分や精神の変調

ダイエットをしているわけでもないのに体重が著しく減少する場合や、過度な食事制限がやめられない場合は、心身の疾患が隠れている場合があります。痩せればいいんだと思い込んで放置せず、ぜひ一度医療機関で検査を受けましょう。

おわりに:食欲不振で体重が減るのは、体やメンタルの病気かも!?

食欲不振で体重が減るのは自然のことですが、そもそも食欲が減るのは体や精神の何らかの不調が原因となっている場合もあります。それまで何も問題がなかったのに食欲不振になり、体重が減ってきたという場合は、一度医療機関で診察を受けると良いでしょう。

まずは内科に行くのがおすすめですが、拒食症や過食症などの摂食障害の疑いが強い人は心療内科の受診も合わせて考えましょう。

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2型糖尿病(33) 甲状腺機能亢進症(19) 食欲不振(28) 食欲不振の原因(4)