記事監修医師
東京大学医学部卒 医学博士
腎結石と言われたら食生活の改善が欠かせないといわれたけれど、どんなことに気をつければいいのか迷う方は多いと思います。この記事では、腎結石と診断された後の食生活の改善が必要な理由とともに、具体的な改善ポイントを解説します。
尿は腎臓でつくられて、尿管や膀胱、尿道を経て排泄されます。この尿が通る課程を「尿路」といいます。尿路のどこに結石ができるかによって、腎結石、尿管結石、膀胱結石、尿道結石と名前が代わり、まとめて尿路結石と呼ばれています。
腎結石は腎臓結石と呼ぶこともあり、腎臓の中に石ができることをいいます。たとえ腎結石になっても腎臓内に石が留まっている際には、ほとんど自覚症状はありません。そのため、定期的な健康診断で腎結石が見つかるということもありえます。しかし、結石が腎臓から出て、尿管や膀胱といった他の部位につまると激しい痛みが起こります。
尿路結石の大部分は、シュウ酸カルシウムやリン酸カルシウムといった、カルシウムを含む結石といわれています。ほかに、尿酸結石やシスチン結石、リン酸アンモニウムマグネシウム結石があります。
腎結石を含む尿路結石の原因は完全には解明されていないものの、さまざまな要因が重なりあって発症すると考えられています。最近の研究によって、尿路結石と動脈硬化の発症には類似している点が多いことがわかってきました。高カルシウム尿症、高尿酸尿症、高シュウ酸尿症は、結石形成をうながす因子ですが、これらは肥満度と関係すると報告があります。そのため、尿路結石の再発を予防するためには、生活習慣病の予防・改善方法と同様に食事指導が欠かせません。
2013年に改訂された尿路結石診療ガイドラインでも、水分の摂取、肥満の防止とともに、食生活の改善が挙げられています。
腎結石の再発を防ぐためには食生活の改善が欠かせません。では、食事のポイントは具体的にどのようなものなのでしょうか。
水、麦茶、ほうじ茶などの水分をしっかり飲んで、尿量を増やすことは結石予防の基本となります。しかし、紅茶やコーヒーといった嗜好品にはシュウ酸が多いため控えるようにしましょう。清涼飲料水やジュースに含まれる塩分や砂糖は、尿中のカルシウムを増やすため、飲みすぎに注意しましょう。
結石がカルシウムを含むことから、かつてはカルシウムは摂取制限をすることが必要と考えられていました。しかし、この考え方は現在は誤りとされています。カルシウムが減少しすぎると、カルシウムと結合することで排泄されていたシュウ酸が余ってしまい、シュウ酸カルシウム結石を形成しやすくなるとされるためです。ガイドラインでは、一日あたり600~800mgのカルシウムをとることが望ましいとされています。
シュウ酸は、ほうれん草を代表とする葉物野菜やタケノコといった食材や、紅茶、コーヒー、お茶、バナナ、チョコレート、ココア、ピーナッツ、アーモンドといった嗜好品にも含まれています。これらの摂取量に注意するほか、調理方法の工夫や食べ合わせによってシュウ酸の吸収を抑えることができます。たとえば、ほうれん草は一旦茹でてから調理することでシュウ酸量を減らすことができます。
野菜や果物に含まれているクエン酸は、カルシウムとリン酸、シュウ酸が結合することを阻害する物質とされています。そのため、野菜や果物は適度にとるようにしましょう。ただし、ビタミンCは摂りすぎると、尿内のシュウ酸を増やしてしまうことに繋がるため注意が必要です。
腎結石の再発予防のためには水分補給が基本ですが、紅茶やコーヒー、糖分の多いジュースや清涼飲料水などの飲み過ぎには注意が必要です。また、アルコールも水分補給には適していません。特にビールにはプリン体が多く含まれています。プリン体は体の中で代謝されて最終的に尿酸になり、尿酸結石の原因になります。また、アルコールを飲んだあとは脱水状態になりがちです。つまり、ビールの飲み過ぎは、再発予防どころか結石の形成につながりかねません。どんな飲み物でも水分摂取につながるわけではないことを覚えておきましょう。
腎結石は腎臓に結石ができる病気です。腎臓から排出されて、尿道や膀胱などに移動すると、背中から腰にかけて激しい痛みが起こります。再発予防には、毎日の食生活の改善が大切とされています。カルシウムは適度に摂ったほうが良いなど、かつての指導とは異なる内容もあります。医療機関や栄養士などの指導を受けて正しく理解し、予防を心がけましょう。
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