記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2019/2/9
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2013年にピロリ菌による慢性胃炎の患者さんにも、ピロリ菌除菌への保険適用が認められ、ピロリ菌感染症の早期発見・早期治療がますます重要になってきています。今回はピロリ菌の基本、検査、除菌治療などについてご紹介します。「ピロリ菌が心配だ」という人はぜひ参考にしてください。
ピロリ菌とは、正式には「ヘリコバクター・ピロリ」といいます。ヘリコは「らせん形(ヘリコイド」が語源であり、バクターは「細菌(バクテリア)」が語源となっています。また、ピロリとは「幽門(胃の出口付近)」を指す用語で、これらを繋げると「胃の出口付近にいるらせん形の細菌」という意味になります。それではピロリ菌に感染すると、どんな病気が起きるのでしょう。
ピロリ菌に感染すると、胃の粘膜に炎症が起こります。その炎症が続くと、少しずつ胃の粘膜を萎縮させます。そして、この萎縮は胃潰瘍や十二指腸潰瘍などの原因となるほか、ピロリ菌は胃の粘膜を傷つけるので、胃がんの発症リスクも高くします。その他、ピロリ菌は胃のリンパ腫などの発症にも関係していると考えられています。
ピロリ菌の感染経路は諸説あり、完全には解明されていません。しかし、ピロリ菌はヒトと一部のサルにのみ見つかっているので、一般的には「ヒトからヒトへ経口感染している」と考えられています。また、経口感染のルートは複数ありますが、現在は「唾液を介して感染している」と考えられています。特に、幼少期に親さんから感染しやすいとされています。
ピロリ菌検査には、大きく「内視鏡を使う方法」と「内視鏡を使わない方法」があります。なお、慢性胃炎や胃潰瘍などがない場合は、保険適用にならないので注意してください。
胃内視鏡(胃カメラ)によるピロリ菌検査とは、内視鏡検査の際に胃の組織を採取して「ピロリ菌がいるかを確認する」検査です。この検査には、以下の3つの方法があります。
なお、胃内視鏡検査と同時に行うピロリ菌検査は「点の診断法」といわれており、採取した組織にピロリ菌が棲みついていない場合があります。その結果、仮にピロリ菌陽性の患者さんであっても、検査結果は「陰性」と出てしまう可能性があるので注意が必要です。
胃内視鏡(胃カメラ)を使わないピロリ菌検査には、以下の3つがあります。
このうち、現在は「尿素呼気試験」や「便中抗原測定」の信頼度が高いとされています。これらのピロリ菌検査は「面の診断法」といわれており、ピロリ菌の見落としが少ないです。
ピロリ菌感染と診断が付いた場合には、内服薬による除菌治療を行います。除菌治療には3種類のお薬(抗菌薬2種類と胃薬1種類)があり、1日2回、1週間服用します。その後、約1カ月~2カ月後に、「除菌に成功したか」を調べるための検査(除菌判定)を行います。その判定で除菌に成功していたら、ピロリ菌の除菌治療は終了となります。
もし除菌判定にて除菌失敗とわかった場合は、2回目の除菌治療を行います。治療薬は1回目と同様で3種類の薬ですが、抗菌薬には1回目のものと別の薬を使用します。そして、2回目も1週間お薬を服用し、約1カ月~2カ月後に除菌判定を実施します。なお、二次除菌治療までは保険適用ですが、三次除菌以降は保険外診療となっています。
除菌治療の副作用には、軟便・下痢、味覚異常などがあります。ただし、ほとんどの場合は、症状が軽く、服用中止後にはもとに戻ります。そのため、これらの副作用があったとしても、自己判断で服薬を中断したりせずに、最後までお薬を飲みきることが肝心です。
しかし、中には発熱、腹痛を伴う下痢、血便、皮膚の発疹やかゆみなども現れます。これらの副作用が出た場合はすぐに薬を中断し、医師や薬剤師に相談しましょう。また、副作用が悪化する場合は、一度、主治医や薬剤師に相談すると良いかと思います。
ピロリ菌に感染している場合、胃がんのリスクが高くなってしまうので、心配であれば早めに消化器内科などに相談しましょう。また、ピロリ菌の除菌治療に成功した場合でも、胃がんの発症リスクは残るので、定期的に胃内視鏡検査などを受けることが重要です。
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