記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2019/2/3
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
長引く咳の原因には肺炎が考えられますが、肺炎とひとくちにいっても、原因となる病原微生物が異なっていれば治療法も変わってきます。
肺炎は大きく3つのタイプに分かれ、細菌(細菌性肺炎)、ウイルス(ウイルス性肺炎)、その2つの中間的な性質をもつ微生物(非定型肺炎)に分類されます。この記事では、微生物(非定型肺炎)に分類されるマイコプラズマについて解説します。
「マイコプラズマ肺炎」「マイコプラズマ感染症」などと呼ばれ、マイコプラズマニューモニアという病原体により、一般的に気管支炎や肺炎などの呼吸器感染症を引き起こす病気を指します。
マイコプラズマニューモニアはウイルス程度の小さな病原体ですが、細菌とウイルスの中間の性質をもつ微生物で、ウイルスと異なり増殖する際に生きた細胞を必要とせず、一部の抗生物質が有効なことから、細菌に分類されています。しかし、細菌の特徴である細胞壁をもっておらず、まるでアメーバのように一定の形をしていません。
細菌感染症治療の第一選択として使われるペニシリン系やセフェム系などの抗生物質は、細菌の細胞壁を障害して菌を殺す働きをしますが、細胞壁をもたないマイコプラズマニューモニアには無効であるため、タンパク質合成を阻害するマクロライド系やテトラサイクリン系、ニューキノロン系の抗生物質が有効です。
肺炎のうち、10~20%はマイコプラズマが原因であると考えられています。
マイコプラズマに感染すると、のどの痛み、頭痛、筋肉痛、全身倦怠感(だるさ)、発熱などの風邪によく似た症状があらわれます。発熱した後に乾いた咳が長期間出るのが特徴で、特に早朝や夜間就寝時に強くあらわれます。
秋から冬にかけて発症のピークを迎え、患者の多くは小児や若い方です。約40%の子供が1歳までに、さらに約65%の子供が5歳になるまでに感染経験があるとされていますが、5歳未満の感染では症状が軽いため気づかないことが多いです。
感染経路は、咳や痰、唾液が口や鼻を通して感染する飛沫感染と、鼻や喉からの分泌物に触れることで感染する接触感染で、感染力は比較的弱いのですが、職場内や家族内などの閉鎖的な場所で蔓延しやすくなります。多くの人が気管支炎ですみますが、風邪と症状が似ていることから、放置した結果、重症化して肺炎になってしまうことも珍しくありません。咳が長引いていたり、夜間に激しい咳が続いたりする場合は、念のため病院で診てもらいましょう。
また、マイコプラズマ肺炎にかかると、合併症を引き起こすことがあります。特に、喘息をもっている人は喘息発作を起こす危険性があるので注意が必要です。脳炎や脳症、蕁麻疹、肝炎などの肝機能障害などの合併症を起こすケースもあります。
マイコプラズマには予防接種などの予防方法がなく、手洗いやうがいなどを日常的に徹底して行なうことが重要です。症状の個人差が大きく、感染していることに気づかない人も多いので、マイコプラズマは歩き回る肺炎とも呼ばれています。閉鎖的な場所での感染が多いので、飛沫感染を防ぐためにマスクを付けると良いでしょう。
また、自分が感染しないように予防することも大事ですが、他の人に感染させないことも大切です。1回の咳で約10万個のウイルスが2m、1回のくしゃみでウイルスが3mも飛ぶといわれているので、マスクがない場合にはティッシュやハンカチなどで口元を抑え、周りにウイルスが飛ばないようにしましょう。鼻水のついた手で触ったタオルや食器からも感染が拡大するので、それらの共有を避けたり、しっかりと手洗いうがいをしてください。
マイコプラズマ肺炎に感染すると免疫は出来ますが、効果は長続きしません。再度感染する可能性も十分にあるので、うつし合わないように気をつけてください。
学校では感染の拡大を防ぐため、学校長の判断において、必要に応じて出席停止となる場合があります。
一方、会社の場合、休む必要日数や休んだ場合の扱いについては就業規則によって異なります。就業規則に取り決めがない場合には、嘱託医や受診した医師の指示のもと、職場の管理者の判断になります。一般的には症状が安定し、全身状態が良くなれば通勤や登校は可能な病気とされていますが、所属する団体の規則に従ってください。
また、体の中にマイコプラズマが侵入してから症状が出てくるまでの潜伏期間は2~3週間といわれているので、自分に疑わしい症状が出たり周囲にいる場合は、感染の拡大を防止したり予防に努めるようにしましょう。
マイコプラズマの特徴的な症状は長引く咳です。しかし風邪に似た症状だったり、症状が軽いため感染に気づかなかったりするケースもあります。なんとなく風邪のような症状が続いている気がする…と感じたら、医療機関を受診してください。
※抗菌薬のうち、細菌や真菌などの生物から作られるものを「抗生物質」といいます。 抗菌薬には純粋に化学的に作られるものも含まれていますが、一般的には抗菌薬と抗生物質はほぼ同義として使用されることが多いため、この記事では抗生物質と表記を統一しています。
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