記事監修医師
東京大学医学部卒 医学博士
発症すると、頬がりんごのように赤くなることで知られる「りんご病」。妊婦さんが感染した場合は流産の危険性もある要注意な感染症ですが、りんご病は薬などで治療できるのでしょうか。妊娠中に感染してしまった場合の治療法なども併せてご紹介していきます。
りんご病(伝染性紅斑)とは、パルボウイルスB19に感染することで発症する感染症の一種です。主に5歳前後の子供を中心に、定期的に流行します。
パルボウイルスB19に感染すると、およそ1週間後に発熱など軽い風邪のような症状が現れ、さらに1週間ほど経過した頃に、頬に平手打ちをされたような赤い発疹が見られるようになります。発疹は手足や体幹に広がることもありますが、1週間ほどすると自然に消えてゆき、治癒に向かっていきます。
このりんご病の治療薬、パルボウイルスB19への抗ウイルス薬は、現在のところ存在しません。しかし特に治療薬を使わなくても、りんご病は自然に治癒していく病気であり、赤い発疹が出た段階では周囲への感染力もほぼなくなっています。
ただし、発熱や関節痛がひどい(大人のりんご病でよくみられる症状です)場合は解熱鎮痛薬を処方したり、発疹に伴うかゆみがひどい場合は抗ヒスタミン薬を処方したりと、対症療法が行われることがあります。
健康な大人や子供がりんご病にかかる分には、特別な治療は必要ないのですが、脳炎や心筋炎、溶血性貧血、血小板の減少など重度な合併症が引き起こされた場合には、免疫グロブリン療法やパルス療法(副腎皮質ホルモン剤投与)が実施されます。
また、先天性の貧血がある人の場合は、りんご病に感染すると重篤な貧血症状を起こし、息切れや動悸などが起こる恐れがあるため、予防のためにγグロブリン製剤が投与される場合もあります。
りんご病に感染した場合、高リスクとされるのが妊婦さんです。特に妊娠20週以前の妊娠初期に感染した場合は、胎盤を通じて胎児に感染し、胎児水腫(胎児のむくみ)や胎児貧血を起こしたり、流産や死産につながったりする恐れがあります。
このため、妊婦さんにりんご病の感染が確認された場合は、以降最低8週間は毎週エコー検査をし、胎児水腫が起こっていないか経過観察をする必要があります。検査の結果、もしも胎児貧血が疑われる場合は、経皮的臍帯静脈採血でヘマトクリット値を測定し、胎児が死亡する恐れがあれば子宮内赤血球製剤輸血の実施が考慮されることになります。
りんご病そのものに特化した治療薬はないのが現状ですが、そもそもりんご病は健康な人が発症する分には、そこまで問題になる病気ではありません。しかし妊娠中の女性や、重度の合併症が見られた場合は特別な治療が必要になる場合もあります。感染時のリスクが高い人は、りんご病の流行期の体調管理に一層注意しましょう。
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