肺がんの症状って、風邪と似ているの?

2019/1/27

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

肺がんは、がんの中でも死亡率の高い疾患であることがわかっています。その理由の一つに、肺がんでよく見られる症状は、肺がんに特有のものではないことが挙げられます。

肺がんの症状は風邪と似ているといわれますが、本当なのでしょうか?また、そのほかにどのような症状が出てくるのでしょうか?

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肺がんになるとどんな症状が出てくる?

肺がんとは、気管支や肺胞など、肺の細胞が何らかの原因でがん化したものです。肺がんで起こる自覚症状には以下のようなものがあります。

  • 咳・痰・血痰・呼吸困難
  • 発熱
  • 胸痛

これらはいずれも肺がんに特有の症状ではなく、他の呼吸器系の疾患や、喉や周辺臓器の疾患でも現れる症状です。そのため、肺がんと自覚していない人も多く、早期発見が難しい理由のひとつになっています。これらの症状が複数あったり、長引いたりする場合は一度医療機関を受診して検査してもらいましょう。

そのほか、がん細胞が特殊な物質を産生したり、免疫反応が影響したりして起こる症状があります。これらの症状は「腫瘍随伴症候群」と呼ばれ、他のがんと比較して肺がんでみられやすい症状です。

  • 肥満・ムーンフェイス
  • 食欲不振
  • 神経症状
  • 意識障害

ムーンフェイスとは、顔が満月のように丸くむくむ症状です。がん細胞が産生するホルモンによって引き起こされるもので、生活習慣や食生活によって起こるものではありません。

肺がんの初期症状はないの?

肺がんは、早期発見が難しいがんのひとつであるとされています。その理由として、肺がんは早期ではほとんど無症状であることが挙げられます。症状がみられる場合でも、咳や痰・発熱などの軽い症状となってしまうことが多いため、風邪と勘違いして放置してしまう人が多いのです。

風邪との違いは、肺がんによる咳や痰はなかなか治らないことが挙げられます。風邪は通常、1週間程度で症状が落ち着いてきます。しかし、肺がんによる咳や痰は放っておけば治るというものではなく、何カ月にもわたって続くこともあります。咳や痰が2週間以上続くようであれば、早めに医療機関で検査をするのがおすすめです。

肺がんが進行すると出てくる症状は?

肺がんが進行してくると、進行したがんがどの部位へ広がっていくかによって、それぞれの部位で特異的な症状が現れることがあります。たとえば、壁側の胸膜や胸壁に浸潤した場合、その部位での疼痛が起こります。肺の上端(肺の尖端)にできた腫瘍が胸壁に浸潤するタイプの「パンコースト型肺がん」の場合、肋間神経や腕の神経に症状が及ぶことがあります。

腕の神経にがんが広がると、腕の痛みやしびれ、麻痺、筋力低下などの症状が現れます。これらの症状はパンコースト症候群と呼ばれています。また、さらに首の交感神経にまでがんが広がると、まぶたが垂れ下がる、瞳孔が小さくなる、眼が落ちくぼむ、発汗が減るなどの症状が現れます。これらの症状はホルネル症候群と呼ばれています。

発声を司る部位にがんが広がると、声がかすれたり、食べ物を誤嚥する危険性もあります。心臓を包む膜(心外膜)や肺を包む膜(胸膜)にがんが広がると、胸痛や不整脈、胸に水が溜まる、呼吸困難などの症状が現れます

また、肺以外の臓器に遠隔転移すると起こる症状として、以下のようなものがあります。

  • 脳転移…頭痛・吐き気・発語障害・意識障害・精神障害・半身不随・歩行障害など
  • 骨転移…局所的な疼痛、四肢麻痺、神経痛・排尿障害、がんによる骨折など
  • 肝転移…多くは無症状ですが、転移が大きく肝門部を塞いでしまうと黄疸が起こることも
  • 副腎転移…クッシング症候群、著しい食欲低下、体重減少

クッシング症候群とは、顔のむくみや肥満・血圧の上昇などを総じて呼びます。脳に転移が起こると、腫瘍のむくみが脳を圧迫するため頭痛や吐き気が起こります。

咳が続く、痰がよく出る…そんなときは検査を受けよう

風邪かな?と思っていたら、咳や痰が残り、なかなか治らないという場合、風邪ではなく肺がんの可能性が出てきます。2~3週間以上咳や痰が治らないときは、医療機関で検査を受けましょう。

肺がんの検査を行う場合、まずは胸部のX線検査やCT検査、喀痰細胞診などを行い、病変があるかどうか、またその場所を調べます。その後、確定診断のために病理検査を行います。病理検査では気管支鏡検査・経皮針生検・胸腔鏡検査などを必要に応じて行い、病変が疑われる部位から細胞や組織を採取します。

細胞や組織を評価してがんの有無や場所を確認すると同時に、化学療法を行う場合はその効果を予測するため、採取した組織でバイオマーカー検査も行います。さらに、がんの浸潤や別の臓器への転移の有無を調べるため、CT検査やMRI検査、超音波検査などの画像検査を行う場合もあります。

おわりに:肺がんの初期症状は風邪と似ているため、長引く場合は病院へ

肺がんの初期症状は、発熱や咳・痰などで、風邪とよく似ています。そのため、風邪だと思いこんで放置してしまい、早期発見がなかなか難しいです。

しかし、風邪であれば1週間程度で症状が落ち着きますが、肺がんの場合は咳や痰などの症状が数週間から数ヶ月にわたって長く続きます。咳や痰が2~3週間以上続くようであれば、一度医療機関で検査を受けましょう。

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