記事監修医師
東京大学医学部卒 医学博士
長距離の移動時や災害時など、長い時間ほぼ同じ姿勢をとり続けることで、足の血流が悪くなって血栓ができやすくなってしまう「エコノミークラス症候群」。今回は、実は命を落とす恐れもあるエコノミークラス症候群について、発症することのリスクや死亡率、治療法などを解説していきます。
長い時間同じ姿勢をとり続けることで足の血流が悪くなり、足の静脈に血栓と呼ばれる血の塊ができることで発症する疾患が、エコノミークラス症候群です。
飛行機のエコノミークラスで長時間移動する人が発症しやすいことから、この通称で知られるようになり、発症すると足のむくみや腫れ、胸の痛みなどの症状が現れます。足にできた血栓は、立ち上がり移動したときなどに移動して肺に到達することもあるため、発症が原因で死に至ることもある恐ろしい疾患なのです。
なお、エコノミークラス症候群は正式な病名ではありません。正しくは、足に血栓ができた状態を「深部静脈血栓(しんぶじょうみゃくけっせん)」と呼びます。そして足にできた血栓が移動し、肺の血管を塞いでしまった状態のことを「急性肺血栓塞栓症(きゅうせいはいけっせんそくせんしょう)」といいます。このように、深部静脈血栓と急性肺血栓塞栓症の2つをあわせて、一般的にはエコノミークラス症候群と認識されているのです。
エコノミークラス症候群を発症した人のうち、肺の血管に血栓が詰まってしまう急性肺血栓塞栓症にまで至った人は、呼吸困難や意識障害の状態に陥ります。重症度によっても変わってきますが、エコノミークラス症候群による死亡率は発症者のうち1~3割程度と言われています。
エコノミークラス症候群の治療は、血栓が肺の血管に詰まると重症化し、命が危険な状態に陥るため、早い段階での開始が推奨されています。必要な治療も重症度によって大きく変わりますので、以下に軽いむくみや胸痛がある程度の軽症、血栓が確認できる中等症、肺に血栓が詰まった重症の3つに分けてご紹介します。
なお上記のような治療は、患者の状態によっては入院期間を要することもあります。
なお、上記のようなエコノミークラス症候群の診断・治療は、主に心臓内科や循環器内科などで受けることができます。
長時間の移動や同じ姿勢の維持のために、足の血流が悪くなって血栓ができるエコノミークラス症候群は、血栓が肺動脈に移動すると死亡することがあります。発症者のうち、重症度にもよりますが死亡する人の割合は1~3割程度といわれる、恐ろしい疾患なのです。
エコノミークラス症候群による死亡を防ぐには、足のむくみや胸痛のある早い段階での治療開始が望まれます。異変を感じたらすぐに心臓内科、循環器内科の病院へ行きましょう。
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