「タバコを吸うと痩せる」「禁煙すると太る」はウソ?ホント?

2019/1/30

三上 貴浩 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 医学博士

三上 貴浩 先生

「タバコを吸うと痩せる」「禁煙すると太る」という話を聞いたことはありませんか?実際、特に女性はダイエット目的でタバコを吸い始める方も少なくなく、また太るのが嫌でなかなか禁煙に踏み切れない…という方も多いとか。そこで今回は、タバコにはダイエット効果があるのかどうか、そして禁煙後の体重への影響について解説していきます。

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タバコを吸うと痩せるってホント?

元喫煙者の人からよく聞く話のひとつが、「タバコを吸ってたときは痩せてたんだけど、禁煙したら太っちゃってさ~」というもの。実際身をもって体験した方も多いようですが、なぜタバコを吸っていたときは痩せていたのでしょうか?

考えられる理由として、ある研究結果をご紹介します。
アメリカの科学誌『Science』で2011年6月10日に掲載された、アメリカのエール大学のチーム研究によると、タバコに含まれるニコチンには、脳の視床下部にある満腹感を知らせるニューロンを活性化する作用がある、つまりニコチンは食欲を抑制する働きがあることが明らかになったそうです。実際アメリカでは喫煙者は痩せていることが多いのですが、それにはこのニコチンの作用が関係しているのではないかと考えられています。

またこのほかタバコで痩せる理由としては、タバコ1本にはおよそ10kcalの消費カロリーがあること、ニコチンには脂肪組織への脂肪の蓄積を防ぐ抗肥満作用があることなど関連しています。

ただ、「じゃあタバコを吸うと痩せられるのか!」というと、そうとも言い切れません。日本国内では、ヘビースモーカーであればあるほど肥満者の率が高いというデータも発表されているからです。この喫煙習慣と肥満者の関連性については、ニコチンの作用によって内臓脂肪が溜まりやすくなること(ニコチンは男性ホルモンを刺激し、一方で女性ホルモンの作用を弱めるため、男性に多い内臓脂肪型肥満を招きやすい)、またヘビースモーカーには飲酒習慣がある場合が多いことなどが関係しているとされています。

禁煙すると太るのはホント?

ではよく聞く禁煙あるあるのひとつ、「禁煙すると太る」の真偽についてですが、これはおおむね事実です。禁煙後の体重の増加は、禁煙した人のおよそ8割に起こるとされています。

体重が増える理由としては、これまでニコチンから得られていた抗肥満作用が失われたこと、喫煙による消費カロリーがなくなったこと、味覚が正常になり食欲が増えたこと、口寂しさやストレスを紛らわすために間食や食事の回数・量が増えてしまうこと、などが関係しています。

ただ、禁煙後の体重増加は平均1~2kg前後です。禁煙した直後は体重が増加し続ける傾向にはありますが、禁煙が落ち着いた頃には体重の増加はストップし、その後徐々に減少していくといわれています。

おわりに:痩せるか太るかは、タバコそのもののより、付随する生活習慣の影響が大きい

この記事でご紹介したように、タバコのニコチンには体重の減少につながる作用があることから、喫煙を続けているうちはスタイルを維持できたり、痩せたりすることは想定できます。しかしタバコそのものが持つ減量効果は小さく、体重の増減に一番関わるのは結局のところ食事と運動のバランスです。禁煙して太るのが怖いという方は、運動量を増やしてみたり食事を節制してみたりと、ダイエットにも徐々に取り組んでいくことをおすすめします。

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