大動脈瘤が見つかったらどんな検査を受ける?治療法は?

2019/2/9

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

大動脈瘤とは、体の中で最も太い血管である大動脈にこぶ(瘤)ができる病気です。こぶの状態になっているときは自覚症状がありませんが、破裂すると命を落としてしまう恐れがあります。この記事では、大動脈瘤の症状や検査法、治療法について解説します。

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大動脈瘤ってどんな病気?

大動脈は、胸部から腹部にかけ走る、体内で最も太い血管です。心臓が全身に血液を送り出すとき、最初に血液が通る血管です。そのため、高い血圧に耐えられるように、血管の壁は厚く、柔軟性のある構造をしています。しかし、血管はだんだんと弱い部分が生じます。この部分が膨らんでこぶができたり、血管が少し破れたところを周囲の組織が包んでこぶになったりします。このこぶのことを瘤(りゅう)といい、大動脈瘤は大動脈に瘤ができる状態をいいます。

大動脈の大きな原因として、動脈硬化が挙げられます。動脈硬化は、血管の柔軟性が失われて硬くなったり、血管内に脂肪が蓄積して血液の通り道が狭くなってしまうことをいいます。動脈硬化は加齢によって進みますが、さらに、高血圧や糖尿病、喫煙、脂質異常などの生活習慣病と呼ばれるものがリスクになることがわかっています。

大動脈瘤になると出てくる症状は?

大動脈瘤は、小さいうちは自覚症状がありません。しかし、一度動脈瘤が大きくなり始めると、大きくなるスピードが速くなります

胸部大動脈瘤では、ある程度大きくなって大動脈の近くの反回神経に触れることで、症状があらわれることがあります。反回神経は声帯の運動や飲み込みに関わる運動をコントロールしている神経のため、症状が出てくると声がかすれたり、飲み込みづらさが生じることがあります。

一方、腹部の大動脈瘤は自覚症状がほとんどなく、いつ破裂してもおかしくない大きさになっても気づかないことがあります。検診や人間ドッグの超音波検査やCT検査で、偶然発見されることがあります。

いずれにしても、大動脈瘤が破裂すれば激しい痛みや大出血が起こってショック状態となり、命を落とすこともあります。違和感を感じたときに受診するのはもちろん、検診や人間ドックを定期的に受けて、早期発見できるよう、日ごろから意識しましょう。

大動脈瘤が見つかったらどんな検査を受ける?

大動脈瘤は自覚症状があまりないため、健康診断や人間ドッグでのX線(レントゲン)検査で異常が発見されることが少なくはありません。ただし、レントゲンだけでは、大動脈瘤と診断するには不十分なため、CTやMRIなどの詳しい検査を行うことになります。

CT検査

X線を使う検査ですが、輪切りにした画像を撮影することで、異常の大きさや場所、形をより立体的に確認することができます。

MRI検査

X線ではなく磁気を使う検査です。CTと同様に立体的な画像が得られます。

超音波検査

大動脈瘤が疑われるときには、皮膚の上から超音波を当てて臓器の形を確認します。場所にもよりますが、腹部大動脈瘤は、レントゲンと超音波検査でも確定診断を行うことがあります。

大動脈瘤が見つかった場合の治療法は?

大動脈瘤が見つかったときの治療は、大動脈瘤の大きさや部位、大きくなるスピードなど、いくつかの要件をもとに判断されることになります。

血圧のコントロール
小さな大動脈瘤は、大きくなって破裂することを防ぐことが大切です。タバコをやめ、内服薬で血圧をコントロールします。しかし、血圧コントロールだけでは、大動脈瘤が消えてなくなるわけではありません。
人工血管置換術
大動脈瘤を人工血管で置き換える手術です。胸部の大動脈瘤では、一度心臓を止めて人工心肺を用いて行います。大動脈瘤が胸から腹部に渡る場合は広範囲の手術となるため、さまざまな内臓や脊髄への配慮が必要となります。腹部の大動脈瘤においては、破裂前の手術に年齢制限がないとされています。
ステントグラフト治療
足の付根の動脈からカテーテルを挿入して、大動脈瘤の内側から人工血管を網のように広げる手術です。大きく切開をする必要がないため、手術そのものによる体への負担は小さくなります。しかし、手術の確実性や長期的な経過がはっきりとしていません。

治療方針は、大動脈瘤の状態や、年齢、慢性的な病気の有無などによって異なります。状況に合わせて、さまざまな方法で治療が行われます。

おわりに:人間ドックや定期検査が、大動脈瘤の早期発見につながる!

大動脈は、体の中で最も太い血管です。この血管にこぶ状の膨らみ(瘤)ができることを大動脈瘤といいます。自覚症状はほとんどなく、検診や人間ドッグで初めて見つかることも少なくはありません。治療は状態に合わせて薬や手術など、さまざまな方法が行われています。
大動脈瘤は大きくなって破裂すれば、命にも関わる病気です。定期的な検診や人間ドッグを受け、早い段階で発見できるようにしましょう。

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