ゾフルーザ®ですぐ熱が下がったら、翌日から出勤してOK?

2019/2/8

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

インフルエンザが大流行している今シーズン、話題になっている新薬「ゾフルーザ®」。実際にゾフルーザ®を投与された患者さんからは、「即効で熱下がった!」など効き目の凄さを実感する声が多々上がっています。
ただ一方で問題視されているのが、解熱後すぐの出勤や外出について。
果たして、解熱後すぐの出勤や外出に、感染拡大のリスクはないのでしょうか?

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ゾフルーザ®は従来薬より早く熱が下がる!?

ゾフルーザ®は、塩野義製薬が2018年3月に発売したインフルエンザ治療薬です。「1回飲むだけでウイルスの増殖を抑える」のが、ゾフルーザ®の強みとされていますが、具体的に従来薬とどんな違いがあるのでしょうか。

まず、タミフル®、リレンザ®、イナビル®、ラピアクタ®などの従来のインフルエンザ治療薬は「ノイラミニダーゼ阻害剤」と呼ばれ、細胞内で増殖したウイルスが細胞の外へ出るのを防ぐことで、周囲の細胞への感染拡大を防止する作用のある薬です。

一方のゾフルーザ®は「キャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害剤」と呼ばれ、細胞内でウイルスが増殖できないようにする作用があるとされています。

このゾフルーザ®の効果を検証した臨床試験によると、熱や関節痛などのインフルエンザの症状が出ている期間はタミフル®を投与した患者と変わらなかったものの、ウイルスや体から消えるまでの期間に関しては、タミフル®が72.0時間だったのに対しゾフルーザ®は24.0時間と、ゾフルーザ®ではかなり早くウイルスが消えたという結果が得られたそうです。

ゾフルーザ®ですぐ熱が下がったら、翌日から出勤・登校してもOK?

ゾフルーザ®は従来のインフルエンザ治療薬よりも早くウイルスが消失するとされています。

ということは周囲に感染させるリスクも低いはずなので、熱が下がった段階ですぐに出勤や登校をしても問題ないのでしょうか?

結論からいうと、答えは「NO」です。塩野義製薬は資料「ゾフルーザ®のよくあるお問い合わせ」の中で、以下のように回答しています。

Q. ゾフルーザ投与後、いつから登校(登園)するように指導したらよいですか?

A. 現在の学校保健安全法施行規則では、「発症した後5日を経過し、かつ、解熱した後2日(幼児にあっては、3日)を経過するまで」をインフルエンザによる出席停止期間としています。

「発症後5日、解熱後2日(幼児の場合は3日)」というのは、インフルエンザ感染後の登校基準の原則です。

出勤停止期間に関してはこうした法律があるわけではありませんが、おおむねこの基準をベースに医師から指示されることになります(会社によっては独自の基準を設けているところもあります)。

土曜に発熱→翌日日曜に解熱。外出してOKなのは何曜日から?

例えば「土曜日に発熱があったので病院を受診し、インフルエンザの診断を受けたが、日曜日には熱が下がった」というケースの場合、「発症後5日、解熱後2日※」のルールを当てはめると、いつから外出してOKなのでしょうか。

答えは「金曜日」です。

「え?日曜には熱が下がっていたんだから、解熱後2日=水曜日には出かけていいんじゃないの?」と思う方もいるかもしれませんが、それでは「発症後5日」の条件を満たせていません。
なので外出しても安全とされるのは、金曜日からということになります。

「熱が下がる=治った」ととらえる方も少なくないのですが、インフルエンザウイルスは発症の前日から発症後1週間までは感染者から排出され続けるので、熱が下がったとしてもこの期間より前に外出すると、周囲に感染を広げる恐れがあります。

確かにゾフルーザ®はウイルスが体内から消えるスピードの早い治療薬ではありますが、販売元である塩野義製薬からの発表や医師からの指示を守り、適切なタイミングでの出勤・登校をしてください。

※「発症後5日、解熱後2日」の数え方:土曜に発熱した場合、土曜が発症日ということになりますが、この発症日は上記の日数カウントに含まれません。翌日の日曜日から1日目、月曜が2日目、火曜が3日目……と数えていきます。

おわりに:治療効果が高いとされるゾフルーザ®。でも解熱後すぐの出勤は控えて

熱がすぐ下がると体調もだいぶ回復し、すぐにでも外出したい気分になるかもしれませんが、たとえ新薬のゾフルーザ®であっても、現段階では従来の「発症後5日、解熱後2日」より早い登校が認められているわけではありません。

周囲への感染を防ぐためにも、自分の体の回復のためにも、指示された期間の自宅療養を心がけましょう。

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