記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2019/1/25
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018年に、新しいインフルエンザ治療薬「ゾフルーザ®」が発売されました。この薬は1回の服用で効果が期待できることから注目を集めています。この記事では、ゾフルーザ®の特徴や従来の治療薬との違いとともに、副作用や懸念事項も紹介します。
ゾフルーザ®とは、昨年(2018年)2月に厚生労働省に承認され、同年3月から発売されている新しい内服タイプのインフルエンザ治療薬です。インフルエンザ治療薬としては、すでにタミフル®(内服タイプ、リレンザ®、イナビル®(どちらも吸入タイプ)、ラピアクタ®(点滴タイプ)がありますが、ゾフルーザ®は以下の2点で従来の治療薬と異なっています。
ゾフルーザ®は、細胞内でウイルスそのものの増殖を抑える働きを持っています。一方、従来のインフルエンザ治療薬は、細胞内で増殖したウイルスが細胞の外に出てしまうのを防ぐことで、周囲の細胞に感染が拡大するのを防ぎます。
ゾフルーザ®は、1回服用すればウイルスの増殖を抑える効果を発揮できます。一方、ゾフルーザ®と同じ内服タイプのタミフル®は、効果を得るためには1日2回、5日間の服用が必要です。
そのほか、ゾフルーザ®には従来の治療薬と比べて体内からインフルエンザウイルスがいなくなるのが早いことや、タミフル®が効かない耐性ウイルスにも効果を発揮できるといったメリットもあります。
一見するといいことづくめのように見えるゾフルーザ®ですが、副作用や服用によるデメリットはないのでしょうか。
成人および12歳以上の小児を対象とした臨床試験の段階で、頭痛や下痢、ALT(GPTとも呼ばれるもので、肝機能に異常がみられると上昇する数値です)の上昇といった副作用がみられています。また、ゾフルーザ®を服用しても、タミフル®の服用後にみられる異常行動がみられることも報告されています。
特に、ゾフルーザ®は1回の服用で効果を得られる反面、長期にわたって体内に薬の成分が残るため、もし重大な副作用が起きた場合、症状が改善するまでに時間がかかるのではないか、という懸念もされています。
また、ゾフルーザ®は耐性菌を生み出しやすい、というデメリットがあるのではないか、との懸念もあります。臨床試験で、子供の23.3%、大人の9.7%に耐性ウイルスが見つかったことが報告されているためです。
耐性ウイルスができると症状が長引くだけでなく、耐性ウイルスが周囲に広がってしまう恐れがあります。耐性ウイルスがあらわれたことによる影響は現時点ではわからないため、現時点ではゾフルーザ®の処方は控える、ということを発表した病院もあります。
さらに、ゾフルーザ®は新薬ということもあり、ほかのインフルエンザ治療薬と比べて薬の値段(薬価)が高いこともデメリットと言えます。たとえば、タミフル®は1錠あたり816円、リレンザ®が882円なのに対し、ゾフルーザ®は1,436円かかります。特に、タミフル®には最近ジェネリックの薬が発売されているため、ゾフルーザ®を飲みたいときは出費がかさむことも覚悟する必要があります。
ゾフルーザ®は1回の服用で効果が得られる、というメリットが先行して伝わっていることもあり、病院でゾフルーザ®を求める人が増えているといわれています。しかし、ゾフルーザ®には耐性ウイルスが出現しやすいデメリットだけでなく、まだ明らかになっていない副作用がある恐れもあります。タミフル®を始めとする既存のインフルエンザ治療薬でも効果はありますので、新薬が処方されないからといって慌てないようにしましょう。
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