記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2019/2/8
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
「エコノミークラス症候群」という病名を耳にしたことがある方は多いと思います。この病気を発症すると、脚の痛み、腫れ、むくみなどのほか、胸痛や息切れといった症状もみられます。今回は、エコノミークラス症候群の症状や発症タイミングなどについて解説します。
エコノミークラス症候群は「旅行者血栓症」や「ロングフライト症候群」と呼ばれることもある病気ですが、正式名称は「静脈血栓塞栓症」と言います。静脈血栓塞栓症には大きく「深部静脈血栓症」と「肺血栓塞栓症」があり、それぞれの特徴は以下の通りになっています。
このように、エコノミークラス症候群の発症には「脚の静脈内に血栓(血液の塊)ができる」ことが関係していると分かります。それでは、なぜ静脈内に血栓ができてしまうのでしょうか。
エコノミークラス症候群は、飛行機や長距離バスなど、長時間にわたり狭い席に座り続けることで発症する病気です。これは、長時間、脚を動かさずにいることで圧迫されて血流が悪くなり、「血栓が作られやすい環境ができてしまう」ためです。
本来、血液の流れが良好であれば、赤血球はバラバラになります。しかし、血液の流れが悪くなると、赤血球の凝固が活性化されます。これにより、血栓ができてしまうのです。
エコノミークラス症候群はご高齢の方や妊婦さん、出産後の女性に多い病気です。また、血管の病気を持っている方、がんを患っている方、骨折している方、経口避妊薬(ピル)を服用している方にも多くみられます。こうした事情をお持ちでない方もエコノミークラス症候群を発症することはあるため、注意は必要ですが、先にご紹介したものに該当する方は特に注意しましょう。
エコノミークラス症候群の初期症状として、鈍い痛みや腫れなどがあります。基本的には右脚または左脚のいずれか片方に症状が現れ、特にひざ裏やふくらはぎに見られます。
エコノミークラス症候群の症状が少し重くなると、ふくらはぎにむくみ(浮腫)が現れます。この症状がみられる場合、血栓が大腿部・骨盤内部の深部静脈を塞いでいる可能性が高いです。
エコノミークラス症候群では、脚の静脈内にできた血栓が肺に飛んで肺動脈を詰まらせてしまう場合があります。この状態になると、呼吸困難、息切れ、胸痛などの症状が現れます。
さらに血栓が肺動脈を詰まらせると、肺から心臓に戻ってくる血液が減ってしまい、全身に酸素を送れなくなってしまいます。その結果、冷や汗や失神などを起こす場合があります。
エコノミークラス症候群は最悪の場合、死に至る恐れのある病気です。特に、「肺血栓閉塞症」を起こした場合、10%程度の方は「発症後、数時間以内に亡くなる」と言われています。そのため、エコノミークラス症候群のことを、「軽い病気」だとは考えないほうが良いでしょう。
エコノミークラス症候群は脚の静脈内の血栓によって生じる病気ですが、この血栓はすぐにできるわけではありません。それではどのくらいの時間を要するのか確認しましょう。
エコノミークラス症候群では、実際に症状が現れるまでに時間を要します。一般的には「6時間以上脚を動かさずにいると、エコノミークラス症候群を発症する可能性がある」と考えられています。さらに、10時間以上脚を動かさずにいると、重症化するリスクが高いです。
エコノミークラス症候群の怖い点は、飛行機や長距離バスに乗った翌日以降にも現れる可能性があることです。この発症時期には個人差がありますが、一般的には「数日以内に発症することが多い」とされています。そのため、長距離移動を行った後に、脚の違和感がある場合は、早めに循環器内科や血管外科などを受診しましょう。
中にはエコノミークラス症候群を発症しても、全く症状が現れないケースもあります。また、脚だけに症状が出る場合、肺だけに症状が出る場合、その両方が出る場合など、症状の現れ方・重症度には個人差が見られます。そのため、脚の痛み、腫れ、むくみなどの症状が出ていない場合でも、飛行機などの中ではエコノミークラス症候群に注意してください。
もし飛行機や長距離バスを利用する場合は、「エコノミークラス症候群」に注意が必要です。簡単な予防法としては1~2時間ごとにトイレに行く、水分を摂る、屈伸運動をする、アルコールを避けるなどがあります。意識的にこれらの予防法に取り組んで、エコノミークラス症候群を予防していきましょう。
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