記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2019/2/20
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
血管の働きが低下すると、体の調子が悪くなるだけでなく、重篤な病気を招くことがあります。特に気をつけたいのが大動脈の状態です。この記事では、たくさんの臓器が集まるお腹のあたりで発生する「腹部大動脈瘤」について紹介します。
大動脈は人体の中で最も太い血管で、心臓から全身へと送り出される血液を運んでいます。横隔膜を境目にして、胸部大動脈と腹部大動脈に分かれます。
腹部大動脈が何らかの原因で部分的に大きく膨らむ病気を「腹部大動脈瘤」といいます。大動脈瘤のなかでも、最も発症頻度が高いのが腹部大動脈瘤で、正常な状態の腹部大動脈は直径20mmほどですが、瘤ができると30mm以上に膨らみます。血管内部の壁の弱くもろくなっている場所が、血圧の変化などによって圧迫され負担がかかった結果、膨らみが発生してしまいます。
腹部大動脈は4本に枝分かれしていますが、横隔膜から左右の腎臓へと分かれる分岐部あたりまでに瘤が発生することが多いとされます。みぞおちからへその辺りに異常が感じられたら、腹部大動脈瘤の可能性があります。
上記のなかでも加齢、高血圧、動脈硬化は腹部大動脈瘤の主な原因として広く知られていますが、特に原因の90%以上が動脈硬化です。
さらに、加齢に伴い発症率が上昇することもわかっています。腹部大動脈瘤の手術を受けた人の平均年齢は75歳で、発症者の年代別割合も、男女問わず70代が多く占めています。これは年齢を重ねるにつれて動脈硬化の発症率が上昇すること、血管がもろくなりやすいことが関係していると考えられます。
腹部大動脈瘤は自覚症状がほとんどありません。健康診断やほかの病気の検査を受診したところ、偶然発見されるケースが多くみられます。しかし瘤が大きくなると周囲の臓器が圧迫されるので、下記のような症状があらわれます。
瘤が破裂した場合、痛み、急激な血圧の低下、ショック状態、吐血、血便など激しい症状があらわれ、緊急手術を行います。しかし瘤が破裂してしまうと、命を落とすことが少なくありません。腹部大動脈瘤は、瘤が破裂する前に治療を行えたかどうかが、患者さんの生命を大きく左右してしまうことがあるのです。
腹部大動脈瘤は発症していること自体に気づきにくく、瘤が破裂すると非常に危険な状態を招くため、予防がとても重要です。加齢は避けることはできませんが、高血圧と動脈硬化は対策をとることができます。血圧を正常に保ち血管にかかる負担を軽くすること、リスク因子である動脈硬化を防ぐことがポイントになります。
瘤が破裂する前に腹部大動脈瘤を発症した場合、降圧薬などの服薬治療を行います。医師の指示に従って適切な量と服薬期間を守り、改善を目指しましょう。
腹部大動脈瘤の予防は、高血圧と動脈硬化に気をつけることから始めましょう。日々の生活習慣の改善をしながら、定期的に病院を受診し、危険な徴候を見逃さないようにすると安心です。
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