記事監修医師
東京大学医学部卒 医学博士
更年期のおもな症状のひとつに動悸があります。動悸とは、走ったり階段を登ったりなどしていないのに、息が切れたりドキドキしたりといった変化が現れる状態です。ただ、動悸にはさまざまな原因があります。この記事では、更年期になると動悸が起こりやすくなる理由と、動悸が起こったときに医療機関の受診が推奨される理由について解説していきます。
更年期になると、以下のような動悸・息切れが起こる場合があります。更年期にさしかかると、このような動悸・息切れが起こりやすくなりますが、これらの症状は、女性ホルモン・自律神経の影響で発生すると考えられています。
女性ホルモンは卵巣で分泌され、脳の視床下部が分泌をコントロールしています。更年期に入ると、卵巣の機能が衰えて女性ホルモンの分泌機能が低下または停止しますが、脳の視床下部は「女性ホルモンがうまく分泌されていない。もっと分泌しなければ」と分泌量を増やそうとします。すると、女性ホルモンを分泌できない卵巣と、女性ホルモンを分泌したい視床下部とで混乱が生じることで、自律神経のバランスが乱れます。自律神経は拍動・呼吸のコントロールに関係し、動悸・息切れなどの発症にも関わっています。
自律神経は、交感神経と副交感神経から成り立ちます。副交感神経は、体がリラックスしていたり、休息したりしているときに優位になる神経です。以下のように深呼吸をすると、副交感神経が優位になり緊張が和らいでリラックスへと促されます。更年期による動悸や息切れは、深呼吸を行うことで緩和する場合があるため、試してみてもいいでしょう。
動悸・息切れは、心臓・肺などの呼吸器・循環器系の疾患によって起こっている可能性があります。動悸・息切れに気づいたときは、まず医療機関を受診し、これらの疾患の有無を確認することをおすすめします。動悸・息切れがあるときは、心電図・心臓超音波検査・胸部X線検査などの検査が行われる可能性があります。
更年期による症状と認められると、ホルモン充填療法や漢方(桂枝茯苓丸、加味逍遥散、当帰芍薬散など)の処方などによる治療が検討されます。婦人科外来や更年期専門外来など専門クリニックもありますので、無理なく通院できる病院を選ぶと相談しやすいでしょう。なお、女性ホルモンの異常は神経面へ影響を与えることがあり、漢方・カウンセリングなどで緩和を試みたり、精神安定剤・SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)などが処方されることもあります。
走ったり、階段を登ったりしていない「安静時に起こる動悸や息切れ」は、更年期だけでなく、何らかの疾患が原因で起こっている可能性があります。適切な治療を受けるためには原因を特定する必要があるため、まずは医療機関を受診しましょう。なお、更年期により重い不調が現れると、日常生活に支障をきたすこともあります。早期受診は、更年期の症状緩和のためにも役立つ場合があります。
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