記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2020/9/23
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
夜寝つけない、眠りが浅い、イライラして落ち着かない、なんとなく不安な状態が続いているのは、もしかしたら全般性不安障害かもしれません。
今回は全般性不安障害と睡眠の悩みの関係性と治療法やセルフケアについて解説していきます。全般性不安障害は軽く考えられがちですが、長引くと回復までに時間がかかります。思い当たることがある人は参考にしてください。
毎日暮らしていくなかで、原因や対象がはっきししないような不安や心配を抱えている状態が続くと、心や体にさまざまな症状や変化が現れるようになります。「全般性不安障害(GAD)」は、「漠然と続く不安や心配」を持ち続けてしまう状態であり、そのことが原因で心身に不調をきたす病気をと言います。
不安障害とは、不安がおもな症状である心の病気のことです。不安障害には、はっきりとした事象が不安の原因になるもの、病気やトラウマや特定の物質が原因になるものなど、さまざまな種類があります。
パニック障害などのように「苦手な環境・状況」がある程度限定できる不安障害もありますが、全般性不安障害の不安の対象は、自身の体調や家庭環境や社会生活、家族・友人の死やトラブル、世界規模の戦争や天災にいたるまで「日常で起こるあらゆるもの」が対象になり、範囲がとても広いことが特徴です。
不安の対象がたくさんあるので常に落ち着かない状態になり、そわそわして目の前の物事に集中できなかったり、やらなければいけないことに手をつけられなくなってしまいます。食事や睡眠、外出など「簡単な日常行動」に支障をきたすようになると、生活の質が著しく低下し、仕事が続けられなくなってしまうこともあります。
「病気による不安」と自覚しにくく、不安や心配を抱え込んでしまうことをコントロールできないため発見や対処が遅れてしまうことも多いといわれています。
もし、いつも気持ちが落ち着かない、いつも不安を感じている、夜眠れない日が多いという状態が続くなら、全般性不安障害の可能性がありますので、一度専門の医療機関に相談してみることをおすすめします。
不眠症(睡眠障害)には、大きく以下の4種類があります。
全般性不安障害では、入眠障害や中途覚醒、熟眠障害が現れることが多いといわれています。いずれにしても、睡眠が浅くなり睡眠時間も不足しますので心身への負担は大きく、さらなる不調を引き起こすきっかけになることもあります。
全般性不安障害になると、以下の症状が現れます。
全般性不安障害は、強い不安が心身の症状を引き起こし、その心身症状がさらに不安を強めるという悪循環に陥りやすいです。
たとえ全般性不安障害でなくても、寝つきの悪さや何度も目覚めてしまうような状態、頭痛やめまい、手足の熱感、頻尿などが続くことは決して良いこととは言えませんし、何らかの病気が原因かもしれません。
あてはまるものがある場合は、早めに専門の医療機関に相談しましょう。
全般性不安障害の治療は、薬物療法と認知行動療法のいずれか、もしくは組み合わせて進めていきます。
体の緊張や不眠にはベンゾジアゼピン系の抗不安薬が使われ、を使い、継続的に繰り返す不安や心配ごとに対しては、抗うつ薬としてSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)が使われることが一般的です。
認知行動療法とは、カウンセリングをしながら「物事の受け止め方=認知」のゆがみを自覚し、認知への感情と行動を修正することで症状を改善を目指す治療法です。
具体的な治療目標を掲げ、その後の人生が不安から解放されたものになるよう、本人の考え方と行動のパターンを少しずつ変えていきます。
関連記事:不安神経症(全般性不安障害)を治すためにどんな薬を服用する?薬以外の治療法は?
睡眠障害が続くことは、心身の疲労を増大させ、全般性不安障害の症状を悪化および長期化させる原因になります。全般性不安障害の治療は継続しつつ、より良い睡眠をとれるようにするために、生活習慣を見直しましょう。
質の良い睡眠、寝つきを良くするためには、寝室の環境を整える必要があります。そのなかでも、部屋の湿度と温度は重要です。これは、快適な状態でなければ体温をうまく下げられなくなってしまうからです。
エアコンと加湿器、除湿器などをうまく使い、適切な温度湿度を保ちましょう。また、肌ざわりのよりパジャマや寝心地の良い寝具をそろえ、部屋の明かりは「自分自身が不安を感じない」状態に調整することをおすすめします。
リラックスできるようなら、アロマディフューザーやお香などを使っても良いでしょう。
質の高い睡眠のためには、眠りにつく2時間前までに軽めの運動をすることがおすすめです。ただし、激しい運動や眠りに着く直前の運動は、交感神経が刺激されて心と体が緊張し、寝つきが悪くなったり、睡眠の質が低下する原因になることがあります。
眠る直前には、簡単な体操や呼吸法を使ってうまくリラックスしましょう。
以下のように、仰向けになった状態で力を入れて緊張した後、思いっきり脱力すると筋肉がゆるみ、リラックスしやすくなります。
腹式呼吸を意識的に行うことは、副交感神経を刺激して眠りにつきやすい状態へと導くといわれています。
仰向けの状態で寝床に入ったら、以下のように腹式呼吸を行い、体を「睡眠モード」に切り替えましょう。
ヨガでは、息を吐き出すときに嫌なことやマイナスな感情もいっしょに吐き出すようにするとリラックスしやすいと考えられているようです。慣れないうちは、お腹をうまく使えているかどうか確認するためにお腹に手を当てながら行いましょう。
漠然とした不安を感じ続ける、イライラしやすい、気持ちが落ち着かない、夜なかなか眠れない状態が続くのは全般性不安障害かもしれません。全般性不安障害は「日常生活の当たり前の出来事」が発症につながるため、本人が自覚しにくく周囲の人からの理解も得にくいです。
また、全般性不安障害による不眠は、状態の悪化のスパイラルを引き起こし、さらなる心身の不調の原因になる可能性もあります。
気になる症状や変化に気づいたときは、「たいしたこない」と思ったとしても早めに専門の医療期間を受診し、もしうまく眠れていないようなら治療と並行して睡眠環境を見直すようにしましょう。