記事監修医師
前田 裕斗 先生
2017/8/22 記事改定日: 2018/9/11
記事改定回数:1回
記事監修医師
前田 裕斗 先生
妊娠中は胎盤から放出されるホルモンの影響もあり、血糖値が上がりやすい状態です。そ妊娠糖尿病になってしまうと、母体とおなかの赤ちゃんにもリスクが伴います。
この記事では、妊娠中の血糖値の下げ方と妊娠糖尿病の基準値や体への影響について解説しています。
妊娠糖尿病は、75gOGTTという検査を行って診断されます。これは、糖分を多く含んだサイダーのような飲料を飲み、一時間後と二時間後の血糖値を調べる検査です。通常では、飲料を飲んだ直後は血糖値が上昇しますが、時間が経過するにつれて血糖値は低下して正常値となります。
しかし、妊娠糖尿病では血糖値の低下が正常よりも遅く、高血糖が続く状態となるのです。このため、以下のような血糖値のどれかに該当する場合は妊娠糖尿病と診断されます。
また、妊娠中の糖尿病には、妊娠糖尿病だけでなく、妊娠前に糖尿病を患っており妊娠中の検査で発見された「妊娠中の明らかな糖尿病」と妊娠前からすでに糖尿病と診断されていた「糖尿病合併妊娠」があります。
「妊娠中の明らかな糖尿病」は、空腹時血糖値が126mg/dL以上またはHbA1c値が6.5%以上である場合に診断が下されます。また、「糖尿病合併妊娠」は妊娠前に糖尿病と診断されたことがある場合と、糖尿病の合併症のひとつである糖尿病網膜症がある場合に診断されます。
妊娠糖尿病になっても、多くははっきりした症状が現れません。
ただ、高血糖状態が続くと、次のような症状が現れることがあります。
しかし、上記の症状は高血糖でなくても妊娠中によく見られる変化です。
見過ごされてしまうことも多いので、不安がある場合はその都度担当医に相談することをおすすめします。
妊娠糖尿病で高血糖の状態が続くとおなかの赤ちゃんも高血糖になるため、次のような問題を引き起こす可能性があります。
また、妊娠糖尿病を発症すると、おなかの赤ちゃんも将来2型糖尿病を発症するリスクが高くなります。
妊娠糖尿病の人は、巨大児による難産や胎児の低血糖発作などを予防するためにも厳密な血糖コントロールが必要となります。
日本産婦人科学会が掲げる母体の血糖の目標値は、空腹時血糖が95mg/dL以下、食後二時間後血糖値が120mg/dL以下、またHbA1cが6.2%以下とされています。
適正な血糖値を維持するためには、薬物療法・食事療法・運動療法が必要となります。まずは食事療法や運動療法を行って血糖コントロールを行いますが、効果がない場合には速やかに薬物療法が行われます。
薬物療法は、血糖値を下げる飲み薬が胎児に影響を与えることが分かっているため、インスリン注射を行う必要があります。妊娠前から糖尿病と診断されていた人で、飲み薬による治療を行っていた場合でもインスリン注射に切り替える必要があります。
また、薬物療法と並行して摂取カロリーを標準体重×30+200kcalに抑えたり、適度な有酸素運動を行って体重管理を行うことも大切です。食事療法や運動療法は、妊婦さんそれぞれの状況によってやり方も異なるため、必ず医師や管理栄養士の指導を受けて行うようにしましょう。
妊娠中は血糖値が上がりやすい状態です。妊娠糖尿病の大半は出産後に改善しますが、妊娠中に高血糖の状態が続くと母体ばかりかおなかの赤ちゃんにもリスクがあります。
医師の指示のもと生活習慣を見なおし、食事や運動にも気をつかい、体重を管理しながら血糖コントロールを努めましょう。
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