記事監修医師
東京大学医学部卒 医学博士
手首の関節や手の甲にいつの間にか小さなコブができたなら、それはガングリオンかもしれません。
ここではガングリオンの原因や症状、治療法について解説します。
ガングリオンとは手首の関節などにできる良性の腫瘤(しゅりゅう:体の表面や内部にできたかたまり、しこり)のことで、関節の周辺に米粒からピンポン玉くらいまでの大きさの隆起ができます。
皮膚の表面には変化がなく、通常、しこりは皮膚の下に現れます。硬さは柔らかいものから硬いものまでさまざまであり、硬いものができた場合は骨が出てきたように勘違いするかもしれません。ガングリオンはゼリー状の物質が溜まってできたもので、それ自体が痛みやかゆみを感じることはありません。ただし、ガングリオンによって神経が圧迫されると、痛みを感じることがあります。
ガングリオンは手首や手の甲にできることが多いですが、中には指の付け根や膝、肘など様々な部位にできる可能性があります。
ガングリオンは関節包の一部が膨らんで、その中にゼリー状の物質が溜まった腫瘍です。このため、全身の様々な関節に生じる可能性が考えられます。また、ガングリオンには関節包が変性したものだけでなく、粘液が変性したものが固まってガングリオンを形成することもあり、稀に骨や神経、筋肉などにできることもあります。
ストレスが引き起こした血行障害により、たまった老廃物がガングリオンをつくるという説もありますが、医学的に認められた説ではありません。
ガングリオンが発症する原因は、実はまだはっきりとは解明されていません。関節を過度に使ったときに、関節液や滑液が袋状の組織に送られ、それがゼリー状にたまって濃縮されてできるという説がありますが、完全に証明されていません。
手を壁やドアなど硬いところにぶつけたりしたときに、衝撃から身を守るためのクッションとして形成されるという説もありますが、ガングリオンは柔らかいものだけでなく、硬いガングリオンもあり、関節の奥にできる小さなものもあるので、この説がすべてに当てはまるわけではないでしょう。
このように、形成される原因が特定されていないため、根本的な治療法や予防策がないのが現状です。
関節や腱鞘(けんしょう)の周辺にできた場合は、痛みやかゆみなどの自覚症状を感じないことがほとんどです。しかし、神経や血管のそばにできた場合、神経を圧迫してしびれや痛み、むくみ、運動麻痺などを起こすことがあります。
また、関節の深い部分に小さなガングリオンができてしまった場合は、MRI検査をしないと見つからないこともあります。その場合は、手首の原因不明の痛みとして、ガングリオンの発生を自覚することが多いようです。
発生したしこりが本当にガングリオンであり痛みなどの症状がなければ、特に問題はないでしょう。ただ、できたしこりがガングリオンではなく、悪性腫瘍の可能性もあります。したがって、まずは医師を受診し、しこりの検査をしてもらいましょう。その結果、しこりがガングリオンであり無症状であれば、放置しておいてかまいません。ほとんどの場合、自然消滅するといわれています。ただし、大きいサイズのものや神経圧迫による痛みを感じる場合は治療が行われることもあります。
治療法は、注射針による中身の吸引がメインとなりますが、神経の圧迫がひどく、運動障害を生じている、もしくは液体を何度抜いても再発してしまう場合には、手術をすすめられることもあるでしょう。
ガングリオンはサイズが小さなものや大きな症状がない場合では、注射でガングリオンの内容物を吸引する治療が行われます。注射による吸引は体に負担が少なく、簡単に行える治療ですが、ガングリオンを形成する嚢胞の膜自体は体内に残るため、再発を繰り返しやすいというデメリットがあります。
このため、再発を繰り返す場合や、強い症状がある場合、サイズが大きい場合などには、ガングリオンを嚢胞ごと取り出す手術が行われることがあります。
手術では、嚢胞の膜ごと完全にガングリオンを摘出するため、再発は注射での吸引よりもはるかに少ないです。しかし、再発を完全に防ぐことはできず、手術を行ったとしても再発してしまうケースもあります。万が一再発したとしても、なるべく早期に治療を始めた方が緩解する可能性が高いですので、違和感を覚えた場合にはなるべく早めに整形外科に相談するようにしましょう。
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