記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/10/31 記事改定日: 2020/7/2
記事改定回数:2回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
脳卒中や交通事故を原因とする高次脳機能障害では、日常生活に影響を及ぼすことがあります。症状を完全に治すことは難しいといわれていますが、患者さんの社会復帰は可能です。社会復帰のためには、症状にあわせた適切なリハビリが必要になります。この記事では、高次脳機能障害のリハビリのやり方や家族がどんな協力をして行うことができるか詳しく解説しています。
脳に損傷を負い、低下してしまった高次脳機能の改善は可能です。多くの場合、受傷・発症後1年程度の時期までは著しい回復が認められるとされています。
ただし、その後は改善のスピードが鈍り、受傷・発症後2年程度経過するとほぼ症状が固定してしまうといわれています。しかし、完全な回復は困難でも、適切なリハビリテーションを経て社会へ復帰することは可能です。
高次脳機能障害のリハビリは、現れている症状や障害に合わせて行われます。
記憶障害とは、事故や病気の前に経験したことが思い出せなくなったり、新しい経験や情報を覚えられなくなった状態をいいます。
新しいことを覚えるためには、一度に覚える情報を少なくして、五感を活用し、反復・復習を重ねることが重要です。その際は、誤りをおかさないように正しいことを繰り返し行う練習方法が効果的とされています。
環境づくりも大切です。いつも使う物は置く場所を決めて、使ったら戻す習慣をつけましょう。大切な約束や予定は目に付く場所に書いておくようにし、行動はパターン化して、日課通りに行動するようにしてください。
情報を記録する媒体の一例として、ホワイトボードやICレコーダーなど、行動の開始を助けるためにタイマー、目覚まし時計などを使うといいでしょう。スケジュール管理のためには、スケジュール帳、携帯電話のスケジュール機能などがおすすめです。
注意障害とは、周囲からの刺激に対し、必要なものに意識を向けたり、重要なものに意識を集中させたりすることが上手くできなくなった状態をいいます。また脳損傷の反対側の空間において刺激を見落とすことをはじめとした半側空間無視が見られます。
リハビリ時には、注意散漫にならず集中するための工夫が重要です。一度に多くの作業を求めず、一つ一つ行い、集中する時間を少しずつ延ばしていくように指導しましょう。また、興味のあることやなるべく簡単な作業から始めることも大切です。
その他、何か行うときは静かで整理整頓された環境で行うようにしましょう。注意を向けさせるための対策も有効です。部屋の入口や生活の動線に目印をつけたり、作業の手順を段階的に示した手順表を利用する、といった工夫をするようにしてもいいでしょう。
社会的行動障害は、行動や感情を場面や状況に合わせて、適切にコントロールすることができなくなった状態をいいます。
リハビリのときには、やる気がない本人に対し、直接「怠けている」と指摘せず、するべき活動や仕事のチェックリストを作って、具体的な方向性を示すようにします。自分の障害に気づかない場合は、できないことばかり列挙せず、できたことを褒めるようにします。
また感情のコントロールが効かない場合は、不適切な行動を感情的に怒ったり叱ったりせず、はっきり指摘するようにします。興奮している時は無理やり鎮めず、席を離れたり話題を変えたりすることも大事です。行動がコントロールできないときは、何かを始める前に立ち止まって考える習慣をつけさせることも有効とされます。
遂行機能障害は、ある目的を持った事柄を成し遂げるために様々な行動をする能力が欠如する状態をいいます。具体的には、目標を決めて計画を立て、その計画に沿って様々な行動をする一連の動作が円滑に行えなくなる状態です。
リハビリでは、パターン化された行動を繰り返し行う中で、徐々にその他のことを行うことができるように訓練していくことが大切です。また、その訓練の中でミスが生じた場合は、否定するのではなくその部分を介助していきます。
ある程度パターン化された行動にミスが生じなくなった場合は、目標や計画を立てる訓練を行い、その都度フィードバックして問題点を探っていくのも効果的とされています。
高次脳機能障害では、怒りっぽくなる・常にイライラしているなど性格の変化が生じやすく、注意力や集中力の欠如によってさまざまなミスが起こりやすくなります。
このため、家族を始めとする周囲の人は、患者に振り回されることが多く、日常生活にも大きな影響を及ぼします。
しかし、高次脳機能障害はさまざまなリハビリを重ねることで、ある程度は症状を改善することも可能です。
ただし、リハビリは、日常生活の中でも患者の状態に合わせて行う必要があります。このため、周囲の人は病気の性質をよく理解し、患者を責めることなく焦らずに寄り添ってリハビリを進めていくことが大切です。
高次機能障害を発症すると、上でも述べた通り日常生活に大きな支障をもたらすケースも多いため、周囲の方の適切なサポートが必要となります。以下のように、国や自治体にも様々な支援制度があるので、積極的に活用するようにしましょう。
高次脳機能障害の症状は人によって異なり、必要なリハビリも違ってきます。周囲の環境を整えたり、リハビリや対応の仕方を工夫するなど、家族や周囲の人は積極的にサポートしながら日常生活へ対応できるように導いてあげましょう。
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