記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/11/13 記事改定日: 2020/8/31
記事改定回数:4回
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MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
ベーカー嚢腫とは、膝の後ろ側の滑液包に水が溜まり膨らんでしまう状態です。膝が曲げにくくなり日常生活に支障をきたすことがあります。この記事ではベーカー嚢腫の基礎知識やマッサージ方法について紹介しています。
ベーカー嚢腫とは、膝の後ろにある滑液包といわれる袋で炎症が起こり、その袋に水が溜まることにより生ずる腫瘤です。
これらの症状がある場合は、放置せずに整形外科を受診しましょう。ただし、必ずしも症状が伴うわけではありません。50歳代以降の女性に多いですが、4歳から7歳の子供に発症することもあります。
滑液包は、関節にある少量の液体(滑液)を含んだ袋で、皮膚、筋肉、腱、靭帯などと骨がすれる部分に位置し、摩擦を軽減させる働きがあります。
さまざまな関節の近くに存在し、膝関節には10数個の滑液包があるといわれています。滑液包に水が多く溜まってくると、内圧が高くなって強い痛みが生じたり、周囲の静脈に炎症を起こして腫瘤ができたりすることがあります。
ベーカー嚢腫を引き起こす疾患として、変形性膝関節症、関節リウマチ、痛風といった疾病があり、二次的に滑液包炎を起こしやすくなります。
ベーカー嚢腫は、まれに嚢腫の内圧が上昇することで破裂し、嚢腫内に溜まっていた液体が周辺の組織や血管に広がって炎症を引き起こすことがあります。また、嚢腫が大きくなると膝の裏にある膝窩静脈を圧迫して血管炎を引き起こし、血栓症などの原因になることもあるため、適切な治療が必要です。
ベーカー嚢腫がある人で、片方の下腿に突然の痛みや腫れ、発赤が見られたときは注意が必要です。速やかに病院へ行きましょう。
ベーカー嚢腫は、特に症状がなければ治療の必要はありません。ただし、膝関節の可動域制限や痛みなどがある場合には注射器で内容物を吸引する治療を行います(穿刺)。
一回の穿刺で症状が収まることもありますが、数日で再発を起こすことも多く、再発を繰り返すようなら炎症を抑える注射や飲み薬を用います。強い症状がなければ、時々穿刺を繰り返しながら経過を見ていくことになるでしょう。
ベーカー嚢腫は上述した穿刺による治療以外にも、ステロイドを嚢腫に注射する薬物治療が行われることがあります。ステロイドには嚢腫を縮小させたり、さらなる拡大を防いだりする効果があるとされています。
また、ベーカー嚢腫は激しい運動時などに破れて痛みを引き起こすことがあります。そのような場合には、炎症と痛みを鎮める作用のある注射を行うこともあります。
関連する膝関節炎がみられる場合には治療が行われます。手術が行われることは多くありませんが、痛みが非常に強い場合などには外科的手術で嚢腫を切除することもまれにあります。また嚢腫がさらに大きくなり、静脈閉塞を引き起こすような場合も外科的処置が必要になります。
バーカー嚢腫はリンパマッサージなどでうっ滞していたリンパ液の流れが改善し、縮小することもあります。一方、間違ったマッサージを行うと嚢腫の内圧を高めたり、嚢腫を直接圧迫してしまうことで嚢腫の破裂を引き起こすことがあります。
自己流でのマッサージは大変危険ですので、ベーカー嚢腫が疑わしい症状や腫瘤がある場合は整形外科を受診して適切な検査・治療を受けるようにしましょう。
ベーカー嚢腫は、痛みがなければ必ずしも治療を必要としません。状態によっては嚢腫の穿刺や手術で摘出するケースもあります。マッサージが効果的とされますが、自己流でマッサージすると嚢腫が破裂するおそれもあるので、必ず整形外科を受診して適切な治療を受けるようにしましょう。
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