急性心膜炎の症状の特徴とは!?治療はどうやって進められるの?

2017/11/28 記事改定日: 2018/12/6
記事改定回数:1回

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

急性心膜炎とは、心臓を包んでいる心膜に急性の炎症が起こることで発症します。胸の痛みや息切れなどが症状として現れますが、急性心膜炎の原因や治療にはどのようなものがあるのでしょうか。
急性心膜炎の基礎知識を紹介していくので、気になる症状が現れたときの参考にしてください。

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急性心膜炎とは、どんな病気?

心臓は二重の袋状の心膜に包まれています。包んでいる心膜のことを心嚢とよび、心嚢はリンパ組織としての役割と心臓運動の摩擦を軽減する役割を果たしていて、心膜の間には心嚢液が存在し、潤滑油の役割をしています。

何らかの原因でこの心嚢に炎症が発生することで心膜炎が起こります。

急性心膜炎は、心臓を覆う心膜に急性の炎症が起こる症状のことです。胸痛や息切れが起こり、さらに悪化すると体を動かすことも難しくなります。
また心タンポナーデという状態が急速に進行し、心臓の拡張が極度に制限されて心拍出量が低下し、血圧低下やショックに進展する場合があります。

原因疾患の治療がベースになりますが、再発の確率は20%程度といわれます。

心タンポナーデとは

心タンポナーデとは、心臓を包む心膜に液体が貯留することで、心臓が圧迫される病気です。心臓が圧迫されることで、正常な拍動運動を行うことができず、心拍出量や冠動脈への血流が低下し、ショックや心停止など重篤な状態を引き起こします。

心内膜炎による心タンポナーデは、心膜の炎症によって生じる漿液が急激に心膜内に溜まることで発症することが多く、突然の意識消失や血圧の低下などを引き起こすのが特徴です。

急性心膜炎を引き起こす原因とは

急性心膜炎の原因は、心膜に炎症を与える感染症やその他の病気です。
感染症の場合は、インフルエンザウイルスなどのウイルスが主とされていますが、細菌や原虫を含む寄生虫、真菌が引き起こしていることもあります。

また、エイズ、結核や肺がんなどの悪性腫瘍、膠原病(全身性エリテマトーデス)、心臓手術、発作、腎不全、外傷、リウマチ熱、甲状腺機能低下症、放射線療法なども要因として挙げられますが、突発性で原因がわからない場合もしばしばあります。

急性心膜炎の症状とは?前屈みになると楽になる!?

急性心膜炎の主な症状は、胸痛と呼吸困難です。痛みは首や左肩、左腕にまで広がり、30分以上持続します。

深呼吸や横向きに寝るとこの痛みは強まりますが、前屈みになったり座ると痛みが軽くなる傾向があり、心筋梗塞の胸痛との識別に役立ちます。呼吸困難は、呼吸により増す胸痛を軽減するために浅く速い呼吸となるために起こる症状です。

感染による場合は38度前後の発熱と発汗、悪寒、倦怠感なども現れ、進行していくと血圧低下や意識低下などを起こすおそれもあります。

また心タンポナーデを発症すると、頻圧、血圧低下、意識障害、ショック症状などが現れます。

なぜ前屈みになると症状が軽くなるの?

感染性心膜炎は、前屈みの姿勢をとると症状が軽くなることがあります。

これは、前屈みになることで心臓と他の臓器との間にスペースができるためです。心膜には多くの神経が分布しているため、炎症を生じると神経が刺激に対して過敏になります。このため、周辺の臓器が触れると強い痛みを生じますが、スペースができることで痛みが軽くなるのです。

また、前屈みの姿勢になると心臓と心膜の間のスペースも広がり、液体貯留などで圧迫されていた神経の痛みが和らぐことも考えられます。

急性心膜炎の治療法

入院治療を原則とし、胸痛や発熱などが消退するまでの期間は、しっかり安静を保ちます。この期間内に原因疾患を調べて治療方針が策定されます。
治療は、炎症に対する治療と、原因疾患に対する治療、心タンポナーデに対する治療の3つに分けて行うのが通常です。

胸痛の治療には、アスピリンやインドメタシンなどの非ステロイド消炎鎮痛薬を使用され、原因疾患に対しては、抗生物質や抗結核薬、抗腫瘍薬などを使用されます。

心タンポナーデを伴う重症のケースでは、治療と原因検索のため、心嚢液のドレナージ(チューブを挿入して排液する)が必要です。心タンポナーデが現れる場合は、急速に症状が進行している状態のため、命にかかわることもあり、原因が心筋梗塞や解離性大動脈瘤の心嚢内破裂などの場合には、緊急手術が必要なケースもあります。

おわりに:急性心膜炎が発症すると命に関わる危機状態に!

急性心膜炎は、発症すると急激に進行し、命にかかわる状態にもなります。風邪のような症状と併せて胸痛や息切れが出ることが多いので、このような症状があるときは医療機関を受診するようにしましょう。

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