記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/12/5 記事改定日: 2018/11/29
記事改定回数:1回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
がんの一種として知られる「肺がん」ですが、肺がんを発症するとどんな症状が出るのでしょうか。また、タバコ以外に原因はあるのでしょうか。
以降で解説していきます。
肺は、呼吸によって酸素を体内に取り込み、二酸化炭素を体外に排出する呼吸器官です。この肺にある気管や気管支、肺胞などの細胞の一部が何らかの原因によってがん化してしまったものを肺がんといいます。
肺がんには、比較的小さな細胞が密集して広がっている小細胞肺がんと、それ以外の非小細胞肺がんがあります。
小細胞肺がんは肺の入口付近に出来ることが多く、転移しやすいのが特徴です。
一方の非小細胞肺がんには、腺がんや扁平上皮がん、大細胞がんといった種類があります。
腺がんは肺の奥の方に発生することがほとんどで、初期症状は出にくいとされています。扁平上皮がんは肺の入口近くに発生することが多いがんです。大細胞がんは増殖するスピードが速いのが特徴です。
肺がんは、肺の細胞の遺伝子が傷つくことによって変異して、がん化することが原因と考えられています。遺伝子に傷がつく原因には遺伝的な要因もありますが、最も大きな原因とされているのは喫煙と受動喫煙です。
普段からタバコを吸う人は、吸わない人に比べてがんになるリスクが高いというデータがあります。また喫煙期間が長く、喫煙本数が多いほどがんになる確率も高くなります。
ただし、がんの種類によってタバコの影響には差があります。扁平上皮がんや小細胞がんの場合には患者のほとんどが喫煙者ですが、それ以外の肺がんの場合には非喫煙者も多くいます。また他の臓器のがんが肺に転移したことによって肺がんになることもあります。
肺がんにはがん細胞の組織によっていくつかのタイプに分けられます。肺がんのタイプによっては、喫煙・受動喫煙が発症に大きく関与しているケースもありますが、それほど喫煙・受動喫煙の影響を受けないタイプのものもあります。
タバコ以外の肺がんの原因としては以下のものが挙げられます。
肺がんになると、息切れや息苦しさといった呼吸困難の症状が現れ、階段を上ったり運動などをしたときに出やすくなります。
それ以外にも咳がひどくなることもありますし、痰が出やすかったり痰に血が混じったり、胸に痛みを感じたり、体重が減ってしまうといった症状が現れることもあります。
ただし、肺がんは初期の段階だと症状が出にく、息切れや息苦しさといった症状が出ていても加齢や運動のせいと考え、医療機関を受診するほどではないと思ってしまう人も少なくないでしょう。
咳が長引いているような場合でも風邪と考えてしまいがちなので、見過ごされてしまうこともあるので注意が必要です。
肺がんの治療法には、外科療法(手術)や放射線治療、化学療法などがあります。
外科療法(手術)は肺にできたがんを全て取り除くことを目的に行う治療法です。切除する範囲が大きいと息切れなどの症状が悪化してしまうことがあるので、他の治療法を選択することもあります。
放射線治療は放射線がん細胞に照射して数を減らしていく治療法のことをいいます。そして化学療法は抗がん剤を服用して、がん細胞の増殖を抑える治療法です。
どの治療法が良いかは、がんの進行状況や副作用の現れ方などによって異なります。治療法にはメリットやデメリットがあるので、医師とよく相談して納得のいく治療法を選択することが重要になります。
肺がんの診断に必要な検査には以下のようなものがあります。
X線(レントゲン)やCTなどによる画像検査で肺に存在する腫瘍を発見することができます。しかし、画像検査だけでは、腫瘍が良性か悪性かを区別することはできません。
また、腫瘍が多発している場合には、他の臓器へ転移している可能性や、他の臓器に生じたがんが肺に転移した可能性もありますので、PET-CT検査などで全身状態のチェックが必要になるケースもあります。
気管支鏡検査は、内視鏡を口から気管、気管支に挿入して肺の内部を直接観察する検査です。一般的には、画像検査で肺腫瘍が発見された場合に、その部位にめがけて気管支鏡を挿入し、病変組織の一部を採取して病理検査を行います。気管支鏡の挿入が困難な部位では、生理食塩水で気管支内を洗浄し、その洗浄液にがん細胞が含まれていないか調べる検査が同時に行われます。
気管支鏡検査が行えない場合、体表から腫瘍に針を刺して組織を採取したり、胸腔鏡を用いて採取して病理検査を行うことがあります。いずれも体への負担が大きいため、慎重に実施の検討がなされる検査です。
補助的な検査として、血液検査によって腫瘍マーカーを調べることがあります。腫瘍マーカーとは、ある種のがんがあると体内で大量に産生される物質であり、がんの存在を示唆する指標となります。肺がんが疑われる場合には、CYFRA21-1、CEA、CSS、SLX,CA125などが調べられます。
肺がんの診断にはさまざまな検査が必要となりますが、一般的には、画像検査で肺腫瘍を発見し、気管支鏡検査を行います。気管支鏡検査が上手く行えない場合には針生検や胸腔鏡検査が行われることもありますが、負担が大きな検査ですので年齢や病状などを考慮して実施の可否が検討されます。
肺がんの発症には喫煙習慣が大きくかかわっていますが、肺がんのタイプによってはそれ以外の要因で発生することもあります。いずれにしても、息切れや咳、血痰など気になる症状がみられたら、早めに病院で検査を受けることをおすすめします。
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