記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/12/21 記事改定日: 2020/3/25
記事改定回数:2回
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MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
横紋筋融解症とは、心臓の筋肉である横紋筋が壊死し、その成分が血液中に流出してしまうことです。この記事では、横紋筋融解症の症状や治療やリハビリの注意点について解説していきます。
横紋筋には、体を形成する骨格とともに腕や脚などの動きをつくりだす骨格筋と、心臓を形成する心筋とがあります。横紋筋融解症とは、この横紋筋が融解または壊死してしまい、筋細胞の成分が血液中に流出してしまうことです。
原因には外傷性のものと非外傷性のものがあります。
横紋筋融解症は、横紋筋が壊れることで筋肉に炎症が起こり、痛みやしびれ、全身の倦怠感などの症状が現れるほか、筋力の低下も招きます。
これらの初期症状は風邪や運動時の筋肉痛とあまり変わりがありませんが、横紋筋融解症では筋肉から流出したミオグロビンという赤色の物質が尿に混じるために、赤褐色の尿が出る症状が特徴的に見られます。
このミオグロビンは、大量に流出すると尿細管にダメージを及ぼしてしまいます。そのため症状が急速に進行すると急性腎不全を引き起こしたり、さらには多臓器不全を併発して死に至ってしまうこともあります。
横紋筋融解症は、薬の副作用で発症することがあります。
副作用が生じる薬剤のなかで、最も一般的に飲まれているのは、脂質異常症の治療薬であるスタチン系の薬剤です。これらはLDLコレステロールを低下させる作用がありますが、どのように横紋筋融解症を引き起こすのかは明確には解明されていません。
また、同じく脂質異常症の治療薬であるフィブラート系の薬剤も、横紋筋融解症を引き起こすことが知られています。
その他、抗精神病薬や抗パーキンソン病薬などは急激な薬剤の減量や中止によって横紋筋融解症を引き起こすことがあり、精神症状や意識障害、高熱、頻脈などを同時に生じる「悪性症候群」を発症して死に至ることもあります。
これらの薬を飲んでいる人は、必ず医師や薬剤師の指導通りに服用を続け、自己判断で減薬・断薬しないようにしましょう。
また、クラビット®をはじめとするニューキノロン系の抗生物質は、NSAIDsと呼ばれるタイプのロキソニン®などの解熱鎮痛薬と併用することで横紋筋融解症を発症することがあるので注意が必要です。
薬には様々な相互作用があり、横紋筋融解症のような重篤な副作用を生じるケースもあるため、安易に自己判断で残った薬を服用せず、病院を受診して医師から適切な薬を処方してもらうようにしましょう。
横紋筋融解症は脱水状態に陥るため、治療の基本は脱水を補正することが大切です。軽症の場合、脱水の補正は水分を摂取するだけで十分なこともあります。しかし、中等度以上の場合は点滴が必要になり、入院治療となることも少なくありません。
また、ミオグロビンの影響で尿が酸性になることで尿細管にダメージを与えるため、尿をアルカリ化する薬も使用されます。
一般的にはこれらの治療を続けることで症状は改善していきますが、腎臓の機能が著しく悪い場合は一時的に人工透析をすることがあります。
横紋筋融解症は、症状の度合いによっては筋力の低下や麻痺症状のために日常生活動作に支障が出てしまい、普段の生活に介助が必要になる場合も出てきます。
その際はリハビリが必要になりますが、リハビリ中に筋細胞が回復しようとしている段階で筋肉に負荷が加わってしまうと、筋肉内のエネルギーが不足するケースがあるため注意が必要です。リハビリは、症状の程度に合わせて、負荷量を十分に考慮して行う必要があります。
また、患者は重症化への不安に加えて、こうした日常生活動作に対するストレスも抱えることが想定されるため精神的なケアも大切です。
横紋筋融解症は、初期段階では風邪の症状や筋肉痛と見分けがつきにくい場合もあるかもしれません。しかし重症化すると急性腎不全、多臓器不全を引き起こし、死に至ることもある重篤な疾患です。尿が赤褐色になるなど、横紋筋融解症と疑われる症状が出た場合にはすぐに病院を受診してください。
※抗菌薬のうち、細菌や真菌などの生物から作られるものを「抗生物質」といいます。 抗菌薬には純粋に化学的に作られるものも含まれていますが、一般的には抗菌薬と抗生物質はほぼ同義として使用されることが多いため、この記事では抗生物質と表記を統一しています。
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