記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/1/19 記事改定日: 2018/11/21
記事改定回数:1回
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MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
ピロリ菌は胃潰瘍や胃がんなどの原因として知られている細菌ですが、ピロリ菌の感染経路をご存知でしょうか。
この記事ではピロリ菌の感染経路について解説しています。親から子供への感染のリスクについても紹介しているので、子供がいる人や妊娠の予定がある人はとくに参考にしてください。
正式名称は「ヘリコバクター・ピロリ菌」で、胃の粘膜に棲み着くことができる細菌です。
1979年に人間の胃の中で発見され、1982年に人工的な培養に成功した、医学的な知見としては比較的新しい細菌といえます。
普通の細菌であれば、胃酸の影響で死滅してしまいますが、ピロリ菌は自分の周囲にウレアーゼという酵素を発散して、胃粘膜の中にある尿素を分解することによって、アンモニアのバリアを張り、胃酸を直接浴びないようにできるのです。
また、鞭毛を回転させて、胃粘膜を自由に移動することができます。
ピロリ菌が感染する場合、ほとんどは幼少期での感染となります。空気感染はしませんが、げっぷの中にピロリ菌がいる場合もあります。
ピロリ菌は胃がんや胃潰瘍の原因となる細菌です。
ピロリ菌が自分の身を守るバリアとして発散させているアンモニア成分は、胃の粘膜に炎症を起こします。それが長い間にわたって続くと、粘膜が弱っていき、さらに高血糖や喫煙習慣、ストレスなどが加わると、粘膜の炎症が胃潰瘍や胃がんに進展していくのです。
日本人は、ピロリ菌が原因の胃がんが特に多いといわれていますが、これは日本で棲み着いているピロリ菌は特に強毒性であることが原因と考えられています。
胃にピロリ菌を保有していない人でも胃がんになる可能性はありますが、ピロリ菌がいる胃では、発がんリスクが約15倍にまで増加するといわれています。
また、胃MALTリンパ腫、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、機能性ディスペプシア(FD)も、ピロリ菌が原因で発症することがあります。
母子感染は、「胎内感染」「産道感染」「母乳感染」の3種類がありますが、ピロリ菌の感染はそのいずれにもあたらず、口を通って胃に届く「経口感染」となります。
厳密には母子感染ではありませんが、母親が噛みくだいた食べ物を口移しで子供に与えたり、親が子供にキスをしたりすることで感染することが多いので、ピロリ菌も広い意味では母子感染するといってもいいかもしれません。
いずれにしても、ピロリ菌は、親から子供への感染が大半であることは事実です。
子供への感染を防ぐために、口と口でキスをしたり、自分が咀嚼した食べ物を与えたりすることを避けるようにしましょう。
また、井戸水を日常的に飲むと感染のリスクが高まるといわれています。
なお、妊婦ご自身がピロリ菌に感染しているかは、呼気中に尿素が含まれているかを検査することで知ることができます。
ピロリ菌は、不衛生な井戸水などに潜んでいるほか、感染者の唾液や便にも含まれています。このため、感染者の唾液や便を介してピロリ菌が体内に入り込むことがあります。
しかし、ヒトには強い免疫作用が備わっているため、健常な大人ではピロリ菌が胃内に入り込んだとしても死滅して感染が成立することはまずありません。子供など免疫力が未熟な場合には唾液や便を介して感染してしまう可能性はありますが、成人ではキスや性行為などで感染することはないと考えてよいでしょう。
しかし、発展途上国の生水には大量のピロリ菌が含まれていることもあり、感染が成立してしまうことがあります。また、ピロリ菌以外にも様々な細菌やウイルスが含まれている可能性がありますので、海外旅行では生水を飲まないように注意しましょう。
ピロリ菌は、体調3~5マイクロメートルほどの大変小さな微生物ですが、人間におよぼす影響は大きく、発がん性もあります。
子供にうつしてしまうと大変ですが、感染経路は「経口」に限定されていますので、子供への感染予防は比較的容易です。子供時代の感染予防がポイントになるので、感染をさせないように注意しましょう。
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