記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/3/14 記事改定日: 2018/12/24
記事改定回数:1回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
特に食べ過ぎたわけではないのに、胃もたれや吐き気、胃痛がするという場合、「機能性胃腸症(機能性ディスペプシア)」の可能性があります。
機能性胃腸症は、薬物治療による対症療法を中心となりますが、完治を目指せるのでしょうか。
機能性胃腸症は、胃カメラや血液検査などをしても胃粘膜のただれや潰瘍などの異常がみられないのに、胃に痛みが出たり、腹部膨満感や吐き気・嘔吐、食欲不振や胃のもたれなどの症状が起こり、それが一年間で合計12週以上続く状態のことです。
実は、日本人の4人に1人が機能性胃腸症の代表的な症状を訴えているとされ、3人に1人が病院で診察を受けており、そのうち約半数の人が実際に機能性胃腸症と診断されているといわれます。
しかし、患者数が多い身近な病気のわりに、胃潰瘍や胃がんに比べると日本では病名の認知度が低いままというのが現状です。
機能性胃腸症は
の3タイプがあります。
いずれも代表的な症状は胃の痛みで、腹部膨満感・吐き気・食欲不振・胃もたれ・胸やけを感じる場合が多いです。
機能性胃腸症の原因は明確にはわかっていませんが、運動不全型の機能性胃腸症の場合は、胃の運動機能が低下して胃内容物の排出が遅れることや、知覚神経が過敏になったり胃酸が出過ぎることなどが原因として挙げられます。
その状態になったところに食べ過ぎや飲み過ぎ、脂っこい食事の摂り過ぎやストレス等が加わることで発症すると考えられています。
また、潰瘍型や非特異型では運動不全型の発症原因に加えて心理的な要因の影響が強いとされ、ストレスが一番の引き金となり、胃酸の過剰分泌が起こったり胃のぜん動運動が活発になり過ぎたりして症状が起こると見られています。
機能性胃腸症の診断にあたっては、胃粘膜に器質的変化が無いことを確認するための検査が行われます。
病歴や症状についての問診や、血液検査、胸腹部レントゲンや内視鏡、超音波によって胃の運動機能などを見たり、便潜血といった検査が症状に合わせて選択されます。症状によっては、心理的要因について詳しく調べる心理テストが行われることがあります。
機能性胃腸症の代表的な治療法は薬物療法で、種類にあわせた薬が投与されます。
運動不全型には、低下した胃腸の働きを活発にする運動機能改善薬が、潰瘍型では胃酸の分泌を抑えて刺激を防ぐ胃酸分泌抑制薬が、心理的要因が発症に大きく関わる非特異型の場合は運動機能改善薬に加えて不安や緊張を和らげる抗不安薬などが投薬されます。
薬物療法によって症状改善が見られれば、機能性胃腸症としてさらに治療が続けられますが、機能性胃腸症を発症させる要因となった食生活の乱れを改善させることも重要になります。朝食を抜かずに規則正しい時間に食事を摂り、よく噛んでゆっくりと食べて一度に食べ過ぎないことも大切です。また、脂肪の多い食品や固くて消化が悪いもの、刺激の強い香辛料を避ける必要もあります。
そして、ストレスの発散や睡眠時間の確保も重要です。睡眠不足だと夜間に胃酸の分泌が促進されてしまうため、平均7~8時間の睡眠時間を確保し、ウォーキングや軽いジョギングといった有酸素運動で血行促進を図りつつストレス発散を心掛けるようにしましょう。
機能性胃腸症は、胃もたれや胃痛、吐き気などの不快な症状があるものの、検査を行っても異常が発見できない病気です。
このため、患者からの症状の訴えのみで診断が下されるため、完治の判断が非常に難しい病気です。投薬治療などによって症状が改善したようにみえても、再発することも多く、別の病気を合併することも少なくありません。
また、薬の治療効果にも個人差があり、自分に合った治療を探していく必要があります。治療は完治を目指すのではなく、症状の軽快を第一の目標とし、主治医と相談しながら根気よく続けていくことが大切です。
機能性胃腸症の治療法は、機能性胃腸症のタイプによって異なります。該当する症状でお悩みの方は、まずは専門の医療機関を受診し、自身がどのタイプの機能性胃腸症なのかを把握することが大切です。
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