記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/5/7 記事改定日: 2018/10/29
記事改定回数:1回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
インフルエンザの代表的な症状が激しい頭痛ですが、この頭痛がなかなか治らないときは、市販薬を服用しても大丈夫でしょうか?実は副作用のリスクが高い市販薬もあるので、ぜひ以降で確認してみてください。
まずは、インフルエンザにかかったときに頭痛が発生する仕組みを確認しましょう。
身体にインフルエンザウイルスが侵入すると、防御反応として体内で「プロスタグランジン」という、炎症を起こす物質が大量に分泌されます。このプロスタグランジンの働きによって体内のいたるところで炎症が起きた結果、インフルエンザの代表的な症状である発熱、関節の痛み、頭痛などの症状を引き起こすのです。
また、プロスタグランジンには炎症を起こす他に痛みを強める働きもあることから、インフルエンザにかかると強い頭痛症状が出やすくなると考えられています。
インフルエンザに罹った時に悩まされる「頭痛」は代表的な症状として挙げられます。
インフルエンザによる頭痛は炎症性物質のプロスタグランジンが体内で生成されることによって生じると考えられていますが、通常は発症後3日ほどで発熱など他の症状と共に徐々に改善し、消失していきます。
このため、長くても5~7日ほどでよくなることがほとんどです。
インフルエンザによる頭痛がなかなか治らない場合には注意が必要です。
インフルエンザはまれに脳症や髄膜炎などの重篤な合併症を引き起こすことがあり、これらの合併症を発症すると発症から7日以上経過しても、頭痛や発熱などの症状が続きます。
このような症状があるときは重篤な合併症を引き起こしている可能性があるため、早急に病院を受診するようにしましょう。
頭痛は、インフルエンザそのものによっても起こる症状ですが、抗インフルエンザ薬の一種であるタミフル®服用の副作用として、頭痛が出る可能性も指摘されています。
一般的に、タミフル®による副作用として知られている症状は、以下の通りです。
しかし、過去にタミフル®を服用した人のうち、服用後に腹痛や吐き気を訴えた人が4%だったのに対し、頭痛を訴えた人が3.1%もいたというデータも報告されています。このことから、腹痛に並ぶタミフル®の副作用として頭痛があるのではと推測する声もありますが、一概に断言することはできません。
前述したように、頭痛はインフルエンザそのもの症状である他、水分や塩分の不足でも起こり得ます。タミフル®の服用後、急激に頭痛の症状が出た場合にのみ、タミフル®の副作用による頭痛を疑った方が良い、と理解しておきましょう。
インフルエンザによる辛い頭痛を和らげるには、患部を冷やすのが効果的です。痛みの出ている頭の各部位や、頭に血液を送っている首などを冷やすことで、炎症によって拡張している血管を収縮させ、症状を和らげることができます。保冷材や氷をタオルに包んであてたり、氷枕を用意するなどして、痛いところを少しずつ冷やしていくと良いでしょう。
頭や首を冷やしても症状が緩和されない場合は、頭痛薬の力も借りてみましょう。市販の頭痛薬に使用されている代表的な主成分には、以下の2つが挙げられます。
どちらも、脳の中枢神経に作用することで解熱・鎮痛の効果が期待できる成分ですが、一般的にはアセトアミノフェンの方が安全性が高く、効果もゆるやかだと言われています。ただ安全性が高い一方、アセトアミノフェンの効果には個人差が大きく、人によっては薬の効果を感じにくく、服用しても症状が軽減されない可能性も指摘されています。
このため、インフルエンザによる頭痛を市販薬で治療するなら、アセトアミノフェンより効果が強いと言われるイブプロフェンの使用がおすすめです。ただし、15歳未満の子どもの服用は禁止されているので、用法・用量をしっかり確認してから、使用してください。
強い解熱・鎮痛作用を持つことで知られるロキソニン®も、インフルエンザによる発熱、関節痛、頭痛など諸症状の改善に効果的です。
実際、成人に対してはタミフル®やリレンザ®など抗インフルエンザ薬と一緒に病院で処方されることも多く、成人ならインフルエンザの頭痛治療に使っても問題ないでしょう。
しかし、ロキソニン®を服用できるのは「20歳以上の成人」のみです。また、市販の風邪薬などとの併用には思いがけない副作用を招くリスクもあるので、できれば市販薬は避け、病院で医師に処方してもらってから服用してください。
インフルエンザウイルスにかかっているときに、使用してはいけない市販薬もあります。
以下のような成分が含まれている市販の風邪薬・頭痛薬は、インフルエンザの合併症であるインフルエンザ脳症・脳炎を悪化させるリスクが報告されています。
アスピリン、サリチル酸系(サリチルアミド、エテンザミドなど)、ジクロフェナク、メフェナム酸 など
上記の成分は、特にインフルエンザ脳症・脳炎やこれによる異常行動を起こす可能性の高いこともあり、15歳未満への使用は原則的に禁止です。
15歳未満はもちろん、成人であっても、インフルエンザを疑う症状が出ていて市販薬を服用したい場合は、上記の成分が含まれていないかしっかり確認してくださいね。
頭痛をはじめ、インフルエンザによる症状緩和のために、イブプロフェンを含むものやロキソニン®などの市販薬は有効です。しかし、インフルエンザにかかっているときに、いろいろな症状に対応できるよう調合されている市販薬を飲むことには、合併症の発症や、症状悪化のリスクもあります。インフルエンザの頭痛が治らないときは、まず頭を冷やすなど薬を使わない対症療法から始めて、できれば医師による診断と薬の処方を受けてくださいね。
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