記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/8/24
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
「温罨法(おんあんぽう)」をご存知でしょうか。関節痛などの疼痛緩和の一環として行われることのある、ケア方法の一種です。今回はこの温罨法とはどんな方法なのか、その効果や注意点、がんの疼痛緩和における効果などについて解説していきます。
温罨法(おんあんぽう)とは、体の一部に温熱刺激を与えることで、痛みなどの症状を緩和させるケア方法の一種です。湯たんぽやカイロ、温シップ、蒸しタオル、電気あんかなどを使って患部を温め、血管や筋肉、神経系に作用させることで、血流やリンパの流れ、代謝を促進して疼痛を緩和させます。
温罨法には、疼痛緩和の効果だけでなく、入眠を促進する効果もあるとされます。また、腹部や腰部を温めた場合は、便秘を緩和する効果もあるといわれています。
温罨法は、主に以下の症状が見られるときに用いられます。
上述のとおり、温罨法はがんの疼痛緩和にも用いられることのある方法の一つです。また、国内の研究報告「倦怠感のある外来がん化学療法患者への背部温罨法の有用性」によれば、ある病院に通院し化学療法を受けている外来がん患者8名を対象に、15分間の温罨法を1回実施したところ、CFS(倦怠感尺度)の得点結果では効果は明らかにならなかったものの、温罨法後の患者の話では「気持ちが落ち着いた」「気持ちいい」「体が楽になった」といった言葉が抽出されたことから、ある程度の有用性があるのではないかと示唆されてもいます。
ご紹介したように温罨法にはさまざまな効果がありますが、一方で注意したいトラブルも存在します。そのひとつが熱傷です。熱傷は、60~65℃以上の温熱刺激が皮膚に加わることで発生しうる皮膚トラブルなので、温度管理は十分注意しましょう。
ただし、心地よく感じる程度の温度(40℃前後)であっても、長時間にわたって皮膚に刺激を与え続けると低温熱傷の原因となる恐れがあります。特に意識障害のある患者さんや、高齢者、感覚神経などに障害のある患者さんの適応には注意が必要です。
また、温罨法に伴うトラブルは熱傷だけではありません。例えば、出血傾向のある患者さんに温罨法を実施すると、血流が促進されることによってさらに出血量が増えてしまう恐れがあります。また、関節リウマチの患者さんなどは、血流の促進によって代謝が上がると、炎症が悪化してしまう可能性があります。ほかにも消化管閉塞や穿孔を起こしている患者さんは、腸の蠕動運動の回復に伴い穿孔のリスクが上昇するため、これらに該当する場合は実施は控えてください。
温罨法は、関節痛や肩こりの疼痛緩和から、がんの疼痛緩和にも適応されることのある有効なケア方法です。ただ、患者さんの疾患や状態によっては、適用がふさわしくないこともあるので、必ずしもどんな人でも実施できるわけではないということを覚えておきましょう。
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